甘い、甘い。
そう思うけど、何が甘いのか正直分らないでいた。
【Tale】
真田とはそれなりに長い付き合いをしている。それでも真田の事を全て知っている訳ではない。
特に真田家についてなんでまったく分らない。そもそも真田自身、自分の事とか家族の事とか話さない(テニスの自慢とか家が剣道場とかは自慢するけど)。
幸村精市にとってそれが不思議で仕方なかった。自慢する割りに細かな所は言わない。別な言い方をすれば『良い所しか言わない』のだ。
きっと、悪い所などない、と思っているのだろう。まぁあの真田だ。そう思っていても何も不思議ではない。
とにかく幸村は真田の事をそんなに知らないでいたのだ。それを最近気付いた。一度気付いてしまったらどうしようもなく知りたくて仕方ない。
だから今日幸村は訊くことにしたのだ。
「真田の家族ってどんな感じ?」
日が傾いて暗くなりかけている。部室の中は幸村と真田しかいない。真田は部の日誌を書いており、幸村は真田待ちだ。
急の質問に一瞬真田の目が見開くのが見えた。だがすぐに目を細め、幸村の方に視線を向ける。
「何故急にそんな事を聞く?」
「だっていつも言わないじゃん」
真田が眉を顰めながら「そうか?」と聞き返す。それに幸村は口を尖がらせながら「そうですよーだ」と返した。
真田は溜息を吐き視線を幸村から日誌に向けなおした。そしてペンを動かし始める。
「別に隠していた訳ではない」
「じゃ勿体ぶならずに言えよー」
「・・・俺には祖父と母と父と兄の五人家族で・・・」
「それは聞いた。俺が聞きたいのは家族の特徴っていうか、そんな感じ」
ペンが真田の手の中で回った。真田は古風のくせにフッとした瞬間に現代子の様な事を無意識にする。
少しの間沈黙があらわれた。そんなに言いたくないのか?と思った時だった。
「祖父と兄は仲が悪いのだ」
「・・・?」
「俺の中にはその記憶が大きい」
幸村は一度も真田の兄を見たことがなかった。どうも真田の兄は真田が5つの時に出て行ったらしい。
真田はペンを置き、日誌を閉じた。
そして改めて幸村を見た。
「だから、良い思い出が出来たら話す」
「え?」
真田の急な言葉に幸村はついマヌケな返しをしてしまった。
真田はスクールバックの中に筆箱を入れながら言葉を続けた。
「幸村、お前には幸せな話だけを聞かせたいのだ」
「・・・何で?」
幸村の純粋なる質問がすぐに返される。真田は体ごと幸村と逆の方向を向いた。
――――なんだよ・・・。
幸村は内心そう思った時だった。
「―――お前は俺の大切な者だ。だから悲しい話をして心配をかけたくないのだ」
言っている途中、真田の日に焼けた耳がみるみる紅くなるのが見えた。
それについ幸村はクスッと笑った。
―――あぁ、なんで愛しいんだろう。
幸村はそう思い真田に一歩一歩早めに歩き、真田に近づく。真田の真後ろに立っても真田は幸村の方を振り向かない。
だが、此処から見える真田の耳は更に赤みを増していた。
幸村は腕を広げ真田を抱きしめようとした。だが抱きしめる数センチ前で止まった。
―――でもやっぱり
幸村はゆっくりと、まるで壊れ物を扱う様に真田を抱きしめた。
「やっぱり俺は真田の全てを知りたい」
幸せな姿も見たい。でも、恋人だからこそ、幸村は真田の全てを知りたいと思った。
「それは―――」
「良いんだ。真田の誰にも言えない事・・・悲しみも苦しみも俺に話してくれ」
真田の筋肉質の腕。普通は細身である俺が抱きしめられる方だろうな、そんな事を頭の何処かで思った。
「なぁお願いだ」
甘い、甘い
きっと甘い時間に酔っているんだ。
俺はお前を愛している。そしてお前は俺を愛している。
そんな酔いで俺がお前を救えるなら、喜んで酔い続けよう。
「お前の全てを俺に教えてくれ」
そして二人で酔おう。
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@言い訳@
初の幸村様×真田です!自分自身、漠然と真田受けが好きだと言ってますが、どのカップがどうとか未だに分かってませんorzでも今回書いていて幸真書きやすいなーと思いました。取り合えず幸真。次は黒い幸村様を・・・(ド殴)
では色々とスイマセン。失礼します。平成22年5月17日
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