空を泳ぐ。
何処へと、泳ぐ?
地図など無い。
コンパスは動かない。
何処へ行くか分らない。
さぁ、自由の空へ。
恐れずに。
怖がらずに。
そんな歌が聞こえてくる。フッと上手いとは言い難い歌声が聞こえる談話室に目を向ければ、今日休みのリーバーがソファに深く座り、本を読みながら歌っていた。
そう言えば、機嫌が良い時いつもこの歌を歌っていた。本人は無意識で、歌ってました?と聞くほどだ。最近はそれも無い。
否、あの日から無い。
誰かが笑った空。
今も残る空。
泳ぐ空。
消えぬ空。
空はいつだって僕等を見ている。
【Poem】
科学班フロアはいつも以上に忙しい。そこに、休みの筈のリーバーが来たのはついさっきの事。
「駄目です!今日班長休みじゃないスか!」
「しかしだな;」
極度の仕事中毒のリーバーにとって、一日休み・・・しかも、一日目の徹夜明けだ。酷使続ける事に慣れた体は眠れず、かと言って呑気に本を読んだり町に出たりすると何故か罪悪感が生まれる。
リーバーが言う通り、今の科学班フロアはリーバーが抜け、書類が溜まってきている状態だ。確かにリーバーの力を借りたいが、恐らく半年ぶりのまともな休みだ。そんな休みを無駄にさせたくないのだ。
「ほら!町に出てください!」
「・・なんか、嫌われてるみたいだな。書類仕事じゃなくなでも、ドM相手なら―――」
「お願いだから!ドS化だけは止めて下さい!!」
そんな声にリーバーは苦笑を浮かべて、ごめんな、と一言謝り科学フロアを出る。まだ二十代と言う若さだが、リーバーは最少年で此処、黒の教団に来たのだ。仕事中毒になるのも分るが、もっと休んで欲しい。
ジョニーはリーバーが出て行った扉を見て、溜息を吐く。
「班長は優しいからね。頑張ろう。」
「そうだね。」
タップの言葉にジョニーは笑みを浮かべる。此処に居る皆知っている。リーバーは優しいんだと。ただ、たまに自分の事を忘れることがある。それがたまに傷だ。
書類に向かったジョニーだったが、後ろから聞こえる歌声に気付いた。後ろを振り向けば、長い漆黒の髪を持つ男性、ジジ・ルゥジュンとキャラメル色の髪を持つ男性、マービン・ハスキンが居た。
歌はジジが歌っていた。マービンは目を瞑り聞いている。その席はジジだからマービンはサボりだろう。そう思ったが、数十分前にマービンが、休憩入ります、と言ったのを思い出した。まだ休憩中だろう。ジョニーはまた書類に目線を戻した。
「懐かしいねー。」
「だろ?久しぶりにリーバーが歌っていた。」
リーバーと言う単語が出てきてジョニーはまだ後ろを振り向く。ジョニーはリーバーが班長になる前から知っているが、リーバーが歌っているのを一度も聞いた事がない。
だからなのか、興味を持ってしまった。
「リーバー班長が歌っていたんですか?」
「そうだ。まぁ、あんまし歌わなくなったけどな。」
「昔は、仕事中でも無自覚で歌ってたんだぞ?まぁ、音痴だったけど。」
ジジはそう言うと、まだ歌い始める。今度はさっきよりも下手に歌った。ジョニーはつい苦笑いが浮んでしまった。
「でも、聞いたこと無いな。」
隣で書類仕事をしていたタップが話に食いついた。ジョニーとタップはリーバーが教育係だった。よく叱られた。一番怖い先輩、として記憶があるが、成功してくれた時、心から褒めてくれた。ムチが多い気がするが、飴もちゃんとくれるのだ。
マービンはタバコに火を付け、煙をふーと出す。
「そりゃ、お前らが来る頃には機嫌が良い時しか歌わなくなったからな。お前ら、ずっと怒られていただろ?だからだろう。」
「本当にすみません;」
確かに怒っていて、初めて会った時よりもリーバーの眉間の皺が深く刻まれた気がした。
マービンはへこむジョニーの頭を撫でた。
「そう言えば、ジジ先輩とマービン先輩はリーバー班長の先輩なんですよね?」
「あぁそうだ。」
「ちなみに、ルゥさんの方が先輩な。」
先輩だった二人は最少年で既に敵だらけだったリーバーと一緒にいた。それから色々とあったが、リーバーはめでたく突っ込み王・・・じゃなくで、信頼される班長になった。
「それにしても、何か明るい曲ですよね。」
テンポもどっちかと言えば速いほうだし、低く歌うような曲じゃない。歌詞も聴いてる限り子供向けだ。
だが、ジジとマービンは顔を見合わせた。何か悪い事を言っただろうか?そう思ってジョニーの鼓動が激しく打つ。
「いや、まぁ明るいな。ただあの日歌われた曲だから、それの印象が大きいんだよな。」
「あの日?」
マービンは灰色の煙を天井へ噴出す。
「あの日。まだ、リーバーが班長になる前で、一年目の時だった。」
ジジが語り始める。
リーバーには一人、惚れた女が居た。とても美人で、歌が上手い女性だった。あの歌もその女性から教わったらしい。
まぁ、当時のリーバーはまだ20前だ。背も低かった。子供扱いされていたが、それでも一緒にいられるだけで幸せだったんだ。
リーバーは気付けば歌を歌うようになった。歌など歌った事無いリーバーは勿論音痴だ。そんなある日、リーバーはある決心をした。
歌が上手くなったら女性の為に、歌おう、そして、告白、をしよう、と。まぁ、初恋だったから、さむい事しか思いつかなかったんだろう。
「それで?どうなったんですか?」
「歌ったさ。だが、その女性には既に彼氏が居てな。フラれたんだ。」
あれからあんまり歌ってない、とジジは笑い混じりに呟いた。マービンは語るジジを見ず、タバコや自分の口から出る同じ種類の煙を見つめる。ジジは椅子の背もたれに体重を預けた。
「しかも、その彼氏がちょー酷ぇ奴でな。リーバーを目の敵にして、苛めてたんだ。あえて誰か言わねぇけど。」
ジジが肩をすくめながら言うとジョニーは、あらら、と言った。フラれた次は彼氏の嫉妬。だからリーバーは恋人とか作らないのか、と納得してしまった。
マービンはフーッとゆっくりと煙を出した。
本当は違う。
リーバーはあの日、女性が任務に帰ったあの日に告白をしようとした。だが、女性は息をせず、帰ってきた。
酷く、異臭が臭った部屋、あの歌が聞こえてきた。
空を泳ぐ。
何処へと、泳ぐ?
地図など無い。
コンパスは動かない。
何処へ行くか分らない。
さぁ、自由の空へ。
恐れずに。
怖がらずに。
誰かが笑った空。
今も残る空。
泳ぐ空。
消えぬ空。
空はいつだって僕等を見ている。
―――――ねぇ、貴方も見てますか?
そんな涙声の問いが響いた。
悲しい、悲しい歌声。
――――んな半端な顔をするなら、泣きやがれ。
そんな声にゆっくりと涙腺から涙が溢れた。無意識の内に止めていた涙。
空はいつだって僕等を見ている。
「だから、笑って。」
君が笑うからこそ
「空が綺麗なんだ。」
この歌は吐き気がするほど、明るい歌だ。
でも、この歌がお前とあの人を繋げたんだよな?
空はいつだって僕等を見ている。
だから笑って。
君が笑うからこそ
空が綺麗なんだ。
さぁ
空に―――
「相変わらず、音痴だな。」
「五月蝿ですー。」
リーバーは本から顔をあげ、舌を出した。
血を零したような紅い髪に瞳を持つ男性に向かって。
「犯してやろうか?」
男性は綺麗な笑みを浮かべながらリーバーの口にキスを落とした。
―――花を贈りましょ。
短くなったタバコを灰皿に押し付けた。
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@言い訳@リクエスト内容⇒『ジジとマービン、リーバーを語る⇒後輩』
結局過去になる自分orz(ド殴)暗すぎる・・・誰だ?こんな話を書いたのは誰だ?!(ド殴:有無言わずお前だよ!)本当にスイマセン><ちょっと最初の歌詞から順調に書けて、此処まで来ましたが・・・なんだろ?この話?になってしまいました><(ド殴)
改めてリクエスト有難うございます。
お気に召し上がりませんでしたら、遠慮うせず、申しててください。
では色々とスイマセン。失礼します。平成20年12月18日
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