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おい、アイツってさー


本当に嫌だよなー


仕事できますってアピール?


ガキなくせに


嫌だ嫌だ!天才ちゅー奴はさ


 聞いたか?アイツ本部に行くんだってさ


 マジかよー。良いねー天才は



 潰れれば良いのに




「お前らが居るから仕事が減らねぇんだよ。ばーか」


 一人青年が誰にも聞こえない様に呟き、闇へと消えた。

 聞こえる陰口も聞かずに、闇へと消えた。すぐ側に居るのに、闇へと消えた。



【FROHER BIRYHDAY】



 黒の教団に来て一ヶ月が経とうとしている。黒の教団の科学班では一気に班員を取る。既に科学班に居る班員(いわゆる先輩)がその新入りの面倒を見る事になっている。

 その期間は意外にも長く、早くで(途中脱落を抜いて)3ヶ月。遅くても半年らしい。最高記録は10ヶ月と言う噂がチラホラ。


 彼は正直うんざりだった。


 彼は入団してから一度も失敗を犯した事はない。新入りの教育係で怒鳴った事がないのはきっと彼の教育係だけだろう。っと言うよりも一日でその教育係と会う時間は1時時間も満たない。

 仕事など事実上、支部に居た時と変わらない。ただ深い実験が出来たり(でも新入りは出来ない)、仕事の量が倍になったり(それでも彼には関係ないけど)するだけだ。

 支部と違って少し戸惑ったとしたら、探索隊と科学班の仲の悪さくらいだ。もう彼は慣れたが・・・。


 科学班フロア中にガラスが割れた音が聞こえてきた。それに「コラッ!!!」と無駄に五月蝿い怒鳴り声が聞こえてくる。また・・だ。

「ス、スミマセン!!」といつもの少し高めの慌てた声が聞こえてきた。あいつは毎日の様に、何かすら失敗している。

教育係は胃が痛む思いだろうが、周りは少し優しい目になる。皆新入りが可愛いのだろう。現に失敗をしまくるあいつはかなり愛されている。

彼は出来上がった書類をトントンとそろえる。その時付箋紙に書かれた数字を見る。


あぁ、もう9月なんだ・・・


憂鬱な月だ。そう思いながら規則通り彼は室長室に向かった。





 彼が天才なのだろうか?それとも、彼の教育係の説明が上手いのか・・・否、絶対に最後のは無い・・
 彼は周りから愛されているっというよりはムードメーカー的な存在である。いつもテンションを高めに(それでも仕事中はかなり集中)していて、どっちが本当の先輩なのか分らない。

 ただどっちにしろ彼には関係なかった。どうせ3ヶ月も経てば即効無視だろうから。

 そう思い室長室をノックしようとした時だった。


「リーバー調子はどうだ?」


 壮年な落ち着いた声が扉越しに聞こえてきた。彼、リーバーは扉をノックする手を止め、そのまま会話を聞く。


「凄い天才ですよ!俺が少し教えればすぐに覚えましてね!!」


 「いや〜まぁ、可愛げはないんですけどねー」と声を弾ませながら続けられた。この高くも低くも尖りも滑らかさもない、でも無駄に通るこの声はあの人しか居ない。

 リーバーの教育係、マービン・ハスキン。


「そうか」

「そうです。ありゃぁすぐにでも教育係を外しても良い程ですよ。だから大丈夫です」


 自分 ガ 外シテ 貰イタイ ノ 間違イ ダロ?


 リーバーはそう言いたいのを必死に堪えて、科学班フロアに引き返した。自分の話をしている部屋に入りたくないし、かと言ってさっきまで自分の話をしていた人に会いたくもない。期日にもまだ余裕がある。

 だから出て行った。





 マービンの同期(だと思う)ロブに頼んで書類を貰った(基本新入りは教育係から書類を貰う)。今日までの書類だった。

 リーバーはその日付を見て目を見開いた。


『9/8』


リーバーの表情が苦笑いへと変わる。この日付は365日の中で一番嫌いな日。


「マービンからの伝言で、これが終ったら『休め』ってさ」

「・・・そうですか」


リーバーは曖昧に答えると1Cmも満たない書類を持ったまま自分の席に戻る。

それから仕事を始める。ペンダコが出来た指にはもう痛みを感じない。

ガリガリッといつもの様に書き続ける。


「アイツははさ―――」「――――それで-―――」「―――に天才ってさ」


 聞こえる影口がすぐに耳につく。それを聞く度に(言ってろ)と心の中で毒を吐く。目を離さないまま次の書類に行こうとした時だった。

 急に目の前が真っ暗になる。


「だぁーれ、だ!」


 その悲しくも特徴なき声は・・・


「マービン先輩ふざけるなら後にしてください」

「ははっ、最後は余計だな☆本当に可愛げないなー」


 そう言いながらマービンは手を外し空いている隣の席に座る。リーバーは隣に居るマービンを、無視、して書類を始める。


「その書類、何時までか知っている?」


 マービンの問いにリーバーのペンを動かす手が、止まった。


「・・・わざとですか?」

「だって、こうもしないとお前は今日が何日か分らないだろう?」

「そうですね」


 リーバーは再び書類を書き始める。それをマービンは静かに頬杖をしながら見つめる。

 リーバーはチラッとマービンの方を向く。長いキャラメル色の前髪から酷い隈が見えた。

 この時間代は確か、マービンは仮眠中の時間だ。


「寝ないのですか?」


 フッとした疑問を口にした。科学班にとって『仮眠時間に寝ないのは自殺行為と一緒だ』っと言う程に危険な行為だ。まぁそれは言い過ぎだが・・・。

 マービンはニヘッと笑った。


「何?心配してくれるの?」

「誰がです?」

「リーバーが!」

「そりゃぁ俺を待って倒れるという事態になったら俺のせいですからね」


 本部で変な噂が流れば支部に行っても中央に行ってもその噂で振り回される。ま、既に良い様に思われていないのだが・・・。

 リーバーは異例の若さで支部に入り、教団にこれまた異例な年齢で入った。だから回りはリーバーの事を良い様に思っていない。

 その教育係をしているマービンの評価はかなり落ちてるかもしれない。もしかしたら同情してるのかもしれない。どっちにしろ、不釣合いだ。

 倒れたら非難の声がいっぱい浴びる事になる。これ以上の面倒事はゴメンだ。

 ガリッ・・・・・・  書類が書き終わり、その書類等をまとめた。


「俺が室長の所へ持って行くよ」

「別に良いですよ。休んでください」

「何言ってるんだー?俺だって鬼じゃないんだから、誕生日の日くらい休ませるよ」


 リーバーは眉を顰める。9月8日。それはリーバーの誕生日。一番嫌いな日。


「仕事場に誕生日とか関係ないと思います」

「ある!とは言えないけど・・・ま、いつも頑張っているリーバーへ俺からのプレゼント的な?」

「・・・」

「ジェリーさんに頼んでケーキ作って貰ったからな。安心しろ!ショートとチョコ二つ作ってくれたからな!羨ましいぜ」

「・・・」

「いやー俺は本当に良い先輩だ。うん。うん」


「勝手に・・・」決めやがって。


 そう言おうとしたがその先は言わなかった。でもどんだけ小さくでも出てしまった声はもう戻せない。マービンは「何んだ?」と首を傾げた。

 リーバーは眉を顰めたままマービンの方へ向く。


「気遣いなど必要ありません。心配しなくでも倒れません。先輩が教育係をしている間は絶対に。だから要りません」


 それが望みなんだろ?倒れたら教育係の責任だから。

 リーバーの言葉に周りが一気に静まった。何を怖がっていたのだろうか?もう『今更』だ。これ以上嫌われてもどーでも良い。


「ぷ、はははっ!!」


 冷たい空気に似合わぬ笑い声が響いた。それは他ならぬ目の前に居るマービンであった。

 それの笑いにリーバーにムッとして口を開こうとした時だった。


 バシッ!!  右頬に痛みを感じた。


「ふざけるなッ!」


 その痛みが何なのか?その怒鳴り声は誰なのか?分らなかった。けど、さっきまでの場に似合わぬ笑い声が既にない。

 リーバーが前を向けば、いつもヘラヘラと笑っていたマービンが居なかった。口が下向きに弧を描き、少し顔が紅潮する。


「良いかリーバー?」


 特徴のない声だった筈が、今はドス低い。冷たい緑色の瞳と合った。その時リーバーはゾクリッと身を震わせた。今まで味わった事のないモノだ。

恐怖?そう言った方が早いかもしれない。

マービンは微かに震えるリーバーの肩をカシッと掴んだ。

マービンが怒った所など見た事がない(1ヶ月しか居ないが・・・)。いつもヘラヘラな笑顔で、馬鹿に笑っていて・・・。周りも見たことが無いのだろう、驚き固まっていた。

怒られている?何かまずった事を言ってしまったのだろうか?彼に怒る様な事を?しかしリーバーは解らなかった。

 どうせ、教育係が終れば関係ないのに・・・否、関係からかもしれない。今だけ・・・世話を焼いているのだから少しは言う事を聞けと言う意味かもしれない。

 それはまるで出来の悪い子供に見せる親の様だった。それを何度も感じた事がる。だからこそそれを避けたいと思った。だからこそ見たくないと思った。だからこそ繰り返したくないと思った。


だからこそ聞きたくないと思った。


マービンは口を開ける。




































「ケーキを二つも食べられるんだぞ?それを断るのか!お前は!!」




 その言葉に一気に周りの空気が固まった。そんな中、誰かが「ぷっ」と噴出し笑いをしてしまった。それが引き金に皆笑い始めた。

 それにマービンはへの字口を少し緩め「ん?ん?」と首を傾げていた。


「俺、そんなに可笑しい事を言ったか?」

「すっごく場違いの事を言っていたぜ!」


 「まぁどっちでも良いけど」独り言の様に呟きマービンは改めてリーバーの方を向く。リーバーはマービンが何かを言う前に言った。


「室長と先輩の話聞きました」っと。


 それにマービンの瞳が大きく開かれるのと一緒に口端がクイと上がった。まるであるお伽の話に出てくる猫の様だった。


「何?寂しいの?」

「まさか」

「大丈夫!すぐに戻ってくるからな!何!だったの3日間じゃないか!」

「・・・何処に戻ってくるのですか?」

「リーバーの所」


 内容が分らずリーバーは見えぬハテナマークを出す。


「あれ?違う話?」

「否、俺の話をしていて『教育係をすぐにでも外せる』とかなんとか言ってませんでしたか?」

「あーあー、そこを聞いたのか」


 「なるほど−」と呟きながらも口元に笑みを浮かべる。リーバーは予想外の反応に目を見開く。

 マービンは「別に外すつもりはない。ただ3日外してもリーバーは大丈夫って言いたかっただけなんだ」と説明する。

 今までのヘラヘラ顔じゃない。酷く優しい笑顔。


「誕生日なんで嫌いだ」

「えー俺は好きだけど?何だって何でもし放題!ケーキも食える!プレゼント要求OKだしな!」


 「・・・」リーバーはマービンを疑視する。その視線が痛い程感じたマービンは「ははっ」と苦笑する。

 「でも」マービンは接続詞を言って一旦止まる。変わりに手をリーバーのツンツン立った頭に乗せ、撫でた。


「どんだけお前が嫌っても、俺は祝うからな。お前が生まれた日を」


 リーバーの垂れた瞳が大きく見開いた。リーバーの氷の様な瞳いっぱいに映る彼は言う。



「誕生日おめでとう。リーバー」っと。




 暗い闇の中。一人、青年は歩いていた。


 より闇へ、と。


 誰も入り込めない闇の中、青年は光の住民を見ていた。



「そして生まれてきて有難う」



 闇の中に入る男性一人。


 彼は青年に手を差し伸ばした。



「あ、」



 その手は-――――




「有難うございます」


 リーバーは俯き、言った。その頬はほんのりと紅く染まっていた。

 それを見てマービンは「あははっ!」と笑った。それにリーバーはムッとした。


「やっぱしお前は可愛げねぇーなー」

「俺は男です!」

「でもお前は俺の可愛い可愛い後輩だろ?」


 笑い混じりに言われた言葉にリーバーはフイッと横を向く。それにマービンの笑い声が絶頂に達す。

 それは不快かもしれない。でも・・・



『誕生日おめでとう。リーバー』

『生まれてきて有難う』




 リーバーは横を向いたままマービンに気付かれぬ様に笑みを浮かべた。

 生きていて初めて言われた。いつも誰も言わない。それ以前にリーバーを良い様に思う人など誰一人居なかった。それは年齢が若いせいだと思っていた。


 でも、約一回り違う先輩は言ってくれた。


「あれれ?リーバー、もしかして喜んでだり?」

「ち、違います!」


 条件反射でつい否定の言葉を言ってしまう。勿論そんな言葉で嘘を固めてもマービンにはもろ解りで「テレるなって!」と笑い混じりにリーバーの肩をバシバシッと叩いた。


「それじゃ、これからケーキ食いに行こうぜ?俺も丁度・・休憩時間だしさ!」


 嘘だ。とっくの昔に休憩時間の筈だ。しかしあえてその言葉を言わなかった。


「・・・はい」


 少し小さめに返事をした。どこか怯える様に。でもマービンはそれを気にしない様にリーバーの手を握り科学班フロアを駆け出す。



 青年は闇から抜け出した。



青年の手をしっかり握り締めている手が、とても温かくて。



 青年は口を開いた。



「本当に有難うございます」



 その言葉に男性は振り返り言った。




「今からそんだけお礼言っていたら大変だぞ」



 いつものヘラヘラ笑顔のままに。



@言い訳@
 無駄に長い話でスミマセン!マービン+リーバーです。+です。×じゃないです。+です(殴)誕生日ssか疑問です。シリアスです。スミマセン。
この後マービンさんは「ケーキ♪ケーキ♪」と言って食堂に行きますが「あんたは血糖値が多めだから食べるな」とジェリーさんに言われれば良いと思う←?
最後に題名はドイツ語で『喜ばしい誕生日』です。ドイツではそう言うのかもしれません。分りません(ド殴:分らないんかい!)
 色々とスミマセン。失礼します。



背景画像提供者:Abundant Shine 裕様