あの日の事を酷く覚えていた。
茜色の夕日がシャマルを照らしていた。
『シャマル!』
その声にシャマルは一人の少年を見つめる。少年はシャマルの、長く伸びる影で染まっていた。だが、その影に染まったブラックグリーンの瞳は揺るぎが無い。
少年は何の躊躇も無く、シャマルに人差し指を指した。
『俺が大人になったら、お前を嫁にしてやるっ!!』
その言葉にシャマルは目を見開いてしまった。だが、少年の目に後悔の色は表れなかった。
シャマルはそんな少年に、口端をゆっくりとあげた。
『餓鬼が生意気な口を叩くなよ。』
だが、その言葉は何処か弾まれていた。次第に空に闇が侵入して行った。聞こえる足音は少年に近づく。風により木々が揺れた。シャマルは少年の頭を撫でた。窓はもう既に、闇に飲み込まれていた。
あの日の安定した心を、俺は吐き気がするほど覚えていた。
【Cilecca】
シャマルの耳に授業の終わりを知らせるチャイムの音が聞こえた。シャマルはくそめんどくさいレポートを書く手を止め、茜色に染まった窓に顔を上げた。
茜色は温かくシャマルを照らした。シャマルの白い顔も健康そうに映る。
シャマルは目を細めた。茜色の空は好きだった。快晴の青が終わり、闇の紺になる前の色。その色は酷く心を落ち着かせる。その同時に、心に穴が空くような感覚が襲う。
ガチャッ
「何湿気た面しやがってる。ヤブ医者。」
扉が開いて、すぐに言われた言葉。シャマルは扉の方を向き、露骨に嫌な顔をした。扉から入ってきたのは、グレーの髪にグリーンの瞳を持つ男性、獄寺隼人だった。
今はグレーの髪もグリーンの瞳も、赤みかかっていた。
「此処は男禁止だ。」
「知るか。」
獄寺はそう言うと、真っ白なシーツが引かれたベットに腰を降ろし、そのまま寝転がった。シャマルはそれを見て、眉間に皺を寄せた。
「良い度胸だな。」
「別に良いだろ?どうせ、使ってないんだろ?」
「女以外、使わせねぇんだよ。」
「相変わらず変態だな。」
そう言うと獄寺はシャマルに背を向け、仰向けから横になった。シャマルは溜息を吐き、ベットを隠すように、半分だけカーテンを閉めた。
「さっさと出ろよ。もうそろそろ終わりの時間だ。」
「・・・まだ、ナンパしに行くのかよ。」
獄寺の何処か攻める様な言葉に、シャマルはカーテンの先に居る獄寺を見つめる。
「さぁな。」
それだけ言うとシャマルはボールペンを握り、レポート用紙にまた書き始めた。これを書かないと金にならない。
少しの間、ペンを走らす音だけ鳴り続ける。窓の茜色は次第に闇に飲み込まれ始める。この瞬間が嫌いだった。いつだって、闇は訪れる。まるで、自らの体が闇に侵食されるようだ。
「なぁ、シャマル。」
ペンを走らす音が止まった時、獄寺が声を出す。もう既に窓の外は闇が広がっていた。部屋も薄暗い。
「あの時の約束、覚えてるか?」
そのアバウトな質問にシャマルはすぐに分かった。
茜色がシャマルを照らし、出来たシャマルの影が少年、獄寺隼人に照らされたあの時の約束。
『俺が大人になったら、お前を嫁にしてやるっ!!』
そんな約束。今思い出しても吐き気がした。獄寺に?いや、自分自身に。あんな餓鬼の戯言を一瞬でも受け入れて・・・。
「・・・覚えていたら、どうする?」
あれは悪まで餓鬼の時の話だ。餓鬼って言うのは、自分に都合が良い大人を好きになる。だから、ノリであんな事を言ったんだろう。
今は周りが見え始め、ある程度の区きりが出来、恋愛感情が何か、それが分かってくるだろう。
だから、この後の答えは必然的に一つになる。
“忘れてくれ”だろう。
そっちの方が都合は良い。お互い、外道な人生を追わずに済む。
だが、獄寺は予想外の事を言う。
「だったら、俺と付き合え。俺は―――
今でもお前が、、、好きだからな。」
そんな言葉がシャマルの耳に、異様に響き渡った。シャマルは嘲笑うように、口端をクイとあげた。
「馬鹿か?生物的には女が好きになるだろ?」
シャマルは35と言う、お世辞にも若いに入らない人間だ。
獄寺は上半身を起こし、カーテンを開けた。そして床に足を付き、立ち上がり、シャマルの顔を真っ直ぐと見た。
「俺は昔から・・・お前の事が頭から離れなかった。ずっと、、、離れなかった。」
獄寺は切羽詰まった言葉を口にする。シャマルはそんな獄寺を見つめる。獄寺からは、そんなシャマルの顔は逆光で見えなかった。急の告白に、シャマルはどんな顔をしてるのだろうか?
悲しい?それとも、餓鬼が、と笑ってるのだろうか?
中肉中背な体のシルエットが窓の中心に浮かび上がっていて、何故か美しくも、恐ろしくも感じた。
「餓鬼が生意気な口を叩くなよ。」
そんな冷たい言葉が響き渡った。獄寺は影に侵食された床を見つめながら、下唇を噛み締めた。
風によって揺れ、軋む木々の音が異様に聞こえた。その時、足音が獄寺に近づく。闇に薄っすらと月が浮び始める。足音は獄寺のすぐ目の前で止まった。シャマルが窓から離れた為、部屋にうっすらと月光を浴びる。
獄寺は深く目を瞑った。
その時、体温が低い手が獄寺の頭に乗せられる。その手はグレーの髪を掻き混ぜる様に撫で回した。
その意味が分らず、獄寺はゆっくりと目を開け、顔を上げた。そこには、逆光ながらも、確かに見た。苦笑を浮かべたシャマルの顔が。
「後悔するぞ。」
シャマルのその言葉に獄寺は迷い無い瞳を向けた。
「絶対に後悔しないし、させないからな。」
そう言うと獄寺はシャマルの肩に手を置き、背伸びをして、何とかシャマルの下唇にキスをした。そんな9Cm下の獄寺にシャマルは、ククッ、と笑い声を漏らす。
茜色はいつか闇に飲まれる。飲まれた闇は光に変わり、茜色に変わる。茜色こそが最後の色かもしれない。
風が木を軋ませ、梢に芽生えた葉を落とす。空に浮ぶ雲はゆっくりと動き続ける。
「なぁシャマル・・・お前は俺の事を愛してるのかよ?」
茜色に照らされていたあの日、シャマルは獄寺の頭を撫でた。
『シャマルは、嬉しい?』
『お前が嬉しいなら、嬉しいな。』
少年時代の獄寺の問いにそう答えた。逆光で、尚且つ茜色に染められていたシャマルに、獄寺は気付かなかった。
頬や耳を赤らませながら、言った事に―――。
「お前が俺を愛し続けるなら、俺もお前を愛し続ける。」
闇に溶け込んだ肌は、茜色に負けない様に紅く染まっていた。だが獄寺はまだ気付かなかった。
シャマルは少しだけ屈み、獄寺と同じ視線になり、触れるだけのキスをした。そして、また背を伸ばし、獄寺の上に自分の背と同じ高さまであげた片手をかざした。
「もっと背を伸ばさないとな。」
「子供扱いするんじゃねぇ!!」
そう言うと、獄寺はシャマルの手を叩き落とそうとしたが、届かなかった。それから獄寺は苦手な牛乳を飲むようになったとか。
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@良い訳@リクエスト内容⇒『獄シャマ』
何の話ですか??(ド殴:こっちが聞きたい!)本当にスイマセン><21歳も違うので、シャマルさんを大人ぽく書いていたんですが・・・そうしたらシャマル攻めにorz(ド殴)大丈夫!受けです!ベットでは下にn(ド殴:苦情構いませんからvV)
改めてリクエスト有難うございますw
お気に召し上がりませんでしたら申しててください。
では色々とスイマセン。失礼します。平成20年11月26日
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