昔の事だ(昔と言っても3・4年前なのだが・・・)。
一度だけ俺は幸村と一緒にヒマワリが多く咲く場所に行った事がある。
当時の俺は小学校上級生にも関わらず、いや、もしかしたら今も目の前に蠢く黄色い花々が何なのか分らないだろう。
目の前にはまるで麦畑の様な、黄色が動いていた。
ヒマワリは背が高く、一生懸命にヒマワリを掻き分けていた。
ずっと、ずっと、ずっと・・・
必死にヒマワリの中を走りまわっていた。そして必死に叫んでいた。
『幸村ァァァ!!!』
当時の俺はヒマワリに囲まれた場所が、地球じゃない、何処か別の世界に感じていた。
恐怖でしかなかった。
【ヒマワリ】
「真田ってヒマワリだよね」
幸村の言葉に真田は眉を顰めた。
此処はとある住宅街。住宅街の庭先にはよく趣味で花を咲かす家がある。幸村がしゃがみ込み見つめるヒマワリもその1つである。
ヒマワリは真田が知っているヒマワリよりも背が低く、20Cmぐらいの小ささであった。
幸村がしゃがみ込んでも同じ視線にはならない。それでも幸村は満足そうであった。
幸村の笑みを見ているのは真田にとって幸せだが、言葉を素顔に受け取る程真田は頭が柔らかくはなかった。
「俺はヒマワリじゃない」
「そういう意味じゃないよ」
幸村は口を尖がらせながらすぐに答えた。機嫌を損ねたか・・・と真田は内心自分を恨んだ。勿論幸村は内心こうなるだろうなーと気付いていたため別にそうでもなかった。(勿論真田は気付いていない訳だが・・・)
幸村は立ち上がり、真田の方へ振り向いた。そこにはいつもの様に優しげな笑みが浮ばれていた。
「ヒマワリはなんか、温かいイメージがあるんだ。それが真田っぽいなーって」
「・・・そうか?」
温かい?真田はつい首を傾げてしまった。
確かに真田は運動部と言う事も男と言う事もあって体は温かい。実際に冷え症ではない。
そんでもって真田の手は冬になると皆の湯たんぽとなっていた。だから幸村が温かいイメージがあるのは納得出来る。
だが真田にとってヒマワリは『怖い』と言うたるんどるイメージしかなかった。
幸村はクスクスと笑いながら「そうだよ」と答える。その後すぐに「あ」と何かを思い出しまだクスクスと笑い出した。今度は意地の悪い風に。
「そういえば真田は小学生の頃、ヒマワリ畑で迷子になったんだっけ?」
「な、あれは違う!そんな事を・・・た、たるんどる!」
もはや言葉になっていない真田の言葉に幸村は「はははっ、恥じるなよ」と笑った。勿論真田の顔がみるみる紅くなる。
恥じるな、という方が無理な話である。それにあれは迷子ではなく、幸村を探していたのだ。
あの日、幸村の家族と一緒に真田はヒマワリ畑に行った。
一面黄色と黒で覆われていた。幸村はそんなヒマワリを見るや否かすぐにヒマワリへと飛び出した。
真田は慌てて幸村を追いかけた。だが、もう既に幸村の姿はなかった。一生懸命に幸村と呼んだが幸村は出てこない。
幸村幸村幸村、幸村ァァァッ!!!
真田の喉が枯れ始めた頃真田は幸村を探すのを諦め、ヒマワリ畑を出ようとした。
だが、周りを見回しても濃い緑色の茎や葉っぱだけだった。上を見上げれば、青い空はほんの少しだけで、視界のほどんとがヒマワリの黄色い花びらと黒い種部分だった。
真田は踵を返し走った。元の道を!!!だが本人が思っている程真っ直ぐに進んでいた訳ではなく、真田は同じ景色をぐるぐる回っていた。
――――もしかして俺は別の世界に来てしまったのではないか?
兄が見ていたアニメの中にあった話を不意に思い出す。一人の青年がある森に入った。その中を彷徨っているうちに抜ける。そして町が現れるが、そこは人間の体なのに動物の顔をした人が大量にいた。
ファンタジー。兄はそう教えてくれた。だが何時そのファンタジーに来るか分らない。そうも言っていた。
真田は顔を青ざめる。
――――俺は火を吐くトカゲやプニョプニョした青い物体と戦うのか?
真田はそう思うと脳から足元へ一気に恐怖心が走った。
『いやだぁぁあああぁぁぁっ!!!』
何故急に『貴方は勇者』と言われてそんな恐ろしいバケモノと戦わなければならない?そもそも今の真田はテニスをしていたが、戦う術を知らない。
その時、真田の後ろにあるヒマワリが揺れた。真田はピクッと身を震わせ後ろを振り向いた。
もしかして火を吐くトカゲか?それともプニョプニョした青い物体か?
真田はどうしてよいか分からず、揺れるヒマワリをジッと見てる事をしか出来なかった。そしてヒマワリを揺らしていた者がパッと顔を出した。
『見つけた!真田!』
顔を現したのは幸村だった。真田は幸村の顔を見てもすぐにそれが頭の中に入ってこなかった。この状況を確認する前に不意に己の五月蝿い程鳴り響く鼓動を必死に追っていた。
次第に鼓動が弱っていく。そして不意に今の状況が理解出来た。
目の前にいるのは幸村で、真田を探しに来てくれた、と。そして帰れる、と。
幸村は笑みを浮かべ真田に手を差し伸ばしてきた。
白い手だ。指は細い。それはとても華奢な手だった。だが今の真田にとってそれはとても頼もしい手だった。
真田はその手を握る。かくして真田は救出されたのだ。
今思えば真田は幸村を追いかけただけだ。だが結果的に真田が迷子になっていた。
なんとなくウサギを追いかけたアリスの気持ちが分かった。
顔が紅い真田の頬に幸村の華奢な手が触れた。真田はそれにピクッと震えた。
幸村の優しい笑みが真田の顔に近づく。
――――俺には到底出来ない笑みだ。
笑顔など作る事を苦手とする真田。男がヘラヘラ笑ってはイケナイ。そう教わったからだ。
だが幸村はいつも笑顔でいる。それにたるんどる!と思いながらも、何処か心を許すところがある。
きっとこれが幸村の才能なのだろう。
とにかく真田は幸村の笑顔をま近かで見てしまい、紅く染まった頬が更に紅みを増す。
「・・・真田はヒマワリよりも輝いているよ」
「な、何を言う?!」
「だってこんなにも美しいんだもん」
幸村はそう言うと背が高い真田を抱きしめる。幸村の顔が下にあって(しかも顔を肩に押し付けていて)よく見えなかった。
抱きしめられている。腕が体が足が、触れられている全てが熱い。ツンッとそこだけが熱くて、その熱さを感じると何故か自然的に鼓動が激しくなってしまう。
「輝いていて、美しい。・・・それは昔の淡い失態すらも吹き飛ばすんだよ」
幸村の言葉に真田は少し目を見開いた。だがすぐに戻す。そして幸村の背に手を回す。幸村を包み込む様に少し背を曲げた。
――――本当に幸村は――――
幸村はチラリッと真田の方に視線を向けた。
真田は目を瞑っていた。だがその口元には笑みが浮ばれていた。
眉間にはしわの後があるが、それも気にしない程にその笑みはとても純粋だった。
真田の笑みは世間的に言う『微笑』しかしない。それ以上が出来ないから。でも、その『微笑』が酷く幸村を酔わす。
幸村はまた真田の肩に額を押し付けた。
「ほら、やっぱし真田はヒマワリだ」
――――こんなにも俺の心を温めてくれる、純粋なるヒマワリだ。
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@言い訳@
甘いですかね?一応甘くしたつもりなんですが・・・なんか話が繋がらず・・・真田さんは迷子になっても『迷子などなっておらん!』とか言いそうですね・・・うわー私に絶対に合わなそうな人だな・・・。基本的に真田さんは二次元のままが良いですw現実にいたら・・・不登校になりそう・・・でも不登校になっても『授業に出ないなどたるんどるぞ!』と家に乗り込みそうだな・・・。
では色々とスイマセン。失礼します。平成22年5月18日
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