闇色お空に黄金色の月が浮ぶ。


 コッ


 いつしか、貴方はこう言いましたよね?



『お前は月の様に美しい。』って。



【恋は月のようなもの】



 深夜の東方司令部内は異様な静けさに包まれていた。そんな静かな空間に乾いた皮靴の足音が響き渡る。

 足音は迷いが無く、ある部屋へと向かっていた。窓から差す月光を美しいと思いながら。

 コッ・・・・・

 ある部屋で足音は止まった。いつも見ている木製の扉。見飽きた扉の筈なのに、月光の光に当てられ、人の影がくっきりと浮かび上がっている今の扉はとても魅力的だった。

 そんな扉に見惚れるために来た訳じゃない。目的を思い出し、扉を開けた。ギィィッと古びた音が異様に響き渡る。それに不快を思っているが、ゆっくり開けても早く開けても同じ音が鳴り響くだろう。

 古びた音が鳴って、露になる部屋の中。机が向き合い、くっつかって並んでいた。その向こうには、一つの机がこちらを向いてあった。そのすぐ背後には大きな窓があり、そこから月光が溢れ出ている。

 その大きな扉の前、一人の男性が立って居た。男性は窓の外を見ていた。晴天の色をした軍服の肩の星は、大佐、を示していた。漆黒の髪が揺れた。


「今日は、帰った筈じゃないのかね?」


 そんな声が部屋中響き渡った。それが合図のかの様に、皮靴が響き渡り始めた。皮靴は大佐に近づいていく。だが、大佐は逃げる気配も無ければ、後ろへ振り返る気配も無い。

 足音は大佐の後ろにある机のすぐ前で止まる。


「貴方もそうでしょ?ロイ・マスタング大佐。」


 ロイと呼ばれた男性は後ろを振り向いた。そこには、机に両肘をつき、身を乗り出していた男性が居た。ヤマブキ色の髪に紺碧の瞳を持っていた。体格からして、細身ではなく、ほどよく筋肉がのっていた。

口にはタバコを加えてあり、煙が天井に向かって伸びていた。その煙を見て、ロイは眉間にしわを寄せる。


「また、タバコか?」

「大佐こそ、月見酒スか?」


 そう言うと、ロイの片手に持っているコップに目を移す。そこには透明の液体が入っている。一見しては酒とは分らないが、ロイから吐き出される息から、お酒の匂いが微かにした。

 ロイはバツの悪い顔をした。


「良く分かったな。ハボック。」

「俺の嗅覚を馬鹿にしないでくださいよ。」


 男性、ジャン・ハボックは東方司令部の少尉でありロイの部下である。そんなハボックは実戦を積んでおり、あの鷹の目と言われたリザ・ホークアイ中尉にも認められるほどの実力者である。

 そんなハボックは五感が鋭い。特に第六感が酷く鋭い。その第六感が無かったら、どれだけ死んでいたか・・・。

 ロイは窓に目を向けた。


「久しぶりの、綺麗な月だからな。」


 一言、そう言った。ハボックは眉をひそめた。口はへの字になっており、その理由は言葉にしない。>br<
 綺麗な月?そんな疑問が生まれた。そして改めて窓の外の月を見る。満月の月が紺色の空に浮いていた。月の周りに紺よりも薄い青い雲があった。その雲らは月光に照らされいて、月に近い雲は微かに黄色かかっていた。

 確かに、美しい、と思える風景だ。なのにハボックは相変わらず詰まらなそうな顔をする。


「渋い趣味ですね。」


 ハボックは一言、そう言った。そのハボックの一言にロイは余裕に笑みを浮かべ、冷静に言い返した。


「嫉妬しているのか?」


 ロイの言い返しにハボックは眉間にしわを寄せた。

 嫉妬?そうかもしれない。テロが起き、忙しかった。久しぶりの休みになってハボックは自宅に帰った。帰っていなかった部屋は埃の臭いで充満していた。そんな部屋にあるベットの上に仰向けになった。

 眠い・・・筈なのに眠れなかった。眠ったら、入れないから。鍵は開けてある。でも、変な所で気を使う人だから、絶対に入らないだろう。それところか、安全面からか、合鍵で鍵を閉めるだろう。

 だから、何時になっても来ない恋人の様子を見にわざわざ此処に来たのだ。そしたら、人の気を知らずに月見酒をしていた。

だから言ってやった。


「馬鹿を言わんでください。」と。


 誰が好き転んで嫉妬なんかするか、と心の中で吐き捨てた。だがあえて口にしなかった。もしかしたら、本気で、思っていたのかもしれない。もし言っていたら、それを悟られるかもしれない、と思ったからだ。

 ハボックの角度から見える。月光に照らされ、余裕の笑みを浮かべるロイの顔が、何でこんな奴がモテるのだろうか?と思っていたが、なんとなく今なら分る気がした。

 整った容姿、だろう。そんな整った顔はハボックの方へ向く。形の良い口が動く。



「お前は月の様に美しい。」



 そんな言葉にハボックは目を大きく見開いた。ロイはそんなハボックをおつまみにするかの様に酒を一口飲む。

 そんなロイを見てハボックは顔を紅潮させた。


「何言ってるんスか!」

「本当の事だ。月の様に美しい。」


 ロイは涼しい顔をしたままそう呟いた。激しく耳障りな鼓動が響く。


「俺は男です!」


 しかも、体は細くないし、顔も一目見て、男、と分るほどだ。


「そうだな。」


 ロイはそう呟き、また月に目線を移した。ハボックはその隙に上がった体温を下げる様に片手で煽った


「なぁハボック、恋は月のようなもの、と思わないか?」


 その言葉にハボックは、え?、と問い返し目を点にする。月の様に美しいと言っていたのに、次は、恋とは月のようなもの、か、と。


「恋は月の様に変化していく。美しく輝く時があるし、雲に覆われるときもある。周りの変化で、美しくもなるし、汚されることもある。」


 ロイは改めハボックを見る。ハボックはもう既に熱が覚めていた。そしてまだ分かってない様にポカーンと口を開けていた。そんなハボックにロイは苦笑いをした。


「つまり、ハボックと言う月を輝かすのは、夜空と言う私の、役目、と言う事だ。」


 そう言うとロイは一歩机に近づき、未だに分かってないハボックの頬に触れ、口に加えているタバコを抜き取り、開いている口にキスを落した。

 ハボックはキスされた唇を青い軍服の袖で拭った


「私は、君が放つ月光に酔いしれている。君を美しく輝ける様にするから、君はずっとその月光を放ち続けてくれたまえ。」


 そう言うと、ロイはまだお酒を一気に飲み込む。ハボックは悔しそうにロイを見上げる。

 意味は分からない。でも、口説かれている、それだけ分った。


「アンタは、酷すぎますよ。」


 ハボックがそう呟いたら、ロイはまだハボックの口を塞いだ。


 月に酔いしれて。


 月光に酔いしれて。


 闇に濡れた空に輝くのは、君だよ。

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@言い訳@
 ひ、久しぶりのロイハボですね!しかも、ストーカーでも変態でもないロイさん・・・何故だ!!(ド殴)しかも、意味不明だし、お題自体久しぶりです><死んでますね。お題全然活用してませんね(ド殴:一番の所を!)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成20年12月24日