スパナと出会ったあの時からモスカはライバルだった。


 それでも、スパナの(悲しくも)唯一の心開く奴だ。


 だから、仕方ない、と思っていた。


 なのに、何故、こんなにもムカムカするんだ?



【Gelosamente】



 此処はスパナの作業場。俺は仕事帰り、何のためらいも無くそこに入る。だが、入ってすぐに後悔をした。

 いつもならモスカ創りをしているスパナが、出来上がったモスカと愛の儀式をしていたのだ。それは俺が行われる前から行っている。スパナにとっては恒例行事だ。

 儀式は簡単だ。抱きしめてひたすら、頑張れとか、これからも愛しているよと言うだけだ。愛の告白を言い続けると言う端だから見れば痛々しい光景の訳だが・・・その時のスパナの顔は笑顔だ。

 この儀式の趣旨は、無事に完成してくれて有難う、と言う事だからな。笑顔で戦場に行く息子を見送る母親って事だろう。

 少し経てば、すぐに終わる。俺はそう思い壁に背を預け、愛の儀式を見つめる。


 毎回のことだ。


 そう思ってるのに、何だ?この気持ちは・・・。


 胸の奥が直接勢い良く捕まれた様な痛みは?


 俺は溜息を吐き、片手で顔を覆い隠した。俺もそれなりの年だ。この気持ちが何なのか、すぐに分かる。ただ、認めたくないだけだ。


―――嫉妬。


 おいおい、俺は馬鹿か?ただのロボットだぞ?確かにスパナは滅多に、愛している、などあの可愛い笑顔では言わない。だからって、嫉妬はないだろう。

 俺は指と指の間からスパナの愛の儀式を覗き見る。また終らないようだ。終らないと知って、その嫉妬の炎が大きくなってしまった。そんな自分が憎たらしく感じてしまう。

 スパナからモスカを奪ってどうする?スパナはモスカを創っていないと生きてイケナイほどの中毒なだけだぞ?俺はスパナの命の源まで壊すのか?

 それでも、嫉妬の炎が治まる事は無い。


 どうすりゃ、良いんだよ;



自分を優先か、スパナ優先か。



 だが、俺の考えは一つにまとまっていた。自分優先。ただ、それを止めるのがスパナの世界だ。スパナの世界は儚く壊れやすい。だから、壊れないように何処か遠くで見守ってる訳だが・・・


 どうも、限界の様だ。


 恐らくこのまま待っても、嫉妬の炎を大きくするだけだろう。

 俺はゆっくりとスパナへ近づく。スパナは相変わらず腕が回らないモスカの胴体に腕いっばいに広げ、抱きしめている。それすらも苛つきを覚える俺は、恋人失格だろうな。

 スパナの抱きしめる手を掴んだ。スパナは無表情になり、俺を見上げる。スパナは空気がビリビリしてる事に気付いたのだろう、もう片方の手をモスカから離し、飴の棒を握る。

 そして視線で、何?、と問う。俺は言葉を出せなかった。別に用は無い。ただ、俺の醜い嫉妬で来て、邪魔しただけだ。色々と言葉を捜し始めるが、翌々考えたら探す意味が無いと気付き、今の気持ちをそのまま言う。


「俺の事を無視して儀式をしたから、嫉妬した。」


 スパナは無表情を崩さず、俺の顔をジッと見つめる。少し経ち、モスカに目線が移り、すぐに俺に戻った。


「・・・無駄な嫉妬だね。」


 スパナは依然として無表情から表情を変えず言った。まさか、無駄、で収められるとは・・・。俺はつい小さく声を出し笑ってしまった。

 俺にとって大きいな嫉妬は、スパナにとっては無駄となる訳だな。


「本気で嫉妬したのにな。」

「それが無駄だ。モスカにはウチの思いが詰まっている。つまり、モスカに嫉妬していると言う事は、ウチ自身に嫉妬していると言う事だ。」


 俺は笑い声を引っ込ませ、首を傾げた。言いたいことは分かるが、モスカは結局はモスカだ。それにスパナ理論ではモスカは生きていて、それぞれ違う筈だ。造る、も、創る、になってるくらいだからな。

 スパナは俺か目線をずらし、真横にいるモスカの顔と呼べるか分からん頭部を見つめる。そして鉄の胴体を軽く叩いた。


「・・・モスカもγが好きだって言っている。」


 スパナはそう言うと俺に向かって口端をあげた笑みを浮かべる。いつも俺に見せてる笑みだ。だが、表情はともかく、さっきの言葉は・・・俺は一瞬目を見開いたが、すぐに意地の悪い笑みを浮かべる。


「も、って事はお前もそうなのか?」

「・・・モスカは何千台も居る。」

「でも、どのモスカもお前の意思をついてるんだよな?」


 そう言うとモスカは目を見開き、頬や耳を赤くする。そしてバツが悪そうに目線をずらすが、もう遅い。

 俺はスパナの細い腰に手を回し、スパナを俺の方に引き寄せ、抱きしめる。


「可愛いな、お前は。」


 俺はそう言うとスパナの頭を優しく撫でる。スパナは相変わらず気持ち良さそうに目を細める。


「嫉妬していたγも可愛かったよ。」


 俺は目を見開き、スパナを見れば、スパナは意地の悪い笑みを浮かべていた。俺は目を見開いたが、すぐに苦笑いに変わる。


「たくっ、何処で覚えるんだ?」

「ん、γからだ。」


 俺はモスカが嫉妬する様に、見せびらかすようにスパナにキスした。


 否、モスカはスパナ自身だから、嫉妬はしないか。それでも、やっぱしお前には負けないからな。モスカ。


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@言い訳@リクエスト内容⇒『嫉妬γさん』

 Gelosamente⇒嫉妬して。スイマセン!全然嫉妬ネタじゃないですねorzγさんヘタレすぎです!(ド殴:お前が書いてるんだろ!)モスカさんとγさんは永遠のライバルだと思います!(ド殴)
 改めてリクエスト有難うございましたw
 お気に召し上がりませんでしたら、申しててください。
 では色々とスイマセン。失礼します。平成20年11月18日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様