何で此処は狭いのだろうか?
俺は狭い世界に居る。
その狭い世界の中、広い世界を見つめる。
広い世界へ貴方は行ってしまった。
貴方は俺の知らない世界へ行ってしまった。
【長く、遠く、君はもう行ってしまったね】
科学フロアはいつもの様に忙しかった。来て5年目になるリーバーはその忙しさに慣れる。慣れても体は悲鳴を上げているのは変わらず、リーバーも含め、此処の科学者にとって、慣れる、とは、体の悲鳴を無視する、事である。
リーバーは黙って仕事をし続けていた。教育係が終わり、一人で書類仕事をする時間が増えた・・・と思いきや、またまた後輩の面倒を見ているのが現状で、更に先輩のからみもしなくではならい。特に問題は先輩で、あれは軽いが、苛付いている時にやられたら辛いモノがある。
コーンコーン
今日と言う日の終わりと始まりを知らす鐘の音が鳴り響いた。リーバーは片手で目元を覆い隠す。
―――今日で何日目だ?
そんな疑問が生まれた。リーバー自身眠っているし食べていると言えば食べている。限界の徹夜日数は5日間。それでも無理をすればそれ以上にもなるが、それ以上は体が持たない。
体が限界で頭が動き続ける。それほど最悪なバターンは無い。だが、最近リーバーは眠れないのだ。仕事があれば仕事を優先し、科学班班員のほどんとがそうだが、リーバーは異常すぎる。
自分でも引くほどに書類没頭している。どんなに時間が経っても、お腹は空かないし、眠くもならない。眠っても浅いし、見る夢も書類仕事をしている光景だ。仕事中毒にもほどがある・・・リーバーは心の中で吐き捨てるが、左手に持つペンを動かし始めた。
今のリーバーを止める人など居ない。止めても無駄だと知っているからだ。リーバーの仕事中毒は異常すぎて、止めても何かの逃げ道を見つけては仕事をし続けていた。
―――あれ?誰かな止めていたようなー。誰か、誰かが。
リーバーの仕事中毒で、何日にも徹夜をしていて、限界をとっくに超えているリーバーに、無理矢理休ませる人が・・・誰だっけ?
見捨てられた、のだろうな。リーバーは優秀ゆえに、周りから良い様に思われていなかった。だから良く見捨てられていた。支部の教育係にも、近づくな、とも言われ、リーバーがミスした時は他人のフリをしていた。
さすがに教団での教育係はそんな事はしなかったが、正直からみすぎてうざい感があるのも真実・・・。
そう言えば、いつ町に出たっけ?あぁ、そう言えば前買えなかった本あるかな。前は確か木々に緑が芽生えていた。今はどうだろう?今は冬だっけ?秋?あぁ、それすら分らないのか?船を使えば1時間以内に付くのに、分らないとは・・・。
前に町に出た時は、誰かと一緒に居た気がした。否、あの時は俺の休暇じゃなかった。なのに無理矢理連れて行かれ、次の日は俺の休暇で2日連続で仕事をしようとしたらその人に強制的に部屋に連行されて・・・。
誰だろう?とても綺麗な瞳と髪だった気がする。それが好きで、その髪を指で解かしていた気がした。サラッと指が通って、気持ちよかった気がした。確かその人に、そんなに面白いか、と聞かれた気がした。
確か、好きだったけど、普段は嫌いだった。いつも煙の臭いがしていた。後酒の臭いがした気がした。あぁ、そうだ。いつもあの人はタバコに酒を吸っては飲んでいたな。そして勧められて、断れば銃をつけて。
本気で撃って来た気がする。それを俺がギリギリ避けていだな。本当に大事にしているのか、してないのか・・・分らない。
あぁ、そう言えばあの人は銃を本気で撃つ割には優しかったな。俺を無理矢理寝かしつける。俺が眠るまでベットの横に居てくれた。
そう言えばあの人の髪は紅だったな。瞳も紅で、自分の瞳はいつも、氷の様に冷たい色だ、と言われているからあの人の瞳が羨ましかった。でもあの人は、紅い目だから血みたいだと良く言われる、と言った。悪口などなんぼでもいえる、そうとも言った。
手を伸ばせば、握ってくれたな。あぁ、ずっと待っていたのかもしれない。ずっとその優しさを求めていたのかもしれない。
今となっては記憶にない親はずっと居なくて、家の中もずっと一人だった。昔から埋められない虚しさがあった。埋めようとして、褒められようとして、勉強をしていた。でも、帰ってこなかった。
知識だけで、思い出は脳に刻み込まれなかった。だからなのか、大切な思い出を思い出すのが苦手だった。糸をゆっくりと引っ張り、時間をかけないと思い出せない。
仕事絡みの記憶ならすぐに引っ張り出せるのに・・・そう言えば教団の教育係は言っていたな。慣れなくでも良い事まで慣れなくでも良い。慣れれば、破滅しか見ない、って。もう遅いのにな。
どうしても、思い出せない・・・。貴方を。
コッ
「お前は、馬鹿か」
リーバーは目を見開き、後ろへ振り向いた。
忙しく走り回る白い白衣を着た科学者を背後に立っている黒い服を着る男性。紅い髪に瞳を持つ男性。
その一瞬でリーバーの記憶に男性の姿が鮮明に甦った。その名も―――。
「クロス元帥―――」
リーバーは手を伸ばした。受け止めて、と切に想いながら。その手はクロスが受け取る。
「お前は仕事のしすぎた。こんなに痩せやがって」
クロスはリーバーの頬を触る。リーバーはその手の温もりを感じるかの様に触れる手の上に手を触れる。
「食べてないだろ?」
そうですね。リーバーは食事をまともに食べず、仕事をし続けていた。お腹など空かなかった。眠くもなかった。どんなに食べても、眠っても、心は満たされない。
仕事をすれば、誰かが喜んでくれるかな?そう思っていた。貴方も。
「本当に無理をして――――」
コーン コーン
リーバーは目をゆっくりと開く。薄暗い天井が見えた。周りを見渡せば壁とカーテンがある。どうやらベットの上の様だ。
此処は?仮眠室?リーバーは上手く働かない脳でそれだけ導かせた。そして先ほど見ていた夢を必死に思い出そうとしたが、途中途中切れていた。
リーバーは急に笑い出した。
「あれから1年・・・だよな」
去年まで居たクロス元帥。急に教団から姿を晦ました。リーバーは教団に来て5年目、年齢にして23歳だ。もう立派な大人の筈なのに、人を恋しく思うとは、弱っているな。リーバーは心の中でそう吐き捨てた。
生きてる、そう信じている。しかし、それだけじゃリーバーの孤独感など拭える事はなかった。この胸に苦しみがある。
リーバーは狭い狭い世界の中生きていた。だから今は、世界を救う、この仕事をし続けていた。大きな世界を救いたかった。こんな小さな世界を犠牲にしてでも。
仕事をするだけの操り人形になっても良い。壊れても良い。俺は、貴方との連絡が途絶えたあの日から誓ったのですから。世界を少しでも守るって。だから、この手は止めませんから。
リーバーは手を天井へと伸ばした。もうこの心はどうの昔に壊れたのだから。
リーバーは手を何かを掴む様に握った。それを貴方は拾い上げてくれた。
それでも孤独には変わりないけど、希望がある。
「長く、遠く、貴方はもう行ってしまったね」
戻ってくるのを待ってます。それまで生きて、仕事をし続けています。
此処が貴方の居場所だと信じて。
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まさかの夢落ちスイマセン><フフッ、一度は書きたい夢オチねたと言う(ド殴)悲しい話ですが、まぁ、うん。途中あのクロス元帥の言葉が幻聴だったと言う・・・そっちの方が悲しいですよね?(ド殴;どっちも悲しいわ!)後、仮眠室じゃなくで、実は病室!とか・・・それはさすがに残酷だよなーと(ド殴)
では色々とスイマセン。失礼します。平成21年2月9日