運悪く、今年のクリスマスに任務が入ってしまった。


 心の底、白蘭を恨んだ。まぁ、恨んでもあっちは呑気にマシュマロを食べてるんだろうけどな。

 俺は溜息を吐き、愛する、モスカ一筋の哀れな餓鬼の所へ向かった。



【Buon Natale γ Spana】



 此処は相変わらず意味が分らない機材が転がっている部屋。そこで一人、スパナが作業をしていた。いつもの光景ながら、溜息が吐きたくなるな。

 いつもなら入口の真横の壁に寄りかかりスパナの作業が終るのを待っているのだが、今日は違う。二日前、つまり、クリスマスの日もモスカ創りをしていたのか、それが気になったのだ。

 恋人だからこそ、だ。まぁ、どうせモスカ創りだろうけどな。一瞬だけでも良い、俺の事を思いしてくれたら良いのに・・・そんな希望を胸に抱えながら俺はスパナに近づく。

 スパナは両足で機械の固まりをはさみ、その機材の中身を弄っていた。何処かの野郎が見れば、襲われる可能性がある格好だ。まぁ、スパナを認知してる人が少ないからそんな事をする奴は居ないだろうけど。

 俺はしゃがみ込み、スパナを後ろから抱きしめた。だが、スパナは何の反応せず、作業を続けていた。俺は苦笑しながらスパナの頭を撫でた。撫でながら聞く。


「お前、二日前・・・クリスマスとイブの日何をしていた?」


 俺はそう聞く。まぁ、モスカ創りだろうけど。それ以外の答えなど聞きたくない!と言うわがままな自分が居る訳だが・・・。

 もし望めば、γの事を考えていた、と言って欲しい。100%有り得ないけどな。

 スパナは質問に答えず、作業を続けた。俺はその間、撫でるのを止め、ギュッとスパナを抱きしめていた。コイツ、もしかして、俺が居る事すら気付いてない訳じゃねぇだろうな?

 そう思った時、作業する手が止んだ。スパナは保護眼鏡を片手で外した。そして俺の方へ振り向く。あぁ、ちゃんと俺の存在気付いていたんだな。気付いていなかったら、悲惨で、立ち直れないからな。


「・・・イブの時は半日仮眠していた。それから数時間の仮眠と食事を取りながらモスカ創りをしていた。」

「おいおいっ、悲しいクリスマスとイブだな。」


 俺は溜息交じりにそう言うとスパナは俺の頭をドライバーで叩いた。俺は叩かれた頭を押さえる。漫画だったら、絶対に頭から煙かお星様が出ているだろう。煙だったら、スパナは喜ぶだろうか?なんで、本気で頭がイかれたかもしれないな。


「・・・・アンタだって、殺人魔になっていたんだろ?悲しいクリスマスだな。」

「好きでそんなクリスマスをしていた訳じゃねぇよ。」


 俺は口を尖がらせながらそう言うとスパナは俺の顔をジッと見つめた。数十秒だったら、スパナは立ち上がり、室内に取り付けられている冷蔵庫へと向かった。

 クリスマス、それは何処かの宗教の神様が生まれた日とかじゃなかったけ?そんなど偉い日に、俺ら罪人が浮かれる事は許されねぇだろうな。なんで、神なんだ信じてない俺が言う事ではないけどな。

 それでも、少なくとも前までそう思っていた。殺し屋と言っても人の心を持っている。まぁ、狂ってる奴は別だけどな。だからクリスマスが好きじゃなかった。

 それでも、今年はスパナと一緒に過ごしたいと思った。

なのに・・・なのに・・・・あのマシュマロが!!(←実際は白蘭さんの部下である正一さんの命令だが、あえて恨まない。反抗しようとしたが、途中で正一さんがストレスで胃が開いたと言うハプニングがあったからさ☆)

 スパナはミニモスカの腹にある電子レンジで冷凍食品を温めている。コイツは変な奴だ。何故か『スパナ印』を作っている。そんな事をしているから、金が無くて大事な時に喚くんだよ。俺は溜息を吐いた。

 チンッ、と電子レンジが鳴った。スパナは電子レンジから冷凍食品を取り出し、皿に盛った。この臭いはカレーだな。


「・・・今から、クリスマスしないか?」


 俺は不意にそう言った。このままクリスマスを過ごせないのはどうにも腹の虫が治まらない。あの白蘭め。正一も可哀想だな。胃に穴があくほどにゴキ使われて・・・。

 スパナは俺の一言に俺の方を見る。その顔は無表情だが、目は見開いている。驚いているのだろう。スパナは興味があるモノ以外にあんまし表情を変えない。ある意味冷酷な所を持っている。本気で怒ったら、殺し屋の俺でも鳥肌が立つ。

 スパナはカレーを持ったまま俺に近づく。


「・・・クリスマスはもう過ぎた。」

「でも、俺たちはクリスマスをしてないだろ?良いだろ?夢の日だぜ?」


 まぁ、それも餓鬼と恋人同士だけの話だけどな。恋人からクリスマスプレゼントを貰える。特に、餓鬼は一年でもっとも楽しみにする行事だろう。大人は大変なのにな。


「・・・・ケーキが無い。」

「あぁ;じゃぁ、これから俺が買ってこようか?」


 俺はそう言うと入口に指を差す。スパナは珍しく顔をしかめ、扉を見た。何か不都合があったのだろうか?もしかして、飴は好きだがケーキは嫌いとか・・・。

 だが、スパナは反応が無い。俺は気長に返事を待つ。スパナは返事が遅い。興味がある時は早いくせに、その他は遅い。

 だが、いくら待ってもスパナは返事を返すことは無く、それところか床を見つめた。

 何処か具合が悪いのか?俺はそう思い、スパナの顔を覗き込んだ。


「スパナ、大丈夫か?」


 俺が問うとスパナはコクッと頷いた。でも、少し顔色が悪い気がする・・・。コイツは作業を続けている時がある。だから、コイツは良く食事を取り忘れる。だからだろう。酷く痩せている。

 我慢してるのかもしれない、そう思いスパナに背を向け、扉の方へ向く。何にせよ、薬は飲んだ方が良い気がした。



「待ってろ!今、救急箱持って来るから――――!!」




 去ろうとした俺の手首をスパナは掴んだ。とても力強い。俺は後ろを振り向けば、まだスパナは床を見つめていた。ただ、さっきと違い、顔が赤い。


「・・・此処、居て。」

「え?」


 スパナの一言に俺は目を見開いた。さっきなんで言った?


「・・・此処に居て。・・・クリスマス・・・だろ?」


 スパナはそう言うと、俺を見上げる。その紺碧色の瞳は酷く揺れていた。

あぁ、くそ。耳障りなくらい鼓動が鳴る。顔が、体が真夏みたく熱い。頭が真っ白で、何言えば良いか分らない。

不快?そうじゃない。嬉しいんだ。モスカ以外見ないスパナが俺の為に言葉を言ってくれたから。

 淡々冷静になる脳がある命令をした。俺は手を伸ばし、スパナを抱きしめた。


「・・・γ?」

「可愛いんだよ。馬鹿な。」


 言って欲しかった。スパナから。俺への言葉を。


「遅いけど、二人だけのクリスマスパーティーしようか。」


 遅くないよな?神様も、許してくれますよな?俺は自然に抱きしめる手を強める。


「・・・・モスカも一緒なら。」

「ははっ、結局モスカも入るんだな。まぁ、良いや。三人でやろうな。」


 憎きモスカも一緒だけど、遅れたクリスマスパーティーは楽しかった。

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@言い訳@
 永遠のライバル、モスカに勝てる日はいつでしょうか?(ド殴!)スパナさんが凄い乙女なんですが・・・orz乙女のガキになってしまいますorzγさんは保護者に・・・そんな話が好きなんでしょうかね?それか、自分自身が乙女(?)のクソガキだからでしょうかね?永遠の謎ですね☆(ド殴:遅れたくせに、此処に書くか!)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成20年12月27日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様