シャマル


 シャマル


 フッと振り向いた。笑みを浮かべていたソイツが居た。


 光に当たるソイツが眩しくて、シャマルは目を細めてしまった。


 シャマル



 ソイツはシャマルに手を伸ばす。
                シャマルは伸ばされた手を握った。



 ―――シャマル


 握った筈の手が漆黒に侵される。そして漆黒のなった皮膚がねっとりとした粘液へと変わる。


 そして飛び散り消えた。



【Incubo】



 ボンゴレファミリー本部。

 そこの長い廊下をシャマルがトボトボと歩いていた。その足取りは酷く重く、一歩一歩踏み出してる筈なのに全然進まない。

 それでもボンゴレに呼ばれてる為行かなければならい訳だが・・・それでも足が上手く動かない。まるで『行くな』と言っている様だ。

 シャマルは何度目になるか、欠伸を一つ零した時だった。

 バンッ!と背中を勢い叩かれた。シャマルは丸まっていた背をピンと伸ばすのを通り越して、背をのぞけった。

 シャマルは怒りのままに振り向けば予想通りの男性が立って居た。金髪の短い髪。アジアの肌にヒゲ面。


「家光っ!!!」

「おお!そんなに喜んでくれたか!」

「何処が喜んでいるんだよ!」


 シャマルはキーキーと怒るが家光には届かずははっ☆と笑っていた。

家光にシャマルは殴る気もせず、家光に背を向け目的地へと歩き出した。家光は何処かフラフラするシャマルが心配になりシャマルの横に並ぶ。

だがシャマルはそれに苛つき家光を睨みつけながらド低い声で訊く。


「なんだよ?」

「いやー元気ねぇなーと思ってな」

「うっせぇー」


 シャマルはそう言うと歩む足を速めた。

 今家光にあんまり関わりたく無いのだ。純粋に『うざい』と言うだけもあるが・・・実際はあの悪夢のせいでもある。

 正直夢の中でシャマルの事を呼んでいた人の顔は覚えていない。ただ、振り向いて素顔に伸ばされる手に触れたって事は、知り合いでそれなりに親しい相手って事だ。

 だが、恐らく、アイツだ。

 多分アイツで、アイツが人の良さそうな笑みを浮かべながら俺に手を指し伸ばしたのだろう。

 そんな気がした。あの日の事・・・否・・・アイツの過ごした日々を思い出すだけで吐き気がする。

 こんなへこんだ姿を誰かに見られたくない。ましてや家光など、死んでも嫌だ。それは『大好きな人に心配されたくない!』と言う乙女チックじゃない。

 『家光に心配されたら色々と面倒だ!』の方だ。人に心配されるのが一番面倒だ。まず心配されて話したくも無い悪夢の事を話さないといけなくなる。そして話を聞いて別にどーでも良い相手なりのアトパイスを聞かなきゃならない。

 最後に『有難う』とか+思考の事をしなくじゃならない。それが面倒意外に何者でも無い。

 だから早足でさっさと行ってさっさとボンゴレを去りたかったのだ。多分任務話だろうし。

 だが家光も早足になる。

 シャマルは小走りへと変える。そうすれば家光も小走りへと変わる。

 シャマルは本走りへと変える。そうすれば家光も本走りへと変わる。

 しかもムカつく事にシャマルが一生懸命息を切らしながら走っているのに隣の家光は、と言うと・・・余裕に笑みを浮かべシャマルの事を見つめていた。


(余裕じゃねぇかー。あぁ?)


 そう思いながら一瞬限界まで早く走ろうとした。だがシャマルはそうせずあえて止まった。

 急の止まりに家光は勢い良くが止まる訳が無く、1mの所で止まった。そしてシャマルの方を振り向いて、シャマルに近づく。

 シャマルは肩で息をしていた。


「お前は何なんだよ・・・」

「俺はシャマルちゃんの恋人様だけど?」

「よし!死ぬほど苦しませる一番タチの悪いウィルスをお前の体内に注入させてやる」


 シャマルが家光を睨みながら言うと7Cm上の家光は「はははっ」と笑った。本当にコイツはムカつく・・・毎回の様に会う度に10回以上思う事だ。

家光はシャマルの頭の上に手を乗せ、掻き混ぜる様に撫でた。折角セットした髪が崩れた。


「何をするんだよ!」


「ははっ、シャマルの悲しんでいる姿、もう、見たくねぇんだ」



家光の苦笑交じりの言葉にシャマルは「はぁ?」と返す。だが鼓動が無駄に激しくて気持ち悪い・・・。

家光は人の良い笑みを浮かべる。


「恋人とか関係なく、お前には悲しんだり苦しんだりしてほしくないんだ。親心ちゅぅのかな?」

「意味分んねー。しかもお前、25ぐらいだろ?」

「ははっ、おしい24です」


家光は笑いながらシャマルを抱きしめた。それにシャマルは大げさな程ピクつき家光を離そうと試みた。だが家光の力が強く、全然離れなかった。

 それところか抱きしめる手が強まる。


「よしよし、大丈夫だからなー」

「幼稚扱いするんじゃねぇよ!!」


 シャマルが怒鳴れば怒鳴る程に家光はシャマルに関わろうとする。

 拒絶をすればするほど家光はシャマルの警戒を解こうとしている。


(今から考えれば・・・家光ほど拒絶反応を起こす奴はいねぇよな〈ニッコリ〉)←


 でも、それは良いストレス発散になるのも真実(←酷い)

 それに、家光の抱きしめは最初は嫌いだが、途中から気持ち良くなる。変な意味での『気持ちよくなる』じゃなくで・・・尖った心が丸まる様な、感覚。

 とても心地が良い。


 それでも、それは誰も居ないところでの話。


 シャマルは家光の腹をグーで殴った。それにさすがの家光もへなへなと腹を押さえたまましゃがみ込む。


「好い加減しないと、怒るからな」

「怒ってるじゃないか」


家光は口を尖らせながら言う。それにシャマルは眉間に皺を寄せ睨みつけるが、本当は家光の子供の様に口を尖らすその表情に笑が零れそうになるのを堪えるのに必死だった。

家光はシャマルを見て表情が緩む。



「良かった。いつものシャマルだ」



 吐息の様に家光は呟く。シャマルの耳にギリギリ届く小さな声。あんなにでかい図体なのに、何処からこんな言葉が現れるんだ?

 否、『優しさ』に見かけも何もないか・・・特に背なんで遺伝だし。

 シャマルはプイと横を向く。


「何でそうなったか聞かないのかよ?」


 シャマルがぶっきら棒に訊く。勿論その件について深く追求はしてほしくないが、今から思えば家光はシャマルの事を聞かない。

 落ち込めば家光はシャマルの機嫌を宥める様な行為をするだけ。家光はニコッと笑みを浮かべる。


「俺を誰だと思っているんだ?あのボンゴレの門外顧問だぞ?シャマルの過去の一つや二つ仕入れる事なんで簡単だ」


家光の言葉に何拍か沈黙が続く。

ふーとシャマルは息を吐く。そしてゆっくりと息を肺に入れる。そしてその入れた肺を全部使い切る様に叫ぶ。


「お前はどんだけストーカーなんだよ!!」

「ストーカーなんで心外だな」

「取り合えず死ね!むしろ殺してやる!」


 物騒な単語を吐き出すシャマルに『暴力No!』と家光が両手を小さく上げる。シャマルはフンと鼻を鳴らした。 

 そしてフッとボンゴレに入ってすぐの暗い自分が馬鹿らしく感じた。


「お前は本当にスゲー才能持ってるよな」


 シャマルはボソと呟いた。

 いつも暗く何処か−思考なちのシャマルを+思考させる。

 ムカつきが生まれるけど、でも、声を上げたりして悪い気はないし心が晴れる。

 そう思い呟いた言葉だが・・・家光は両手で可愛らしく口元に当てシャマルを見つめる。その目は輝き、頬や耳はほのかに赤い。

 勿論そんな家光にシャマルは嫌悪を感じた。


「好い気になるなよ!」

「いやーまさかシャマルから褒められる(?)とは思わなかったから」

「うぜぇー」


家光はあははっと笑う。シャマルはよく笑う家光にいつしか羨望を感じていた。

だから何となく家光の笑顔を無くそうと思った。


「悪夢を見た。あいつの夢だ」


 確かでは無いが・・・多分アイツだ。家光はそれに笑いを止め、苦笑を浮かべる。


「そうか。辛かったな」

「そうだな。まぁ別に慣れてるし」

「じゃぁそんな辛いことに慣れてるシャマルちゃんに愛の抱擁を――「死ね」 」


 シャマルは家光の腹に蹴りを入れてから去る。家光は腹を抱えながらシャマルの後ろ姿を見つめる。

 来る前とは違う。どうどうとしていた。それに家光は笑みを浮かべた。



 悪夢を見た。

 多分アイツの夢。

 それは酷く苦しい過去。

 それでも元気付ける奴が居る。

 いつもソイツのお陰で俺は元気になる。


「今日も頑張るか」


 そう呟きながら軽やかな足取りで目的地へと向かった。
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@言い訳@ incudo=悪夢・悪夢のような状況

 別にそんなに悪夢と関係ない(ド殴)家シャマ・・・過去書いた方が楽ですかね・・・アイツって誰だよ?!って・・・本当に誰でしょう?(ド殴)オリジナル・・・何があったのか謎。そして家シャマの小説書いてない(ド殴)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成21年5月24日



背景画像提供者:Atelier Black/White 氷室夕霧様