ワルツの曲がクルクルと響く。
白黒の風景の中、灰色の影となった男女が踊り続ける。
場に浮いているのは俺か?それとも彼等か・・・
存在をしているのは俺か?それとも彼等か・・・
ワルツの曲が早送りの様に速くなっていく。
それと合う様に周りで踊り続ける男女も速くなる。
その時何故か不安に感じて周りを見回すのだ。
灰色の男女。それを見物にする人集り。
その人集りの間に見覚えのある彼を見つけるのだ。
白黒じゃない、漆黒の髪を持つ彼。
彼の名前を叫ぼうと口を開いた瞬間、意識が飛んだ。
否、正確には『目を覚ました』。
おぼろげな現実と確かな夢
マンネリ化。それは恐ろしい事だ、そう言う奴がいる。
その意味がなんとなく分った。
忙しいがやってる事はいつも一緒だ。計算をして、書類を見て、室長に判を貰って・・・とにかくそんな事の繰り返し。
マンネリ化しきっている事もあり、時間の流れが酷く早く感じる。
気付けば、もう班長になって何年も経っているし、半年単位で街に出ていない。もうこれは軽い軟禁状態・・・下手をすれば閉じ篭り?だし。
とにかく二、三日が一日に感じた時は俺自身が怖く感じた。
きっと脳がそんなマンネリ化を拒絶し始めたのだろうな。
最近夢を見る。
白黒の空間。それを意識した時に周りに灰色の人々が現るのだ。灰色の人々は俺の存在など気付いていない様に過ごしている。
夢の中での俺は俺の手とかを決して見ない。その為自分がカラーなのか、それとも彼等と同じ白黒なのか分らない。
ただ、彼等を見回しているだけだった。
珍しかったのかもしれないし、怖かったのかもしれない。なんだって場所はいつも違うし、行った事のない場所もあった。否、ほどんと行った事がなかった。
パーティー会場。見知らぬ街。海辺。電車の中。お店。図書館。学校・・・とにかく色々な場所だ。
でも最後は彼を見つけて、彼の名を叫んでいる途中で目を覚ます。
癖のある漆黒の髪。黒い肌。燕尾服。彼はいつも俺に背を向けている。だから顔など見た事はなかった。でも俺は確実に彼を知っていた。
でも目を覚ました後、思い出そうとしても思い出せない。
そして今日も夢を見た。
だけどいつもと違う。そこは個人部屋だった。いつもは人が多くいる様な場所で、実際に人も多くいた。
殺風景な部屋だ。俺は部屋の真ん中に立っているのだが、後ろに出入り口の扉があって、前に大きな四角い窓がある。左側にベッドで右側には壁。ベッドの横に白いサイドテーブルがある。
窓の外には三日月が浮んでいる事から、今が夜だと知る。
周りをもう一度見回すが、誰もいなかった。仕方なく俺は窓に近づき、黒一色の窓に触れる。その時、自分の肌がカラーなのだと気づく。
「浮いていたのは俺の方か・・・」
その時フッと『マリーの部屋』を思い出す。
ある学者の思考実験だ。
マリーという女の子がいる。マリーは生まれた時から白黒の部屋にいて、白黒の世界で育った。
自分も白黒でマリーは生まれてから色を見た事がなかった。そこはこの夢と違う訳だが・・・。
とにかくマリーは『色』を見た事がなかったんだ。でもマリーは優秀な子で、視覚の神経生物学をマスターしていて・・・つまり、色の知識を持っていた。
どうやって色を判別するのか、更に『青い』とか『赤い』をどんな時に使うかも知っていた。分り易く言えば、『色』を見た事なかったのに、その色を知っているのだ。
そんなマリーに初めて『色』を見せた時、何か新しいモノを学ぶか?そんな思考実験だ。
何を学ぶか知らないし、それについて議論する前に『女の子を解放しろ』と思ってしまう。実際に空想だと分かっていながらも言うだろう。
そこんどこが『堅い』とも『お人よし』とも言われる原因だろう。
俺は目を一旦閉じ、フッと笑ってから目を開き後ろを振り向いた。
ヒュッと喉が鳴ったのを感じた。
目の前に彼が居たのだ。
癖のある漆黒の髪に黒い肌に燕尾服・・・間違いない。毎回出てくる彼だ。俺は声を出そうと口を開くが、名前が出てこない。だから声にならぬまま口を噤んだ。
どうしたらいいのか分らず、俺は黙って彼を見つめていた。だがこのままだと確かめられないまままだ夢が終ってしまう。そう思って俺は彼に近づく。
そして彼の肩に手を置こうとした。その時、彼が振り向いた。
「リーバー」
あ、知って――――
「リーバー」
目を開けば、目の前に彼の顔があった。
白い肌に漆黒の癖毛。服は燕尾服じゃなく、薄茶色のシャツ。
彼は俺が目を覚ました事に笑みを浮かべ、俺を抱きしめてくる。抱きしめてくると言っても、俺はベットの上で、彼はただ乗ってる様な形だ。
正直な話、重い・・・身長は彼の方が高いのだから当たり前だが・・・。
「リーバー!良かった目を覚まさないかと思った!」
次第に思考が回ってくる。そして目の前にいる彼の情報が甦ってくる。
あぁ、ティキ。
俺はゆっくりと笑みを浮かべる。本当は狂った様に声をあげたかった。だけど堪えて、笑ってない目を左腕で隠した。
馬鹿だよな。
「おぼろげな現実と確かな夢」
「・・・?リーバー?」
「俺はその二つで構成されている。夢は何時の間にか現実を越えて、」
「何を言って――――」
「残酷な現実をおぼろげにした」
知らない、なんで言わない。
俺は右手を心配そうに見つめるティキの頬に触れる。
「会いたかったけど、会いたくなかった」
「おいおい、どっちだよ」
矛盾。そう思ってティキは笑った。馬鹿だな。矛盾じゃないのに。
会いたかったけど、こうして会いたくなかった。意味合い的にきっと矛盾じゃないだろう。けど、きっと心は矛盾をしている。
ティキは俺の左腕を目元から離し、その口にキスを落とす。
なぁ夢を見るんだ。全部白黒で、そこにお前がいて、名前を呼ぼうとすると、目を覚めて・・・。
きっと次夢を見る時、お前は俺に話しかけるだろうな。
何もなかった様に。そして夢に引きずり込ませるのだろうな。
「久しぶり、リーバー。ぐっすり眠ってたから起きないかと思った」
現実がおぼろげになっていく。それは夢が現実を越えるから。
きっと俺はいつか夢に溺れ、現実を拒否する日が来る。
俺はティキの袖を握る。すがる様に。
「目が覚めなくなったら、起こしに来てくれ」
「眠り姫にはキスだよな」
「お願いだから、普通に起こしてくれ」
なぁティキ。
「分ったよ。目が覚めなくなったら、起こしに来てやる」
「有難う」
これも夢なんだろ?
俺は笑いながらも現実並に温かいティキを抱きしめた。
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@言い訳@
ヤ、病んでる・・・スイマセン!(ド殴:本当だ!)最後は幸せな話にしたかったのですが、どうも無理ぽいですorz何故ですかね・・・因みに、最後のティキは現実です。でも、現実でも悲しい話です・・・きっと原作よりだったら幸せになりませんね(遠い目)
では色々とスイマセン。失礼します。平成23年4月10日