身長差12Cm
体重差11Kg
俺の方が大きくて重くて頭が悪くて・・・・でも、俺はあの人の側に居たい。何故かそう思った。
なのに、あの人はずっと違う人を見ている。
【愛遊戯】
此処はアジア支部。俺、李桂は此処の科学班班員。将来の夢は黒の教団科学班班員!なのだが・・・
「ハァ・・・」
「あっ!まだ溜息吐いた!幸せ逃げるんだよ!」
「その前にコッチが苛つくから。」
シィフが炒飯を頬張りながら、相変わらず無表情でそう言う。そんでもってシィフの隣に居る蝋花は咎めずに俺の顔を見つめる。個性豊か過ぎる・・・なんせ、ツッコミが居ないのだから。
俺はまだ溜息を吐いた。そうしてらシィフが眉間にしわを寄せた。どうやら本当に嫌らしい。それでも、この溜息は自然に生まれる物だから仕方ない。
「ごめんな。つい吐いちまうんだ。」
「ゲームの事?」
「あぁ、ゲームがクリアできないとか!」
「俺を誰だと思っている?俺はゲームの天才だぞ。んな事で溜息吐くかよ。」
俺はガッと炒飯に食らいついた。自慢ではないが、ゲームはアジア支部の誰よりも早くクリア出来る!
違うんだ・・・まぁ、確かに、クリアできない、と言えば出来ないかもしれないな。
俺は脳裏にあの人の事を思い浮かべる。金色の髪に紺碧の瞳。俺よりも背が低くい・・・俺の上司、バク・チャン支部長。
気付いたら、俺はあの人の優しさに惹かれていた。この気持ちは、初めてだった。この気持ちが何なのか・・・あの人を見てると鼓動が激しくて、胸がズキズキ痛む。なのに、バク支部長が居ないと、ずっとバク支部長の事を考えている。
この状況を何度もゲームや小説で見た事や聞いた事がある。
でも、嘘だろ?俺とバク支部長は男同士だ。男同士だぞ?ありえない。ありえないから!
「もしかして、恋、したの?」
気付けば、蝋花が俺の顔を覗き見ていた。そして蝋花の言葉に俺は目を見開いた。
俺は、バク支部長に、恋、をしている?俺も途中からそう思っていた。これは恋か?と。でも、そんなのありえない。だって、俺とバク支部長は男同士で、動物的にありえない事だ。
なのに、この気持ちは何だろう?それが正しいと思えば、少しは楽になると思っている自分がいる。そんな事は無いのに。逆に気持ち悪くなる筈なのに。
「バク支部長でしょ?もう、告白したら?」
「はっ?」
俺はシィフの素っ気無い一言に目を点にした。シィフは突拍子の無い事をスラッと言う。だから、コイツと居ると心臓が悪くなる。
「だって、ずっと溜息吐かれちゃこっちが嫌になるだろ?」
「しかしだな・・・俺とバク支部長は男同士だぞ?そんな事、許される訳が無いだろ?」
「李桂!恋に年齢の差、男同士なんで、関係無いよ!」
蝋花はそう言うと目を輝かしながら俺を見つめる。眩しい・・・眩しいから!蝋花の乙女の瞳が・・・今は痛い・・・。
てか、この二人は常識と言うものは無いのか!男同士は絶対にイケナイのに・・・でも、その言葉を貰って気持ちが楽になっている自分がいる。自然に笑みが浮ぶ。
「有難う。・・・でも・・・あの人には、あの方しか見えてないんだよな。」
漆黒のツインテールの少女、リナリー・リー。バク支部長はずっとリナリーさんと片思いをしている。だから、俺なんで見ないだろう。
「だからって、李桂まで片思いをし続ける事は無いよ。ちゃんと、気持ちを伝えないと、辛いのは李桂だよ?」
シィフが珍しく真面目な正論を言った。辛い、か。確かにこのまま諦めれる気がしない。
「駄目は元々か。」
「頑張ってね!」
「大丈夫。励まし会はちゃんと挙げるから。」
「おいおい、失恋決定かよ!」
俺がそう言うと笑い声が食堂中に響いた。本当に、この二人は個性豊かで、優しいな。
俺は大量の書類を持って、支部長室の前に立って居た。告白をしようとしている・・・。成功するだろうか?成功する確率は限りなく低い。でも、この告白で気持ちが楽になる。
結局は自己満足か・・・そんな言葉が浮かぶが仕方が無い。
俺は勇気を出して、扉を開ける。そこには多くの書類とモニターに囲まれていた。部屋の奥、椅子に座っている男性が居た。
―――バク支部長。
俺は息を飲んだ。バク支部長は俺に気付いたのだろう、後ろを振り向いた。
「李桂ではないか。どうした?」
「しょ、書類を置きに来ました!」
つい声が裏返ってしまった。顔が酷く熱い。体が勝手に震える。何で?別に嫌いじゃないのに、何でこんなに鼓動が激しいんだ?止まって欲しい、そうも思った。
「ご苦労だな。・・・李桂?顔色が悪いぞ?」
バク支部長はそう言うと俺に近づいてきた。鼓動がドクンドクンドクンと激しくなっていく。あぁ、耳障りだ。それに、体が異様に震えて、まるで地震が起きてるみたいに、揺れている。
来るな、来て、見ないで、見て、怖い、嬉しい・・・・矛盾が俺の心の中に飛び交う。
「お、おれ、」
何で?ゲームなら、こんなの簡単なのに。ポタンを操作して・・・誰か、俺を操作してくれれば良いのに。そうすれば、すぐに言えるのに・・・。
バク支部長は俺のすぐ前で止まった。俺はと言うと、垂らし無く床を見つめていた。あぁ、バク支部長の靴が見える。
「李桂?」
「俺・・・」
言え。言うんだ、俺。言わないとイケナインだ。早く言ってくれ・・・じゃなきゃ、俺が辛い。なんで、結局俺中心なのかよ。その前に、何で俺は俺に命令しているんだ?
色々な言葉が俺の脳で飛びかう。もはや、どれが俺自身の思いか・・・否、どれも俺の心だろう。
「俺・・・・バク支部長の事が――――」
ゲームなら、すぐにクリア出来るのに・・・
「――――好きです。」
現実は、クリアできない。これがゲームなら、どれだけ良かったんだろう?
ゲームは必ずハッピーエンドなのに・・・。
バク支部長は目を見開く。
だよな。俺みたいな野郎が告白して・・・・困るよな・・・俺は目をキュッと深く瞑った。
「お前は、俺の事が好きなのか?」
そんな言葉が聞こえてくる。顔が酷く熱い。頭が真っ白で、何も考えられない。
「は、い。」
自分の耳に聞こえてきた自分の声が酷く震えていた。そんな声を何処か遠くで、震えているなー、と思った。自分の声すら、自分のじゃないと思っている自分が居る。
それから沈黙が生まれた。あぁ、俺はどんでも無い事を言ったんだろうな。そりゃそうだ。だって、バク支部長が好きなのは俺じゃない。リナリーさんなのだから。
後悔をしない、と言っていたけど、やっぱし後悔してるよ・・・。
そう思って、逃げようと一歩足を後ろに引いた時、腕を捕まれてた。
その拍子で手に持っていた書類がチラばった。手は力強く引っ張られる。その手は俺の背に回される。とても、心地良い温かさを感じた。俺は目をゆっくりと開く。
そこには、バク支部長が俺を体いっぱいに抱きしめてくれていて・・・。
「この鈍感が。俺様がどんだけお前を大切にしていたか、今まで気付かなかったのか?」
そんな苦笑交じりの声が聞こえてきた。大切に?
「俺様も、李桂、お前の事を愛している。」
「え?」
思考が停止した。
だって、バク支部長が好きなのはリナリーさんだろ?
これは何かの夢なのか?
だって、こんな・・・・。
バク支部長が・・・・・。
この俺の事を・・・・・。
愛してるなんで・・・・。
「だって、リナリーさんが・・・・。」
「・・・・リナリーさんも好きだ。だが、俺様は何故かリナリーさんと同じ位・・・否、リナリーさん以上にお前を愛しているのだ。」
・・・待て、待て待て待て待てっ!!!ちょっと、待って・・・だってバク支部長はリナリーさんの事が好きで・・・それ以上に俺が好きだと言っていて・・・リナリーさんは女性で・・・・俺は男性で・・・・意味が分らない。
だって、こんな見かけからして野郎な俺がだよ?そんな俺がバク支部長と両思いなんで・・・。
「バク支部長は、ひどずぎます!俺の、俺の思いをどうじてぐれりゅんでずか!!片思いだと思って、辛かったんですがらね!」
「おいおい、泣くな!後、さっきも言ったが、お前が気付かなかっただけだからな!」
バク支部長は早口にそう言うと、俺のネクタイを掴み、引っ張った。俺はつられ、背を丸める。
そうしたら・・・あろう事に俺の唇とバク支部長の唇が重なって・・・。
「さっきも言っただろ?愛しているって。だから、泣くな!」
バク支部長は顔を紅く染めながらそう言う。俺はつい笑みが浮ぶ。それを見てバク支部長は俺の頭を叩いた。
「っと、まぁ、色々あったが俺とバク支部長は両思いだったらしい。」
「やっぱりね☆蝋花の勘は確かだね!」
「いや、誰が見ても、両思いだったでしょ。」
「え?!マジで!」
シィフは溜息を吐いた。そんなに分りやすかったのか!?俺って、本当に鈍感だったのか・・・。
「そうだ、前もって言うけど、ノロケ話は聞かないからな。」
「言わないよ!」
ゲームは高確率でクリア出来る。でも、現実はクリア出来るのに、自分だけじゃ無理だ。だって、シィフに溜息吐かれるほど、俺は鈍感らしいからな;
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@言い訳@
初のバク李です!!そして・・・何でしょうか?この・・・変な展開は!乙女チックすぎて・・・吐き気が(ド殴!)ドSリバ李とかも書いてみたいなーとか思ったり・・・でも、大抵書いて置きながら実行出来ないタイプなんですよねー(遠い目)
では色々とスイマセン。失礼します。平成20年12月22日
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