「おいリーバー」

「・・・はい?」

「はいじゃねぇよ。今日が何の日かやもや忘れたとか言うんじゃねぇよな?」

「今日・・・?」


 予想通りリーバーは首を傾げた。勿論そんなリーバーにクロスは決して喜ぶ訳・・・がない。

 クロスはタバコの煙を吸い、リーバーの顔に吹きかけた。リーバーはタバコが嫌い=蒸せる。その原理の如くリーバーはゲホッゲホッと涙目になりながら左手で煙を仰ぐ。


「ゲホッ・・・何するんスか。クロス元帥」

「お前が忘れているからだろ」

「だから、何をです?」

「今度はタバコを押し付けてやろうか?」


 クロスはそう言うと持っているタバコをリーバーに近づける。それに敏感に反応したリーバーはズズッと後退りした。

 「冗談の効かん奴め」とクロスは言うとタバコを口に戻す。それを見てリーバーは安堵の息を漏らしながら「あんたの場合、冗談に聞こえないんですよ」と返した。

 「ほー。そりゃぁ悪かったな」とクロスは気付けば銃を取り出し、カチャッと鳴らした。その音にピクッと体が揺れ、両手を前に出す。


「ははっ、それこそ冗談ですよー。クロス元帥の言葉は全部冗談に聞こえないです!」

「無理矢理すぎるぞ。それ以前に俺は冗談とか、そんな話どーでも良いんだよ」

「・・・今日は何の日か、ですか?」

「そうだ」


 クロス元帥がこうしてしつこく言うとしたら『リーバー自身の誕生日』の時しか思いつかない。他に何があるのだろうか?

 今日は7月7日・・・ん?7月7日?


「(ピーン)分りました!七夕ですね!」

「何時の話をしているんだよ」


 バンバンッとまさかの銃弾発射!見事にリーバーの周りに銃弾跡が出来る。


「あれ?今7月7日じゃないませんでしたか?」

「なわけねぇだろ?今日は7月31日だ。もう大ヒント出しちまった。もう分かちまうな」


 今日は31日かーと思いながらも考えた。31日?31日・・・リーバーの顔中に油汗が溢れる。


「えーっと;」

「・・・分らないって事はねぇよな?」(カチャッ)

「えーっと・・・・明日から8月になるって事・・・じゃないスよね?」

「本気で蜂の巣になりたい様だな。まぁ俺は優しいから根性焼きプレーにしてやるけどな」

「ひっ!すみません!それだけは止めてください!」


 根性焼きプレー。恐らく蜂の巣よりもそっちの方が辛いと言う・・・なんせ蜂の巣は痛みを感じたか感じるかの当たりで死ぬのだから・・・。それに比べ根性焼きでは死なない。でも熱く痛み、半日は地味に痛む。それに一生痕が残る。


「・・・本当に分からないのか?」

「・・・本当に分かりま、せん」


 リーバーは恐る恐る言った。クロスは怒りよりも先にため息を吐く。その後リーバーに近づき、リーバーの腕を掴む。

 それにリーバーはどうにか離れようとした。だが離れず、クロスはリーバーの腕捲りされている腕にタバコを押しつけようとした。


「ちょっ、ちょっと待ってください!何も分らないままされるのは嫌です!」

「知らないお前が悪い」

「そんな」


 クロスは変わり者だが、これは異常だ。何か理由がある筈・・・。クロス元帥が『今日は何の日か?』と聞く時は大抵『リーバー自身の誕生日』だ。でもリーバーの誕生日は約2ヶ月先だ。

 クロス元帥が間違える筈がない・・・もしかしたら何かの記念日だろうか?それとも誰かの誕生日――――


「あ、もしかして・・・今日クロス元帥の・・・」

「やっと分った馬鹿が」


 クロスはふんと鼻を鳴らしながらリーバーの広い額にタバコを押し付けた。「きゃああ」とリーバーは叫び額を押さえる。


「ううっ;」

「遅ぇんだよ」

「・・・えーと、俺、プレゼントとか無いんですが・・・」

「あ゛?俺がプレゼントで喜ぶ様なガキだと思っているのかぁ?」

「え、あ、いえ!」


 俺だったら喜ぶんだけどな・・・とリーバーはさり気無く思った。例えば上司の仕事とか。上司の仕事か。上司の仕事とか。

 クロスは何かに気付いたのか、顎ひげを擦り「んー」と何かを考えている様に唸った。そして分ったのか手をポンッと左掌の中で叩く。

 そしてクロスはリーバーに近づき、リーバーを抱きしめた。丁度10Cm違う。口元がクロスの鎖骨に当たる。


「そうだな。誕生日にお前が欲しいな」

「えッ;」

「何だ?不満かぁ?あぁ?」


 欲しい=犯されるだから 不満です。でもそれは理由の半分にも満たない。


「でもそれじゃぁいつもと同じじゃないですか?」

「いつもと?」

「だってクロス元帥が来る時いつも俺を強制的に引っ張るじゃないスか」

「・・・それもそうだな」



 クロス元帥はリーバーの仕事中などお構いなく強制的にクロス元帥の部屋へと連れて来るのだ。

 結局やる事も一緒だし『プレゼント』にしても意味がない。

 だがリーバーは『はっ!』と我に返った。それはまるでリーバー自身が『違う激しいプレイを強請っている』様ではないか、と。

 自分で恐れている事を自分からしている。それに気付くが、もう遅い。


「じゃぁ今日はお前が求めて貰おうか?最初にお前からキスをしろ」

「ううっ」

「お前が言い出したんだろ?」


 リーバーは一旦横へと目線をずらしてから改めクロス元帥を見て、その目を閉じる。そして背伸びをしてクロス元帥へと近づける。

 そして唇に当たり、離れようとした時、クロス元帥の手がリーバーの背を押さえ付けて・・・。

 グッと距離が近くなったリーバーの口とクロスの口。リーバーのカサカサの口を潤す様にクロスが舌を出し、リーバーの上唇を舐めた。そして無理矢理リーバーの口へと入れ、リーバーの歯列を舐めた。

 「ふぁ・・・」久々のキスがかなり効き、リーバーの脳天が痺れるのを感じた。だがクロスが口内に侵入し、リーバーの舌と絡ますともっと強い痺れが脳を麻痺させる。

 舌と舌が触れ合っているのに何故か背伸びしている足が痺れる。リーバーはクロス側に寄りかかり、両手でクロスの団服を握った。

 クロスは舌を抜き出し、リーバーを見た。リーバーは顔を俯いて良く見えない。


「今日は俺の誕生日だ。顔くらい見せろ」


 リーバーは「ううっ」と唸りながらも忠実に顔を上げる。潤う涙に頬や耳は紅い。

 紅い頬をクロスの手が撫でる。そうすればリーバーは猫の様に目を細め、頬に触るクロスの手に手を重ねた。




「あの、お二人さん・・・イチャイチャはよそ・・でやってくれますか?」




 そんな声に二人は男性の方を向く。キャラメル色の長い髪を持つマービンだった。


「俺は別に大丈夫だけど、ホラ、リーバーってさり気無く人気だから立って仕方ない奴等が居るから」


 そう言うとリーバーは改めて科学班を見回した。気付けば科学班の人数の3/2は減っている。


「あいつ等仕事サボったな!」

「全てお前らのせいだよ。お前らの」

「フン。あんなのでヌきに行くだぁ、またまただな」

「あいつ等は頑張りましたよ?元帥」

「てか、俺も仕事サボって!」

「んな事より俺のプレゼント―――」


 コーン  コーン


「チッ、鳴っちまったか」


 もう8月1日となってしまった。


「仕方ない。今度また来る」

「今度は覚えときます」

「今度忘れたらこんな甘い罰じゃ終らせないからな」

「罰だったんですか!?」


 そして呆気なく二人のイチャイチャは解放したとさ☆

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@言い訳@
 今日クロス元帥の誕生日だったとは・・・。知ったのが今日の22時☆(ド殴)慌てて小説を書いたら変にorzもう諦めてくだせぇ(殴)
 クロス元帥、毎回毎回ワンバターンでごめんなさい。そして誕生日おめでとう☆
 では色々とスイマセン。失礼します。平成21年7月31日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様