バレインタイン。


 俺にとってはどうでも良いと思う行事・・・っていうよりも、俺の場合仕事が忙しすぎてそれすら気付かない。

それに、仮に気づいていても俺は仕事に追われ、町に出れない。ジェリーさんに頼むと言う選択肢もあるのだが・・・ジェリーになんやかんや言われるのが恥かしくて出来ないだろう。


 これは仕方ない事だと自分に言い聞かせ、計算を解く手を動かす。



【Valentine's Day To Komi Reever】



 此処は相変わらず忙しい科学班フロア。バレインタインと言う、女神ユノの祝日ともほどんと知らずに書類をし続けていた。科学班班長リーバー・ウェンハムも例外ではなかった。

 リーバーは書類を片付けていた。


「はんちょー今日何の日か知っていますか?」


 遠く、そんな声が聞こえた。リーバーは右手を上げた。それは、分かってる・待ってくれ、と言う事で少し経ち書類の続きをする。リーバーに声をかけた男性、マービン・ハスキンは溜息をつき、リーバーの席に近づいた。

 リーバーは2分で終わり、一息を吐き、後ろへ振り向く。マービンはタバコを吸っていたが、マービンのタバコは軽め―科学班は重いタバコ禁止―だからリーバーはなんとか耐えられた。


「待たせたな」

「平気です。それより、今日は何の日か知ってますか?」


 マービンの問いにリーバーは目線を上にし、考え込む。年下の上司だが、哀れに感じるのであった。

 リーバーは時計を見るが、時間が分るだけで、日にちが分らなかった。マービンは煙と一緒に溜息を吐いた。


「バレインタインですよ」

「あーもう2月だっけ?早いなー」

「班長、机にカレンダー飾りましょう」


 マービンは溜息を吐けば、リーバーは苦笑いを浮かべた。リーバーにとって日にちところか季節の変わり目に気付かない事がある。フッと窓を見て木々の葉が変わってれば、季節が変わった、と思っていた。

 しかし、バレンタインかー。リーバーはその甘い響きに目を細める。リーバーの女性歴は意外に無く、バレンタインなどの恋人の行事を総無視。バレンタインで女性から渡された事はあるが、勝手に義理だと思い礼だけ言っていた。

 今から思えば、寂しい青春時代だなー。


「渡さないんですか?チョコ」

「はぁ?何で俺が!」


 リーバーはマービンの言葉に顔を紅潮させながら否定をした。誰に、なんで言ってないのにリーバーの脳裏にある人物が浮かび上がっていた。

 漆黒の髪に瞳を持つ男性・・・コムイ・リー。


「室長も人気なんですから」

「大体男同士が渡しあうって;バレンタインって女性から男性に渡すもんだろ」

「チッチッ、甘いですね班長。今は逆チョコと言うモノがあるんですよ。って、あ、班長が女性役だから、逆チョコじゃないか。」

「マービン!」


 リーバーの殺意を感じマービンは嘲笑う様に笑いながら逃げる。リーバーはマービンを追った。その場が居た科学班班員は、仲が良いなー☆仕事をしろ☆、と思っていた。




 それから数時間が経ち、リーバーは行っていた書類を終らせた。その書類を片手に持ち、室長室に向かった。

 リーバーの記憶が合ってれば、今室長室にはコムイしか居ないはずだ。今は究極に忙しい訳ではないから、皆各々の書類仕事に研究、実験をしているだろう。

 リーバーはいつもの様に扉をノックをし、すぐに扉を開けた。



「室長、失礼しま―――」


「リ、リーバー君?!」



 リーバーの目に飛び込んできたのは、コムイがハート型チョコを食べている姿だった。ビターだろうか?否、あの色から見たらミルクかもしれない。そんなどーでも良い事がリーバーの脳を横切った。

 コムイは慌ててチョコを机の下に隠す。


「何で隠すんですか?」

「え、だって、今日と言う日を考えたら!」


 確かに、今日はバレンタインだ。誰かが渡した可能性だってある。リーバーは溜息を吐く。その溜息は、呆れ、では無く自分の心を落ち着かせる溜息にも聞こえた。

 リーバーはコムイの居る机の前まで歩き、余裕に20Cmオーバーの書類の束を机の上に置く。


「義理の可能性があるでしょ?それに、室長ほどの人がチョコ貰えない訳が無いじゃないスか」


 リーバーは胃の底に漂うドス黒い何かを抑えながら、何事も無かった様に平然と言った。コムイは隠していたチョコを出す。ハートのチョコに一口齧ったあとがあった。


「ただ誤解しないでね。これはリナリーから貰ったんだ」

「リナリーから?」


 リーバーは一瞬にして胃の底に漂うドス黒い何かが引いたのを感じた。どこかで嫉妬をしていたのかもしれない。しかし、リナリーとコムイの場合は仕方ない。

 どんなに背伸びをしても、同じ細胞を持つ人間を越えられない。悪まで自分は他細胞なのだから。


「ねぇ、リーバー君、もしかして嫉妬していたの?」


 コムイは笑みを浮かべながらリーバーを見上げていた。本当に、この人は美しいすぎる、と毎回リーバーは思っていた。日の当たらない薄黄色肌。漆黒の髪がその肌を浮き彫りにしている。

 漆黒の瞳がリーバーの顔を見つめる。

 リーバーはコムイから顔を逸らす。


「してませんよ。んなの」


 リーバーはそう言うが、リーバーの顔は既に紅く染まっていた。コムイはそんなリーバーを見てクスクスと笑った。微かに笑うコムイにリーバーはまゆをしかめる。


「何笑ってるんスか」

「リーバー君、可愛いなーと思って」

「なっ!可愛い言わんといてください!」


 コムイはあははっ、と笑いながら椅子から腰をあげ、リーバーと同じ目線になり、顔を近づける。

 顔と顔が、口と口が、重なり合う。その口内にコムイの舌が侵入し、リーバーの舌を動かす。

 少し経ち、離れればコムイは満足そう笑っていた。リーバーは、と言えばさっきよりも顔が紅く、口を袖で拭っていた。


「ごちそうさま♪素敵なバレインタインプレゼントだよ」

「オヤジくさいですよ」

「え?!」


 リーバーはクスクスと笑う。どっちかといえば、貰ったのはコッチだけどな、とリーバーは思った。甘い香りが未だに口の中で香る。


「それじゃぁ、ホワイトデーは楽しみにしてますよ」

「まっかせてよ」

「あ、ロボットや薬以外で」

「うっ、わ、分かってるよ!」


 愛か。告白か。変だな。貴方が居るだけで幸せなのに。お返ししなきゃならないのは俺の方なのに・・・リーバーはそう思い、コムイを見つめる。

 あぁ、心が満たされる感覚が広がる。きっと、帰りは足が軽い。音程が可笑しい鼻歌をするかも。全てがキラキラ輝いて見えるかもしれない。

 行事も良いかも知れない、そう思った。

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@言い訳@
 うん。毎回の事ながら、オチが変・・・。自分は最初に力を入れ(てるつまりで)、最後は無理矢理ですから。あーバレインタイン、過ぎてる(ド殴)これ、ホワイトデーも書かないとイケナイ?普通にネタが無いし・・・まぁ、後で。間違い無く書かないです(ド殴)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成21年2月15日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様