その道は本当に正しい?
そう思いながら歩き続ける。
聖戦が、愛はいつだって、近づいて、あ、苦しめて、笑ったね、絶望の底に、君が笑うと、堕ちる、幸せだ。
本当にその道は正しい?
【Leading road】
科学班にあるのは、忙しい、か、忙しすぎる、のどちらかしか無い。休める時は休暇を貰った時か医療班からドクターストップを食らった時だけだ。食らった人の9割はその場でゲームオーバーとなる。
科学班班員は身も心も削りながら仕事をし続けていた。そんな過酷な仕事にジョニー・ギルとタップは机に突っ伏していた。
徹夜4日目と言う事で、人としての限界は既に超えていた。手は震え、瞼は勝手に閉まり、思考が停止していた。
そんな二人に手が伸びる。手は二人の頬を掴み、引っ張る。皮膚が引っ張られる痛みに二人は涙目になりながら「痛い、痛い!」と叫ぶ。
その声に手は離された。二人は引っ張られた頬を押さえながら顔を上げた。さっき引っ張った者を見て顔が青ざめる。
明るい茶色髪に色素の薄い青い瞳を持つ男性、リーバー・ウェンハムが眉間にしわを深く刻みながら二人を見下ろしてるからだ。二人は何故か立ち上がり敬礼する。
リーバーはそんな二人を見て溜息を吐く。
「二人共、一枚ずつやったら休め。班長からは俺が言っておく」
「本当ですか?!」
まさかのリーバーの言葉に今出来る限りの笑顔を精一杯作る。自分よりプラスマイナス1つしか変わらぬ二人を見てリーバーは苦笑を浮かべながら頷いた。
二人は机に座り、書類に向かった。二人してより簡単な問題を選んで、と。それを知ってるが、リーバーはそれを咎めなかった。今は休む方が良い、そう思ったからだ。
今は多くの仲間を失い、科学班は、忙しすぎる、に入っている。連日の徹夜で倒れる者は少なくない。リーバーも徹夜4日目だ。提出した書類は数え切れないほどに多い。
リーバーは自分の席に戻ろうと一歩歩んだ時だった。リーバーの背がずっしりと重くなった。その両肩から手が浮んでいた。リーバーは後ろを振り向けば、キャラメル色の髪を持つ男性、マービンがリーバーに寄りかかっていた。
「マービン先輩!重いで――うぇ」
リーバーが反論してる途中でまた一段と背の重みが増えた。マービンの背にジジが乗ってきたのだ。リーバーは前へ倒れそうになったが、なんとか踏ん張った。
「リーバー疲れたー」
「皆疲れてます」
「疲れすぎて、倒れそう」
「俺が一番倒れそうです!だから、離れてください!!」
リーバーがそう心の底から叫ぶととジジとマービンは渋々立ち上がる。
「以外に足腰弱いんだな」
「徹夜4日目で背に成人男性2人が全体重を乗せて来たら、誰でもギブアップですよ」
リーバーは痛む胃の底から地を這うような声を出す。マービンは、あははっ、と腹を抱え笑い出す。
「まぁそうかもしれないな。ほら、俺たちは現実逃避組だから」
「勝手にそんな組作らないでください」
リーバーはそう言うと自分の席の方へ向かう。
「あんまし無理してると、犯されるぞ」
「誰にだよ!」
リーバーはドスドスと去っていた。あははっ、とマービンはまた笑った。ジョニーは毎回の様にリーバーを哀れに感じていた。いつもいつもからかわれて。それでも本人は嫌がってない。恐らくそはマービン等が先輩であるからだろう。
しかし、リーバーはジョニーやタップよりも働いている。休憩時間を削ってまで書類仕事をしている。それに、6日前も4日間の徹夜だ。約一日寝ただけでの仕事復帰だ。疲れなど取れてない筈だ。
ジョニーはマービンとジジに睨みを入れるが、生憎ジョニーのかけている眼鏡は外からじゃ目が見えない。二人はジョニーに気付かず、自分の席へと戻った。
あれから、どれくらい時間が経つだろうか?
ジョニーは3時間の仮眠を取って仕事に復帰をした。それから数時間経った。足音を響かしていた科学班フロアは静かだった。ほどんと人が連日に続く徹夜で眠ってしまったのだ。
ジョニーも3時間仮眠を取ったとはいえ、4日目・・・日にちが回り5日目となった体は悲鳴をあげていた。
ジョニーは机に頬をくっ付ける。あぁ、こうしてるとまたリーバー先輩に怒られる・・・そう思ったがもう遅い。安定した机からもう顔は持ち上げられない。瞼が少しずつ落ちる。
駄目なのに・・・リーバー先輩来て下さいよ。そして起こしてくださいよ。そんな身勝手な事が脳裏に浮ぶ。だがリーバーは来ない。隣の人が仮眠室に居るのか席は空いていて、ジョニーからリーバーの席が見えた。
リーバーは、仕事の鬼、には似あわない丸眼鏡をかけ、書類に向かっていた。表情は見えない。しかし、その手は動き続けている。
へへ、やっぱし、仕事の鬼ですね・・・リーバーの姿がぼやけ、やがて闇に包まれた。
「おやすみ」
そんな優しい声が小鳥の囀りと共に聞こえた。誰だろう?ジョニーは目をゆっくりと開ける。最初に目に入ってきたのは、リーバーが机の上で突っ伏している姿。その背には茶色い毛布が掛かっていた。
ジョニーは顔を上げ、両目を擦った。
「起きたのか?」
そんな声が聞こえた。その声に特徴は無い。特別声が高い訳でも低いわけでも無く、かと言って掠れても綺麗でもない。でも、とても心地が良い優しい声だ。
ジョニーは擦る手を離し、目を改めて開けた。目の前に科学班の征服がある。科学班の制服は着崩していて、ワイシャツがよれよれとなっていた。
ジョニーは顔を上げれば、見覚えがありすぎて、目を見開いてしまった。
「マービン!」
「よぉ、起こしちまったか?」
マービンがそう聞くと、ジョニーは慌てて首を振った。それでも、マービンだと知っての、胸のドキドキは中々収まらない。恋?否違う。このドキドキ感は、予想外、だ。
ジョニーの中でマービンは後輩をからかう人だ。今が楽しければ良い、と言う快楽主義者で、そんなマービンの普段の声はドキドキするほど優しいとは思わなかった。
否、気付かなかっただけなのだろうか?それでも何処かマービンの声は違う。声質自体が優しい物へと変わっているのかもしれない。
「驚いたか?俺がこんな早く来て」
マービンの言葉にジョニーは我に返り、周りを見渡した。皆机に突っ伏しているか床に転がっていた。一瞬、生きてるか、と疑問に思ったが、生きてなかったら今頃大騒ぎしている。
そこで改めでジョニーはその事に驚いた。確かにジョニーから見たマービンの性格上早めに来るなど不思議だった。
「その顔は分かってなかったな。まぁ良いけど」
「もう年?」
「ははっ、俺でも怒る時はあるからな」
マービンは笑いながらジョニーの頭を掻き混ぜる様に撫でた。その時に密かに爪が立てていて、痛みを感じた。
「痛いです!」
「当たり前だ。後、俺は皆全滅した後の朝は早いよ。ある後輩が無理しすぎて、朝まで馬鹿みたく手を動かし続けているからな」
マービンはそう言うとジョニーの頭から手を離し、その手を肩の少し上で親指を後ろの方へ向けた。ジョニーは親指の先の人物に目が行く。
リーバー。
その時ジョニーは何処か納得する。リーバーは我を忘れ、書類に没頭する所がある。リーバーが教育係になったのは書類に没頭しすぎで頭がイかれない様にする為、と言う噂があるほどだ。それほどにリーバーは仕事中毒だった。
そう言えばリーバーの背に毛布が掛かっているが、ジョニーは勿論他の人にはかかってない。
「本当に無理する後輩の教育係になるのは大変だよ」
マービンはそう言うと肩を竦めた。ジョニーは、ははっ、と笑ってしまった。リーバーは来て何年も経つ。教育係はもう既に無いだろう。それでもマービンは心配している。
しなくでも、リーバー程の天才は誰の手も借りず書類を片付けられ、失敗もしないだろう。
「俺は後輩思いの超優しくで素敵な先輩だからな」
マービンは自身満々にそう言った。気付けばさっきまでの優しい声からいつもの声に戻っていた。でも、何故かこっちの声の方が良いと思ってしまった。
「さぁ、仕事をしようか。ジョニーお前はまた寝ていて大丈夫だぞ?きっと此処に居る連中は今日一日休みだろうしな」
科学班の、忙しすぎる、は昨日の深夜にピークを越え、忙しい、に戻った。否、静けさ、だ。科学班班員として機能してる人はジョニーとマービンしか居ない。
「いえ、俺は少しだけ書類を片付けます」
ジョニーの言葉に長い前髪の間から驚く目が一瞬見えた。すぐに笑みを浮かべる口へと目線をついずらしてしまった。
「おいおい、仕事の鬼2号かよ」
笑い混じりにマービンはそう言った。
この道は正しいですか?
心身を削り、命を削り、生きてる。
でもね、皆誰かを支え、支えられている。
自分も誰かに支えられてるのかな?
「ははっ、もしそうなら俺はマービン先輩に仕事させるッス」
「うぇ、マジかよ」
二人は笑いあう。
さぁ、歩もう。この道真っ直ぐに。
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@言い訳@リクエスト⇒『忙しい科学班の話』
もはや、リーバーさん関係ない!(ド殴)初めてかもしれませんね・・・ジョニー+マービンですね。久しぶりすぎて、色々と可笑しい事に・・・本当にスイマセンm(_ _)m
改めてリクエスト有難うございますw
お気に召し上がりませんでしたら遠慮なく申しててください。
では色々とスイマセン。失礼します。平成21年1月21日
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