γがスパナの作業場に入った時、いつもの音が無かった。


 スパナがモスカの部品にぐだっりと乗りかかっているのだ。


 γは驚愕の顔を隠せぬままスパナに近づいた。


「スパナ!大丈夫か?!」


 γはスパナの頭をしゃがみ込んだ膝の上に引き寄せ、スパナの顔を覗き込んだ。

 スパナは虚ろな目をγに向けた。そして乾いた唇を動かした。


「お腹・・・空いた・・・」

「・・・は?」

「・・・3日間飴で過ごしていた・・・」

「・・・」


 馬鹿だ・・・。γはそう思うもスパナの顔は少し青い。


「スパナは大丈夫なのか?」


 γの問いにスパナは頷いた。大丈夫じゃないだろうが・・・。γはスパナの額に手を乗せる。そうしたらスパナの顔が赤くなった。だが、風邪だ!と言うほど熱くはなかった。


「じゃぁ俺が何か作ってやるよ」

「γが?作れるのか?」

「まぁな。俺のカルボナーラはボスの大好物だったんだ」

「へぇーでも、此処には休憩場兼台所があるけど、調理器具とか材料が無いんだ」


 マジか、あー確かに、の二つがγの中で響き渡った。大体此処に台所があるのはモスカに集中しすぎるスパナに休んで欲しい為に正一が作ったのだ。

 勿論機械であるモスカを作っていたり―と言ってもほどんとがにメンテナを―している為大きい料理は出来ない。

 まぁ、水が出て火が出りゃぁ良い。それに調理器具なら何やかんや言ってアフェランドラの部屋にある。主におつまみ作りに・・・。

 γはスパナの頭をグシャリと犬にする様に撫でた。


「待っていろよ」


 γが言えばスパナはゴクッと頷いた。



【誤】



 γはアフェランドラの部屋に入った。そこには相変わらずコッツイ男性が多く居た。


「おう!γ兄貴どうしたんだ?今から町の女を引っ掛けてくるんじゃなかったのか?」


 スパナの事はアフェランドラに話していない。ジッリョネロファミリーだったとは言え、スパナはジャポーネに居て、しかもホワイトスペルの正一と仲が良いのだ。

 スパナはブラックスペルを着ているが、ホワイトでもブラックでも無い灰色だ。それを目の前に居る野郎に知らされれば・・・どうなるか・・・。

 まぁ、だからで言って女を引っ掛けに行くとも言っていない


「ちょっとな。相手が料理食いたいって言ってきてな」

「料理か。γ兄貴のカルボナーラは美味しいからな」

「褒めるな。照れる」


 γはそう言うとアフェランドラの奥に行く。男ばっかしだが意外に綺麗だ。何やかんや言って此処で汚くしても困るのはコッチだからな。だから無理矢理当番制にした。

 ボス。俺達は貴方が居なくでもやってます!いつでもファミリー復興出来ます!(←獄寺さん化?)

 γは取り合えずカルボナーラで使う調理器具と材料を鞄に押し込む。ただ卵はさすがに無理だから手に持つ。


「じゃぁ行って来る」

「γの兄貴!何処に行くんだよ!」


 γを呼び止めたのは野猿だった。野猿はγを見上げ、言った。その目は何処か不安気だった。

 もしかしたら黙って任務に行くとでも思っているのだろうか?一応凶器―包丁―は持ってるしな。それに、此処はミルフィオーレ。

曲がり物のアフェランドラにいつ襲い掛かっても可笑しくない。

 だからγは笑顔を浮かべて野猿に言った。


「安心しろ。料理する時だ」


 γがそう言うと周りは何故かビビった。太猿のサイトに居る女性が悲鳴をあげる。

 γの安心させる為の作り笑顔は怖く、見たものは魔王だと叫び気絶するほだ。泣く子も黙ると言うことわざがあるが、γの場合逆だ。

 泣く子は気絶。泣いていなかった子は絶叫。

 だが野猿は目を輝かせていた。

 ヤバイ・・・此処に居られないな・・・γはそう察し部屋を出て行った。


「γ兄貴の作り笑顔怖ぇーよな」

「確かに。いつもならクールなのに・・・」

「ファミリー復興したら元に戻るさ!」


 口々にそう言う中野猿は快楽に身を震わせた。


「γの兄貴かっけぇー!!」


 野猿の言葉に回りは野猿を疑視する。


「料理だぞ!包丁やフライパンを持って・・しかも手には卵だ!さすがはγの兄貴!ボックス兵器もリングも使わず、殺る気だっ!!」


 野猿の言葉に野猿が誤解している事に気付いた。


「いやいや、そうじゃなくでγ兄貴はただ本当に料理をしたいだけだと思うけど!」

「確かにあの目は人一人殺しそうだよなー」


 意見が見事に分かれた。残念ながら、そんなにまとまっていなかった。




 その頃二人は・・・


「美味しい」


 スパナはγが作ったカルボナーラに快楽で震えていた。γは、そうだろー、と何度も頷く。


「まさかこんな可愛らしい料理が出来るなんでな」

「ボスが好きだった料理だからな」


 あの時はボスの為に一生懸命食料確保をしていた。山の中でいのししを狩り、鳥を狩り・・・ボスの為なら何でもするγ。忠実なる犬γ。今も現在です!ボス!


「ふわぁ〜」


 スパナは食べ終わり、今度は可愛らしい欠伸を一つ零した。スパナは片目を必死に擦る。

 確かに食事を取った後は眠くなるだろう。その前にスパナがちゃんと寝ていたか不明だ。


「寝れば良いじゃないか」

「・・・布団が無い」

「いや、正一が置いた筈だが?」

「モスカのメンテナで、モスカの中に入れたまま忘れてて行った」

「・・・」


 γは溜息を吐き、立つ。アフェランドラには予備のシーツがある筈だ。


「ごめんγ・・」

「いや大丈夫だ。待っていろよ」



 そんでもってまた戻って来たγを見て声を漏らす。


「血付いてないぞ」

「何だ本来の意味だったのかー」

「?お前ら何を言っているんだ?」


 γは首を傾げながらシーツを手いっぱいに持つ。


「あ、兄貴、今度は何をするんスか?」

「あ?相手が眠いって言っていてな」

「何か相手わがままだな」


 そう言われγはスパナの事を考える。わがままと言うよりもマイベースであんまし人のベースに合わせられないタイプだ。

 それに、このわがままはむしろγにとって大歓迎だった。スパナはいつもモスカの事を考えている。だから今日みたく、γを、モスカ関わり以外で頼る事は嬉しかったのだ。


「あ、そう言えばコレ誰も使っていないよな?」

「?そうだけど・・・何でだ?」


「いやー向こうだと間違い無く―オイルとかで―汚れるし、一層の事向こうに置こうかなと思ってな」



(汚れる!?)


 γはウキウキしながら、後枕とか下式も持って行くか、と手を伸ばした。γの手いっぱいに布団一式を持って、出て行った。


「お、おい・・・汚れるって・・・」

「犯るか殺るだろうな」

「γの兄貴の事だ!絶対に殺る方だな!くーかっけぇーな!」


 そして変な方向で一致をした。ボス・・・皆の心が一つになったよ。



 良い子が眠っている深夜


「って、γの兄貴遅くねぇか?」

「そうだなー」

「もしかして、γの兄貴服上死してるんじゃねぇのか?」

「あははっ、まっさかー」


 はははっは・・・

―――――
―――
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「何だろう、冗談じゃない気がする!」

「γ兄貴!早く戻ってきてくれーっ!!」


 その頃γは・・・。


「うーやべー寝すぎた」


 さりげなくスパナと―行為無しで―一緒に眠っていた。


「二度寝しようー」


 そしてγはスパナを抱きしめながらもう一度目を閉じ、スパナの静かな寝息を聴きながら、次第に眠りに堕ちた。

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@言い訳@
 何の話だ!(ド殴)これは本当に、『γの兄貴はスゲー』と言う野猿さんの誤解話が書きたかったと言う・・・。γさんは狐だと思います。狐って確か犬科とか・・・頭は良いけど、犬なんです(ド殴)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成21年4月5日



背景画像提供者:Abundant Shine 裕様