この日は特別な日なんだ


 だから皆内緒にしてね


 喧嘩禁止


彼の嫌いな酒とタバコも禁止


 豪華な飾り付けをして


 彼の好きな料理をいっぱい出そう


 彼はきっと喜んでくれる


 さぁ今から作戦を開始しよう



 密  



 最近何かが可笑しい。そう思いながらリーバーは科学班フロアを見回す。科学班班員はチラチラとリーバーを伺っている様に視線を向けてはすぐにつらしていた。

 最近そんな視線が多い。何か言いたい事があるなら言えって。勿論その考えをリーバーは言った事があるが「なななな何もありませんよ?」っと返された。その反応で何もないと見る奴は居ないのだが・・・。

 絶対に怪しい!リーバーは疑いのオーラーを垂れ流しに周りを見やる。それに皆が皆視線をずらす。ある一人を除いて・・・。


「リーバー班長!そんな目で見回してどうしたんスか!もしかして恋スか?遅き初恋スか!」

「マービンは取り合えず黙っていろ」


 「きゃーvV恐いvV」とマービンは他の人とは別に笑顔にそう言う。リーバーは青筋を浮ばせながら「マービン、仕事は?」とドス低く聞けば「やる訳ないじゃないですか☆」と返される。

 それにリーバーはカタッと立ち上がった。それを見てマービンは「あははっ」と笑いながら逃げた。勿論リーバーもマービンを笑顔で追いかける。

 それはまるで砂浜で『あははっ捕まえて見なさいvV』『待てーvV』っと追いかけっこをするカップルの様だ。

 マービンは見事に捕まりトリプル団子が頭に出来た。


「さっさと仕事をしろッ!」

「もう酷いなー班長はー」

「うるせぇ!仕事をしないお前が悪い」

「昔も今も可愛げねぇーなー」

「うるさい!」


 昔マービンはリーバーの教育係だったという事は、また別の話。マービンはムスッとするが「あ」と思い出したように声を出した。


「そー言えば班長最近あんまし休んでいないでしょ?」

「休んでるよ。また徹夜3日目だ」

「3日も?!」

「そう言うマービンは4日目だろうが」


「それは置いてください」とマービンは目の前にある見ない箱を左へ置いた。


「班長一日休み最近ないんじゃないスか?」


 リーバーはそれを聞くと「そっちか」と言う。科学班には倒れた後の睡眠時間以外に別の休みが(当たり前だが)ある。

 科学班班員でも少ないのだが、科学班班長であるリーバーはもっと少ない。だから実際はそれを聞いて『当たり前』の感想を持つ。科学班班長だから少ない=常識。

 科学班班長になる時から覚悟は決まっていた。班員の時よりも忙しい、と。リーバーは地位や金の為に科学班班長になった訳じゃない。ましてや休みを権力で作ろうなんでこれっぽちも考えていなかった。

 だから『休みが最近ないのでは?』と言われても『あー』とか『それね』とか言うしかないのだ。『確かに休み少ないな』と言う同感もなければ『本当に少ねぇよな!』と言う怒りをぶつける事もない。


「それが当たり前だからな」


 それしかない。それにマービンは大きく溜息を吐く。


「駄目だねーリーバーは」

「さりげなくタメ口になっているぞ?」

「それだから一生独身なんだよ」

「俺はまだ・・26歳だ」

もう・・26歳だろ?」


 リーバーは口を尖らせ「別に良いだろー」と言う。それに「駄目だねー」と30代を超えても独身のマービンが反論。


「最近本部が変わったから制服がヨレヨレじゃないけど、心は仕事に囚われすぎなんだよ。まさに閉じ込められた哀れなお姫様。でも王子なんで来ないぜ?なんだってリーバーは男なんだからな」


「何が言いたいんだ?ん?」


 リーバーはニコリッと笑みを浮かべながらマービンの胸くらを掴んだ。それにマービンは「あははっ。いつの間にか怖くなって」と笑い混じりに言う。それにリーバーは「ははっ。誰のせいですか?」っとこれまた笑い混じりに反論する。

 続けて「全てあんたのメチャクチャのせいだろ?」と言い、リーバーは笑顔のままワナワナ震わす拳を頬の横まで持って行く。


「暴力でなんでも解決させようとする人ってどうかと思いますよ?」

「何もかもテキトーで上司すらもからかう人間もどうかと思うけどな」

「否、第1班の班員全員どうかと思うよ?」

「否、それはマービンだけ-――ってペック班長?!」


 リーバーは驚き右を向く。マービンも気付かなかったらしく一緒に驚く。

 そこには第2班 班長レゴリー・ペックが居た。ペックは頬杖をしながら二人を見て、溜息を吐く。


「本当にレベルが低いね、此処は」

「否、そんな事は・・・」

「あらら?これはこれは第2班のペック班長じゃぁありませんか?第2班長様が何故此処にいらしたのでしょうか?」

 マービンはわざと『2』を強調し言った。それにペックは青筋を浮かべる。
「いやー第1科学班の卑猥な状況を見にね」

「あははっ本当の事を言ってくださいよ。第2班長様は『無断』に此処に来たんじゃないのですか?」

「『無断』じゃない!仕事をしないお前等と一緒にするな!」

「はっ!第2班長様には言われたくないないな!」

「ちょっ、二人共それくらいにしてください!」


 リーバーがそう言えば二人してプイッとそっぽを向く。それに思わず胃の底から疲れきった溜息が出てしまう。

その時コムイがひょっこりと科学班フロアに入って来た。


「リーバーはんちょ-――ってあれ?ペック班長も居たの?」

「あ、お邪魔してます」

「本当にお邪魔だ」

「あ゛?」

「止めてください;」

>br<  リーバーはあわてて「それで?室長どうしたんスか?」と訊く。だがすぐに「もしかしてまた逃げ出したとか言わんでくださいよ!」と付け出し言う。

 それにコムイは苦笑いを浮かべながら「えーっと、違うよ・・・一応・・・」と曖昧に答えた。それにリーバーはコムイを疑視する。

 コムイは「ははっ」と笑いながら両手を胸元まで挙げた。


「すぐに仕事に戻るから」

「本当ですね?」

「何故信じないのですか?リーバー班長。室長ですよ?仕事をサボる訳ないでしょ?第1班長とは違って変なモノを作って大変な事になりませんし。ねぇ室長」


 ペックはそうフォローの言葉を言いコムイの方を向く。だがコムイはダメージを受け、俯いていた。それにリーバーは「室長はこういう人スよ」と真顔で言う。

「あー。まぁ、サボリたい時もあるからね」とペックはまたフォローを言うが「第2班長もサボってますからねー」とマービンがかかさず言う。それにペックがビシッと来てマービンの胸くらを掴む。

「暴力No―」「お前って奴は・・・」「お前じゃなくでマービンです。名前も覚えられないとは2番目の名が泣きますよ?」「分った。お前の名を私の中の消去手帳に載せて置こう」と会話が進むがリーバーはそれを無視をして「何しに来たんスか?」と訊いた。

コムイはリーバーの方を向きニコッと笑った。


「来て欲しい所があるんだ。良いかな?」

「はぁ・・・別に大丈夫ッス」


 それを聞くとコムイは安堵を息を吐き、リーバーを手招きした。リーバーはコムイに近づく。


「私も行きますか?」

「否、ペック班長は大丈夫なんだ。ごめんね」


 コムイはそう言うとリーバーの手を握り早歩きで科学班フロアを出て行く。それを見送りマービンは左手を腰に当て、二人が出て行った扉に笑みを向けた。

 ペック班長はまるっきり今の状況が分らずハテナマークを大量に出した。




 いつもと様子が違うコムイを見てリーバーはただ疑問に思うしかなかった。そしてその疑問を口にした。


「どうしたんスか?」


 その問いにコムイは振り向かないまま「後で分るよ」と声を弾ませただけだった。

 次第に人気のない廊下に出た。確か此処は実験フロアだ。実験フロアは活用されているとはいえ、奥の方はほどんと使われない。

 コムイは一番奥にある研究室の前で止まった。嫌な程静かだ。あんなに大人数の人が共同しているのに、これ程静かな場所があったとは・・・。

 繋がれていた手が離れた。コムイは振り向き左手で扉を差す。


「どうぞ。入って」


 それに恐れの様なモノを感じた。入ったら何があるのだろうか?まさか扉の向こうでコムリンが暴れている事はないだろうな?でもそれだったらこんなに静かな訳がない。

 コムイの目はいつものふざけはなかった。コムイはもう一度ゆっくりと「入って」と言う。

 リーバーは扉のドアノブを握り捻る。だがすぐに開けずに一拍置いてから入る。



 カチャッ・・・・バンッ!バンバンバンッ!



 扉を開けた途端に銃声とは違うマヌケな音が聞こえてきた。火薬の臭いと一緒に細長い紙やら細かい四角い紙がリーバーに向かって飛び掛る。

 リーバーはつい目を瞑った。真っ暗な世界の中で声が聞こえてきた。




誕生日おめでとう!!リーバー班長!!!




 その何十に重なる声にリーバーはゆっくりと目を見開く。今日は休み(あるいは休憩中)の科学班やエクソシストや探索隊やジェリーが居た。少し上を向けば『27歳の誕生日おめでとう』と書かれていた。

 ボケーとしているリーバーの元にラビとアレンが寄る。


「誕生日おめでとうございます」

「あ、ありがとう・・・」

「その顔は完璧に忘れてたさ」


 リーバーは何も言わず少し視線を下にずらす。リーバーの唖然としている反応に少し焦りの色がある。


「今日その日だっけ?」

「何寝ぼけているんさ!今日は9月8日!その日さ!」

「仕事が忙しかったから仕方ありませんよ」


 そう言えば書類の締め切りの期限に9月と書いていた様なー書いてなかった様なー。

 アレンはリーバーの顔を見上げる。


「もしかして迷惑でしたか?」


 リーバーはそれに目を見開き、素早く何回も首を横に振った。コムイは「ふふ」と笑いながらリーバーの肩に手を置く。


「皆1ヶ月前から準備していたんだよ。まぁ中央の人と一緒に済む事になったから此処になちゃったんだけどねー」

「〜っ!し、しかし仕事が-―――」

「もう!誕生日の時くらい楽しみなよ!」


 膨れ面のコムイにつられて「そうだぜ!」「せっかくの誕生日なのに勿体ねぇ!」と言う言葉が飛ぶ。リーバーは改めて皆を見る。

 テレ笑顔の皆。笑う皆。リーバーもつられる様に笑みを浮かべる。


「有難う」


 その言葉が合図の様に数人がリーバーに近づき、腕を引っ張って食事が乗る机の上に導く。

 ジェリーがケーキに刺さるロウソクに火を付けていく。ちゃんと27本乗ったロウソクを見てリーバーは苦笑を浮かべる。

 周りはそれに「結婚出来るのかねー」と心配の言葉を漏らす。それにリーバーはムッと少し反論する。誰かがリーバーの頭を撫で「本当に頑張れよ」と言う。それにリーバーは少年の様に笑いながら「おう!」と答える。

 ロウソクの火が全部付き部屋を真っ暗にする。リーバーは照れながらロウソクの火を全部消す。それに拍手が沸きあがる。

 コムイはそれを見てから部屋から出て行く。

出て行く際にコムイは「Happy Birthday」と呟き扉を閉じた。


密の生日会。


@言い訳@
 前置きが長すぎて全然誕生日ネタじゃないです。
痛々しいパロでスミマセン・・・。本当に痛いです。私が読む側だったら心が痛いです(殴;じゃぁ書くな!)
リーバーさん誕生日おめでとう!本編では李桂さんやらペック班長やら千年伯爵(人パージョン)やらが出てきてグハッ!(←萌えている音)となってるけど、大好きですから!
では色々とスミマセン。失礼します。



背景画像提供者:Abundant Shine 裕様