可愛らしくて愛らしい私の妖精。
今日も妖精はイタズラをする為に走り回る。
妖精の足跡
闇に音を奪われた様に静かな時間。
カチャッと扉が開く音が聞こえた。扉は静かに閉められ、ギシギシッと仮眠ベットに近づく。
ベットの脇で止まり、ベットに眠る己にキスを一つ落とす――――
通り雨に降られた昼。
「最近どうも、妖精が夜使いしに来る」
ロイは肩を竦めながら言うとハボックとブレタの視線が一斉に向かれる。そのまま数秒間沈黙だったが、一斉して笑いが起こった。
特に山吹色の髪に青空色の瞳を持つハボックは腹をかかえての大笑いだった。
「大佐―冗談をつくならもっと上手についてくださいよー」
「嘘ではない。本当に夜な夜な私にキスをしてくるんだ」
「妖精さんが『仕事で家に帰れない軍人さんが可愛そう!』と思ってキスした、とか言わないでくださいよ」
ハボックは笑いすぎて咳き込んでいた。本当に想像力の良い奴が・・・ロイはククッと笑った。
最近ちょっとした事件が起きて家に帰れず、軍内で寝泊りしているのだ。
「気をつけてくださいよー。妖精さんはイタズラ好きですからね」
ハボックはロイに向けて十本の指をヒラヒラさせていた。一体何を送っているのだか・・・。
「次イタズラされたら捕まえるさ」
ロイは指を組み、その上に顎を乗せハボックを見て笑った。ハボックは苦笑いを浮かべながら「頑張ってください」と言った。
深夜。ロイは士官の仮眠室に眠っていた。
否、眠っていない。今だけじゃない。昨日も、一昨日も、ずっと起きていた。起きて妖精を待っていた。
そして今日も例外じゃなかった。静かな仮眠室の扉が開かれたのだ。扉は毎回の様に静かに閉められ、ギシギシとベットへと近づく。
ベットの脇まで来ると止まり、狸寝入りしているロイの口へキスをする。
そのキスはすぐに終り、来た時と同じ様に静かに帰っていく。
いつもは此処でロイは追わずに眠る。
だが今日は違う。
ロイは出て行ったのを耳をすまして確認すると、上半身を起こし床を見た。笑みを自然と浮んだ。
「妖精の足跡」
そう言うとロイは立ち上がり、イタズラをする妖精の後を追った。
軍内の一番奥の建物の裏。一番奥の建物は資料室に使われている為、人が見ている確率が極端に少ない場所だ。
ロイがその建物の裏を見れば、目的の妖精は簡単に見つかった。
壁に寄りかかりながらタバコを吸う、ロマンも何もない妖精の姿が・・・。
「もう少し妖精らしくしてみたらどうだ?」
「俺『妖精』と名乗った記憶がないスよ」
妖精、ジャン・ハボックはタバコの煙を闇空に向かって吹き付ける。
朝誓言をせずに追えば良かったか?そう思いながらロイはハボックの隣まで寄り、壁に背を預けた。
ハボックはロイに視線を合わさないまま声をかける。
「よく此処が分かりましたね」
フッとロイは笑った。やっぱし気になってはいたのか・・・ハボックがムッとしてロイの方を向いた時、ロイはハボックの足元を指差した。
「妖精の足跡があってな」
「妖精の足跡・・・?」
「泥」
ゆっくりと青空の瞳が見開く。そして己の靴の裏を見た。
「お前のこの時間は、見回りから帰った後だ。お前が泥をわざわざ拭わないだろう」
ハボックは靴を下ろす。その時勢いがあって泥が前方へと飛んだ。だが行動の割にはハボックの口元は笑っていた。
「なるほど」
「妖精なら飴とかパンとかもっとファンタジージックなモノを落として欲しいものだ」
「俺はヘンゼルでもグレーテルでもないスよ」
あれは足跡じゃなくて目印では?そう疑問に思いながらも、ロイはあえて口にしなかった。
闇空を見上げる。紺色の空に少し薄い青色の雲が出来ていて、浮いている筈の月を隠していた。
ロイはゆっくりと笑みを浮かべた。
「それで?寂しがり屋の妖精さんは何がお望みなんだ?」
短くなったタバコがゆっくりと落ちる。そのタバコが泥の上に落ち、ハボックはつま先でそれを消した。
「気付いているくせに」
ハボックはそう言うとロイの方へ体ごと向ける。ロイもハボックと向き合った。
目が慣れても、本来の色からそれ以上が分らなかった。顔が紅いのか、悪いのか・・・それでも、笑ってないのには気付いた。
ロイはハボックの頬に触る。いつもより熱く感じた。それは間違いかもしれない。
そんな事は重要な事かもしれない。でも、今はそれを考える余裕が無かった。
ロイはハボックへと顔を寄せた。
可愛らしく愛らしい私の妖精。
その日からイタズラの為に走り回るのを止めた。
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@言い訳@
ひ、久しぶりのお題小説・・・なのに、こんな『んん?』となる話しで良いのか・・・(ド殴:本当だ!)妖精の足跡が『泥』って!本当にスイマセン・・・思いつきませんでした・・・タバコの吸殻しか思いつきませんでした(殴:おい!)どにかく大人ぽい様な、不思議の様な感じで書きました。
では色々とスイマセン。失礼します。平成23年4月4日