ラビに勝ってクロウリーに負けてから一週間。

 リーバーはすっかりチェスの事を忘れていた。たが、マービンの一言で記憶と言う傷口を開かれた。


「班長ってクロウリーに負けたんですね。」


 最後にハートマークがつくほどテンションを高く言う。リーバーはクサッと心臓に突き刺さる。

 たが、マービンはにやにやと笑みを浮ばせながらリーバーの顔を覗き込む。

 マービンはチェスが強い方だ。少なくともジョニーよりも強い。


「取り合えず、クロウリーには勝ちましょ?」


 トラウマに憎しみ。



【Chess After That】



 此処は食堂。

 そこのある机でリーバーとマービンが向き合い食事を取っていた。机の真ん中にはチェス盤が乗っていた。リーバーは白のナイトを手に取り、動かす。

 そしてすぐにマービンが黒のクイーンをf8に置く。


「チェックメイト」

「やっぱし、納得行かない。」


 勿論、勝負の事じゃない。今の状況だ。


「何で俺がマービンの事でクロウリーに勝たなきゃイケナイんだ?」


 マービンはそれを聞くと、ニッコリと笑った。



 ある日の事。マービンは好物のシュークリームを頼んだ時だった。


『あんら〜ごめんなさい。シュークリームは今無いのよぉ〜。』

『えー。いつもはあるのに・・・。』

『ごめんねー。いつもより多めに作ったけど、全部食べちゃったのよね。』

『・・・誰が?』

『あの子が。』


 そう言うとジェリーは指を指す。そこには口の周りにクリームを付けているクロウリーの姿があった。



「あの時の恨みは忘れられない!自分より弱かった奴にやられれば良いさ!!」

「・・・スイマセンね・・・弱い人で。」


 リーバーは最近はまったチキンカレーを一口、口に含む。

食べ物の恨みは恐ろしいとは言ったものだが、それの巻き添えは嫌だった。


「でも、勝ちたくないですか?」

「勝つつもりは無い。」

「そやって、逃げちゃ駄目ですよ?」

「うっ。」


 確かに、リーバーは逃げている。それに自覚を持つリーバーはマービンから目を逸らす。


「まぁ、元先輩として言わさせて貰うが、逃げて良い事はない。」

「ただのチェスでしょ?」

「チェスだからだ。」


 マービンはシュークリームを頬張りながら続ける。


 チェスの戦略は言い換えれば駒一つ一つの役割分断だ。人をまとめる人として、チェスが得意な筈だ。

 まぁと言ってもチェスでそれらが決まる訳じゃない。それでも、チェスが苦手だから、と言って逃げるのはどうだと思う。それは、大事な時には何もしてくれない、部下はそう思ってしまうだろ。


「隠すのもだ。」

「マービン・・・」


 シュークリームが無ければ説得力があるのに、とリーバーは心の中で嘆いた。

 それでもマービンの言う事は当たってる。逃げる事はイケナイ。逃げる事はそれまでの信頼なども失う、得な事など一つも無い。

 それでも、何故か、シュークリームのクリームを口の周りに付ける男性にだけは言われたくない、と思ってしまうリーバーだった。



 それからリーバーはマービンと対戦し続けた。



「まぁ、何でしょう・・・ドンマイ☆」

「もう、知らん!翌々考えたら、明らかに対戦相手間違ってるよな?」

「班長がチェスですか?」


 そこにやってきたのは科学班班員。勿論、リーバーのボロ負けである。実際はリーバーは他の人よりも強い分類に入るが、科学班の中では、弱い、に入ってしまう。

 科学班班員はそんなリーバーを見て顔を見合わせる。仕事も知識もカリスマだが、不得意なところもあるのかーと思い何処か親近感を覚えたのだ。


「じゃぁ、皆と対戦しません?そしたら色々な戦略も出るし!」

「班長も強くなるよう、努力してますし!」

「・・・まぁ、そうだな。」


 されていると言うか・・・強制的と言うか・・・。リーバーは何と言えば良いか悩んだが、諦めた。確かに、強くなりたい、と思っていたのは真実。



 それからリーバーは貴重な休憩時間を使い、対戦をしていた。一人の時は体力保存の為、仮眠を取っていた。


 それから月日は流れた。


「んー。強くなってるんだけどなー。」

「マービンが強すぎるんだよ!」


 リーバーは涙が出そうになるが、堪える。リーバーはあんましチェスをやらなかったから弱かっただけで、実践を積めばすぐに強くなる。たが、実践に弱い者を心の何処かで嘲笑うマービンに勝てる訳がない。

 そんな時、ある科学班班員はある提案を浮かべる。


「大切なモノをかけてみたらどうですか?」

「いやいや、そこまでするか?コイツが強いだけだから!」

「あー先輩をコイツ呼ばわりした。いーけないんだイケメンだ。」

「まぁ、チャレンジですから。えーっと、じゃぁ、このコップとか。」

「泡―!!」


 泡と書かれたコップを見てリーバーは目を潤ませる。それはリーバー愛用の大切なコップだ。そのコップは一つしかなく、大切に使っていた。


「まぁ、勝つよう頑張るんです、ね。・・・なんか、オーラーが出てるな。」


 リーバーは黒いオーラーを出しながら白いナイトを握り、移動させる。



「チェックメイト」

「負けた。」

「「おおおっ!!」」


 リーバーは見事勝ち、泡のコップを取り返す。そして無事かどうかを確かめる。そんなリーバーを見た科学班班員は思った。


「何で言うか、少年漫画みたいだなー。修行をして、ヒロイン(泡にコップ)を助ける為勝つ。みたいな・・・。」

「あー確かに。」


 そして次はラストボスの所へ。



 此処は食堂。そこでラストボスごとクロウリーに勝負を申し出していた。勿論、マービンから。


「勝負であるか?」

「この人(マービン)が。」

「いやいや、班長が!」

「良いである。チェスは好きである。」


 それを聞くとマービンは笑みを浮ばせ、チャスをセッティングした。その様子を見ていた周りの人が集まる。科学班班長VSクロウリーだ。勝つなら科学班班長であるリーバーだろう。

 しかし、此処最近チェスをしているリーバーを見ていて、チェスは苦手の方だと知っているから、どっちが勝つか、興味を持っていた。協力していた科学班班員も固唾を飲み見守っていた。

 リーバーは白のポールを動かす。



「チェックメイト。」

「おおっ。」


 結果はリーバーが勝った。勝負的には良い勝負だった。クロウリーは負けて落ち込んでいた。

 リーバーはあの修行と言う実践をして良かったと思った。


「よっしゃ!恨みが晴らされた。」


 そのマービンの一言でリーバーの内心が複雑化した。

嬉しいが、結局はマービンの掌に踊らされただけだ。

 クロウリーは気にもせずまだチェスを並び直す。


「次は負けないである♪」


 そして気付く。リーバーはチェスが苦手だ。確かに強くなったが、だからなんだろうか?と。これから大切な勝負をする事があるか?と問われれば、来ない、と答えるしかない。

 そして、これからチェスに誘われて、貴重な休憩時間は減らされる。休みの日なら良いが・・・。それほどリーバーはチェスが好きじゃない。


 その日から対戦を見た人からチェスに誘われるようになった。


 予想通り休憩時間が減った。



「リーバー班長、チェスしよう!」

「それで仕事をサボりたいだけでしょ?仕事してください。」


 リーバーは溜息を吐く。色々な人に対戦したからか、マービンに余裕に勝てるようになった。それが唯一のチェスが強くなって良かったと思う事だった。


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@言い訳@追加リクエスト⇒『班長と科学班』

 リクエストにあってるのかあってないのか・・・そして完結!(ド殴)本当にスイマセン・・・結局科学班らしい科学班はマービンしか出てきませんね・・・orz
 気に入らなかったら申しててくださいm(_ _)m
 では色々とスイマセン。失礼します。


背景画像提供者:短生種の戯言 マスタァ様