気付けば、俺はずっと貴方に流されている。


 反論してる筈なのに・・・・・


 反抗してる筈なのに・・・・・



 何故?



 いつも貴方に流されてしまうのだろうか?



【Shake】



 此処は科学班フロア。

いつもの様に科学班班員は書類に研究に実験を行っていた。科学班フロアは資料と書類で埋め尽くされている。

特に科学班班長、リーバー・ウェンハムの周りには書類と資料と泡カップしか無い。リーバーは腕千切れるのではないのだろうか、と思うほどペンを持つ手を忙しく動かしていた。

そんなリーバーに近づく者は居ない。今のリーバーに話しかけたら、計算は飛び、スイッチが入り、あ〜れ〜、となるからだ。

だが、この男は違うようだった。

科学班フロア中に皮靴の独特な乾いた音が鳴り響いた。リーバー以外の科学班班員は一斉に足音の主を見つめる。

視線を浴びた人物は、新鮮な血で塗った様な紅い髪に瞳を持つ男性、クロス・マリアンだった。

クロスは任務に出た筈だが・・・フリル付きの漆黒の団服には汚れ一つ無く、任務に出る前と同じだった。

クロスはリーバーに、一歩、一歩と近づく。近づく度に科学班班員は、近づくな、近づかないでくれ、と願った。勿論そんな願いがあのクロスに叶うわけは無かった。

クロスはリーバーの真後ろに立つ。が、リーバーは計算式を解くのに必死でクロスに気付かなかった。

そんなリーバーにクロスは眉間にしわを寄せながら、リーバーの解いてる紙を奪った。リーバーは、あ、と顔をあげるが、遅かった。クロスはリーバーが何十分もかけて解いていた計算式の紙を真っ二つに破いた。


「ああああっ!!後少しで、終ったのに!!」


 リーバーは床に落ちる細かく刻まれた書類達をかき集め、なんとか復元をしようとしたが、無理の様だ。

 リーバーは肩を震わせ、クロスをギッと見上げる。


「何するんスか!!」

「お前が俺を無視するからだろ?」

「つまりは、理不尽な行動って事ですね!この書類には何も罪は無いのに!!」

「・・・それ以上グダグダ言うと―――」


 クロスは綺麗な笑みを浮べ、机の上にあったリーバーが何十分もかけて書いた書類の端を持ち、リーバーに見せびらかす。リーバーの顔は一気に青ざめる。


「―――これがどうなるかな?」


 クロスはそう言うと、書類から、ビリビリ、と悲痛の音が微かに響いた。リーバーは無意識に書類に手を伸ばした。


「スイマセン!スイマセン!!それだけは止めてください!クロス元帥!!クロス様!!」


 リーバーがそう言うと、クロスは、フン、と息を吐く。そして書類を机の上に戻した。リーバーはそれにホッとした。そう思うのも束の間に、クロスはリーバーの腕を握り、リーバーを無理矢理立たせる。

 そしてリーバーの腕を引いて、科学班フロアに去ろうとする。それに気付き、リーバーは慌てて反論する。


「クロス元帥!俺、また仕事が―――」


 リーバーがそう言うとクロスは止まった。急に止まったため、リーバーは背の高いクロスの背中にぶつかってしまった。クロスは後ろへゆっくりと振り向いた。

その顔には怖いほどの綺麗な笑みが浮かび上がっていた。それにリーバーは、ゾッ、としてしまった。


「書類がどうなっても良いと?」

「お願いですから!あの書類に手を出さないでください!」


 リーバーがそう言うとクロスはまた歩き出した。逆らったら、約半日間が無駄になる。リーバーは自分の無力感に唇を噛み締めた。

 そしてクロスとリーバーは科学班フロアから去った。それを科学班班員はハンカチを振って、どうかご無事で〜、と胸中思いながら見送った。




 連れて行かれたのは、クロスの部屋だった。酒とタバコの臭いが充満していて、あっちこっちに蜘蛛の巣が張っていて、リーバーは吐き気を感じてしまった。

 クロスは何処ぞやの王族が寝るような屋根付きベットに腰を降ろし、タバコに火を灯した。


「で?何スか?書類を人質に取ってまで此処に来させた理由は。」

「あんな計算式にどれだけ時間を掛けてやがる?あんなの10分ありゃ充分だろ。」


 クロスの返ってきた言葉にリーバーは額に青筋が浮かぶ。あんな計算式だぁ?と。

 言い返したかったが、今言い返せばリーバーの命は無い。リーバーは険悪のオーラーだけ出す。勿論、魔王クロスに届く訳が無かった。

 クロスはタバコの煙を吐き出しながら立つリーバーを見上げる。


「で?お前は俺に言う事があるだろ?」

「は?」


 リーバーはクロスの急の言葉にマヌケが返事をしてしまう。言う事?


「えーっと、仕事を邪魔しないてください、って事スか?」


 リーバーがそう言うとクロスはニッコリと笑みを浮かべ、立ち上がる。合ってるのか?とリーバーが一瞬そう思った時、額に断罪人を押し付けられた。押し付けるクロスは笑みを仕舞う様子は無く、引き金にかける指に力を入れた―――


 バンバンッ!!


 銃声が鳴り響いた。扉に穴が空く。リーバーは酷く青ざめ、床に座り込む。第六感で察し、下に座り込んだのだ。ハラハラッと床に数本、銃弾に掠った髪が落ちる。

 殺す気だ!この人、絶対さっき殺す気だった!とリーバーは心の中で叫ぶ。


「チッ。」


 クロスは舌打ちをしてリーバーを見下ろした。リーバーはたまにクロスが怖く感じてしまう。恐ろしいほど本気だからだ。


「な、何スか?!」


 最初らへんが恐怖で声が裏返ってしまった。殺される。今すぐ逃げたいが、戦場に立たぬリーバーの足は酷く笑っていた。


「だから、俺に言う事があるだろ、つってるんだよ。」


 クロスの眉間にしわを寄せ、醜い家畜を見る様に見下ろした。本当にクロスの考えてる事が分らない。否、分ったらもはや人間的倫理が崩壊している。

 しかし、クロスがこれほど言う、言う事、は大事な物だろう。しかし、全然思いつかない。

 ガチャッ


「まさか、本気で分らない訳じゃねぇだろうな?」

「いやいや、てか、断罪人を向けないでください!!」


 しかし、本気で思いつかないリーバー。一体何がある?クロス元帥に言う言葉・・・。

 その時、ピーンとある単語が思い浮かぶ。




「も、もしかして・・・・おかえり、ですか?」



 リーバーがそう言うと、クロスはしゃがみ込み、リーバーと同じ視線になる。


 カチャッ


「気付くのが遅ぇんだよっ!!」

「え、ええーっ?!」


 クロスはリーバーの額にまた断罪人をつける。リーバーは両手を勢い良く挙げる。当たったらしいが、答えるのが遅かったらしい。


「たくっ、お前は他のエクソシストには言うくせに俺には言わねぇ。差別か?あぁ?」

「・・・だってクロス元帥何時帰ってくるか分らないし・・・怖いし・・・」

 カチャッ

「あぁ?」

「わ!!スイマセ―――」


 謝りの言葉を言い切る前にクロスはリーバーの口を塞ぐ。口の中に舌が侵入し、リーバーの舌を器用に動かす。

 少し経ち、離れた。口と口を繋ぐ細い一本糸もすぐに音も無く消える。リーバーは腕で口元を拭おうとしたが、クロスに押し倒されるのと同時に、両手を囚われる。


「クロス、、元帥?」

「お前はお人よし過ぎるんだよ。」


 リーバーはその言葉に首を傾げる。リーバー自身、お人よし、では無いと思っているし、お人よしなのはむしろ―――だが、言えば絶対に殺される。


「俺、仕事が・・・」

「殺されたいか?」

「何故そう言う選択に?!」

「言わなかった罰に決まってるだろ。」


 そう言うと、また口を塞がれる。




「もう!クロス元帥、リーバー君をあんまし苛めないで頂けませんか?」

「はっ。テメェには関係ねぇだろ?」


 室長室。プンスカ怒るコムイにしれっと答えるクロス。コムイは溜息を吐きながら中指で眼鏡を直す。


「無理させたくなかったら、俺の任務量を減らすか、アイツの書類を減らすかしろ。」

「・・・そう出来れば苦労は無いんですけどねー。」


 コムイは溜息をまた吐き、書類に目を移す。まだ任務の話だ。クロスは不機嫌そうに資料に目線を移した。




 高く設置している窓から月光が差し込む。

 月光が屋根によって遮断されている、暗いベットの上、リーバーは布団に包まれ、眠っていた。ベットの前、月光に照らされクロスはリーバーを見下ろす。

 クロスは眠るリーバーに触れるだけのキスをする。




 コイツは人に流されるお人よしだ。



 反抗してる様で、反抗してない。




 最後は人を許してしまう。





 なぁ






 お前は何故そんなに優しいんだ?


 まるで――――




「マリアを思い出す。」


 そう言うと、クロスは任務へと部屋を出る。


 モソッ



「そんな事を言わないでくださいよ。」



 流されて、辿り付く場所はいつだって悲しみ。


「俺だけ、愛してくださいよ。」


 自分を流すのは、愛してくれるからでしょ?


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@言い訳@リクエスト内容⇒『クロリバで強引に流すクロスに流されるリーバー』

 悲しい展開に驚きが?!(ド殴)本当にスイマセン><両思いですw素顔になれない二人vV萌えますよねw(ド殴:お前は黙れ)
 改めてリクエスト有難うございますw
 お気に召し上がりませんでしたら申してでください。
 では色々とスイマセン。失礼します。平成20年12月6日


背景画像提供者:MECHANICAL
 asagi様