人は好きじゃない。
好きなのは、正一と姫と野猿くらいだ。
なのに、いつからだろうか?
【Amato】
「どうしたの?スパナ」
正一が眉をかしめながら訊く先には、机にベタッ〜と頬をくっつけるスパナの姿があった。正一はスパナの少し前に彼の好物の日本茶を置き、スパナと向かい合わせて座る。
正一はコーヒーをズズッと飲みながらスパナの様子を伺う。スパナは机に頬をくっついたまま動かない。
(有り得ない!スパナが日本茶を出して飲まないなんで!!モスカの配線位置を悩んでいた時でも、15秒だけだったのに!!)
新記録だ。正一はこれはただ事じゃないと思い、コーヒーカップを机に置き、咳払いをしてから、話しかけた。
「えーっと・・・改めて、どうしたの?何か悩んでるようだけど?」
「・・・・」
「もしかして、モスカの事?」
スパナはそれを聞くと、少し頭を上げ、左右に振ってからまた頬を机につけた。正一はその反応を見て目を見開いた。
―――モスカの事じゃない?だと?!
正一は頭を乱暴に掻く。有り得ない。あのスパナだぞ?モスカ一筋で・・・そんな純粋な彼が、モスカ以外で悩んでいるだと?いやいや彼だってモスカ以外に目を向く筈だ。ある筈だ。彼が悩んでる事が!
「えーっと、スパナ印の事?」
「・・・(頭フリフリ)」
「じゃぁ、飴の舐めすぎて口内が痛い、あるいは虫歯とか!」
「・・・(頭フリフリ)」
「実は虐めにあってます?」
「・・・・(頭フリフリ)」
最後の質問が違いホッとする正一。正直、虐めにあっていたらこれは個人的な問題じゃ済ませない。日本基地の隊長として、それなりの処分を与えなければならない。だが、違うって事は胃は守られた。
しかし、問題は解決されていない。スパナの、正一や日本茶を前でこんなに落ち込んでいる事は見たことが無い。
「スパナ・・・」
「・・・ウチ、どうしようも無いほど苦しいんだ。」
「え?」
苦しい?
「何処か痛いの?足?腕?もしかして、心臓が?」
「・・・心臓?そうかもしれない。」
「それは大変だ!心筋梗塞かもしれない。あるいは心膜炎?兎に角、医師に見てもらわないと!」
正一はそう言うとスパナの垂らしなく机の上に置いている腕を握る。引っ張るが、スパナは動く気配はなかった。
「・・・違うんだ。ミニモスカに診て貰ったけど、どうやら違うみたいなんだ。」
「いやいや、ミニモスカじゃなくで、ちゃんとした医者に・・・」
「・・・ウチはミニモスカは信用している。それに、自分でも違うと思ってるんだ。」
スパナはそう言うと顔を上げ、心臓らへんを握った。
「・・・ウチ・・・恋、したかもしれない。」
「え?えええええぇぇぇぇぇっ?!」
それから何とか落ち着きを得た正一は、コーヒーをズズッと飲む。飲んでるのに、胃に落ちてる感覚がしない。それ以前にこのコーヒーは先ほど入れた筈。なのに、熱さが感じられない。
スパナはズズッと日本茶を飲み、一息を出す。いつものスパナ・・・じゃない。いつもなら、日本茶はやっぱし美味しい、の一言を言い、モスカの事やジャポーネの事を話している。なのに・・・。
「・・・で?誰に恋をしんたい?」
「・・・い、言えない・・・。」
スパナは顔を紅く染め、そう言う。スパナの乙女な姿を見て、正一はつい目線をずらした。一部の団員はスパナを、可愛い、とか、女性、と言う目で見てると聞いた事があるが、確かに見えなくも無い。
スパナ自身イタリアの太陽の下にあんまり照らされなかったからだろう、ソバカスなどが無い、綺麗なキメ細かな肌だ。その白い肌に顔を紅潮させる姿はずっと一緒に居た正一さえ、直視が出来なかった。
スパナを此処までする人物とは・・・誰だろうか?だが、スパナは絶対に言いたがらないだろう。
「どうやって出会ったの?」
「・・・あれは蒸し熱い夏の日だった・・・モスカに閉じ込められて、それを助けてくれた。それからあの人は部屋に来る」
「待て待て、モスカに閉じ込められた?」
「メンテナをし続けていたら、電源が切れた。モスカ自体に余力も残ってなくて、扉が開かなかった。助けの叫びが奇跡的にあの人に届いた」
「駄目でしょ!そんなギリギリまで仕事をしちゃ!君は一人なんだから!」
「・・・ごめんなさい」
正一はスパナの謝りを聞いて、話題がずれてる事に気付き、咳払いを一つした。
「それで、毎日部屋に?」
「・・・いや、不定期だが、1週間に1回くらいかな?」
「それで話かけられ、意気投合?」
「・・・いや、あんまし話しかけられない」
「・・・はぁ?」
正一は頭を激しく掻く。話さない・・・なのに、恋をして・・・。
「・・・ずっと、入り口付近の壁に寄りかかって、ウチの作業を見てるだけ」
「・・・それだけ?何で?」
「・・・『此処でお前の作業風景を見てると、落ち着く』と言っていた」
スパナはあさっての方向を見ながらそう答える。でも、その顔には笑顔がある。
(人の話で笑顔を見るなんで、初めてだ。)
スパナは同じ技術者じゃないと心を開かない所がある。異例として、野猿とジリョネロファミリーのボスには心開いたらしいが・・・。
昔はジリョネロファミリーじゃなく、違うファミリーで兵器を作っていたらしい。そして捨てられた。それがスパナの心に闇を灯したらしい。
明るい青年なのにな・・・正一は毎回の様にそう思っていた。正一は笑みを浮かべ、手をバンッと叩いた。
「よし!じゃぁ僕も協力するよ!」
正一の目は輝かしく、スパナを見つめる。
「決まれば天は急げ!スパナはその人の何処が好きなの?」
それを理由に告白文を考えれば、言葉も心が加わるだろう。
「・・・モスカの事に興味がある所?」
「・・・とか?」
「・・・モスカと同じブラックスペル?」
「とか?」
「・・・正一はどんな答えを求めている?」
「モスカから離れて、その人の行動とか外見とか、それを聞きたいんだ!」
正一は腹に痛みを感じ、手で腹を抑える。やはり、スパナの中心はモスカか・・・。
「・・・あえて言うなら、良い所が無い所が好き」
「・・・え?」
「モスカはウチにとって完璧。でもその人は、ウチから見てモスカと間逆。それでも、モスカがウチに与えてくれないモノを持っている」
「・・・そうか。それって、嫌い、じゃないの?モスカが大好きなら、その逆は、大ッ嫌い、だよ?」
「・・・そうかもな。でも、その人はウチの世界を否定した。『モスカに愛は無い』って」
「・・・スパナ」
モスカは結局機械だ。人肌も愛も無い。だからスパナが人に恋したのを聞いて素顔に喜んだ。人に恋すれば、少しは人の気持ちに触れられて・・・痛々しくならない。
もっと、人間らしくなる。スパナは人間らしさが無い。命令があればモスカで平然と人を殺せる残酷さがある。でも、スパナの心の中はその残酷さに耐え切れない。
それを知ったからファミリーはスパナを捨てた。そしてジリョネロファミリーは拾った。
「あの人は、何時かウチを、ウチの世界を完成させる。否定、はしたけどあの人は、壊さず、一緒に世界を完成させる。・・・あの人はウチと間逆で、考え方も違うけど、ピッタリくるモノを感じた。」
「・・・そう。スパナとその人ならきっと大丈夫だよ。」
「うん。」
正一とスパナは一緒に笑った。
(一体どんな女性だろう?)
(正一も認めた。やはり(単に名前が思い出せない)あの人は凄い)
その頃、あの人は・・・
「へっくしょん!ちくしょうめ!誰か噂をしてるなー!」
「γの兄貴、オヤジくせぇー!」
と、なっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
@言い訳@
いつもはγ⇒スパナで、本当に好き?どうなの?みたない感じなので、逆にしてみました!スパナさんはγさんの事、真剣に好きだと思います!じゃなきゃ結婚しません!(ド殴)自分でも恐ろしいほどに・・・すっかり忘れてましたが、誓いのキスしてるんですよね・・・あの時は激甘で吐き気が(ド殴)
正スパがある中・・・私の中では正一+スパナさん・・・正スパにすると、恐ろしいほどに黒正一さん書きそうで・・・orz個人的にγスパが書きやすいですw
では色々とスイマセン。失礼します。平成21年2月4日
背景画像提供者: