いつも怒ってばかりの、君。
でもどこか優しい、君。
そんな君は今日も生きていて。
僕と時間を共有をしていて。
今日も変わらない、君。 今日も変わらない、日々。
そう思い今日が流れる。そう思っていた。
【Doesn't Change】
いつもに増して今日はリーバーが室長室に居て、いつも以上に不機嫌だった。
コムイにとってリーバー・ウェンハムは仕事の鬼で、絶対的の恐怖の元であった。それはリーバーが班長候補に挙がってから更に増した。
確かまだ20代ではなかった筈・・・。顔だってまだ幼さを感じる。なのに顎に蓄えているヒゲがあって、酷くアンパランスに感じる。
きっと本人は『子供に見られたくない』というプライドからだろう。かなり若くして入った為か、その髪型の様にツンツンした性格だ。
とにかく、室長でありながらたまに現実逃避をするコムイ・リーにとってリーバーは怖い存在である。
勿論現実逃避をするのは大きな仕事を終えた後とかなのだが・・・(その数年後には逃げ出すのが日常になる)。
とにかく、コムイは目の前にいるリーバーが怖くて仕方なかった。
「あの、リーバー君・・・もうそろそろ仕事に戻っては?」
「俺は室長が逃げないよう見張る様言われてますから」
だからって、仕事机の前で立たれても(しかも眉間にしわをかなり寄せながら)。
コムイにとってその色素の薄い青い瞳が恐ろしくて仕方なかった。中国出身であるコムイにとって、金色の髪も青い瞳も珍しくてドキマキしてしまう。
リーバーの瞳の色など言うまでもない。リーバーの瞳はまるでガラス玉の様で見てるだけで恐怖を過ぎらす。
そんな瞳に見られると何度も言うが、怖い・・・。それにどうせ見張られるならマービンが良い。彼なら色々と楽しいし。まぁそれだと仕事にならないのだが・・・。
リーバーの眉間によりしわが刻まれる。
「ほら!手を動かしてください!」
「はい!!」
コムイはリーバーの声に慌てて書類に向き直った。だけど人に見られるとどうも集中力がなくなる・・・。コムイは一度息を吐き、意を決してリーバーに言う。
「見られていると仕事が出来ないよ〜」
「仕方ないじゃないスか。ソファーまで未処理の書類が乗っているんスから!」
ご尤も。コムイは「うー」と言葉になるない声を出しながら書類に再び目をおとす。
書類を読んで、ボムッと判子を一つ押した。そして次の書類に移る。それを見ていたリーバーはフッと思った事を素顔に口にする。
「書類を一つ一つ確認してから判子を押すんスか?」
「うん。そうだよ?」
「大変スね」
リーバーは書類の塔の一番上の紙を取り、そして見る。そこには文字がピッシリと埋まっている。しかも正式な為に堅苦しいし数多くの知識を知らないと判断に困る。それ以前にこの書類達は手書きな為くせのある字は読めない。
リーバーは手に持った書類をみながら「んー」と唸る様に見つめた。そんな予測不可能なリーバーを見上げてコムイは「リーバー君?」と小声で呼びかけた。
リーバーはその小声を聞いてか否か、書類から顔をあげてまだ突拍子のない事を言った。
「俺が書類を読んで簡潔的な内容を付箋紙(ふせんし)に書いたらかなり時間の短縮になると思います」
「・・・はい?」
コムイはつい目を見開いてマヌケな声を出してしまった。本当にリーバーの発言は突拍子がない。
「でもそれだとリーバー君が大変じゃない?」
「まぁ確かに研究を持つと大変でしょうね。でも、慣れれば楽でしょうし、仕事が溜まると困るのは我々の方ですから」
確かにこの書類達は聖戦の勝利の為に書かれたモノで、モノによっては聖戦に大きな影響を与える事になる書類もあるかもしれない。
だけど、20も満たないまだまだ成長期の若者である。日々の仕事+成長痛などで忙しいだろう。特に成長痛。否、成長痛を馬鹿にしたらあかんよ!!
兎に角、リーバーは若いにも関わらず忙しいのだ。良く言えば出世。悪く言えば若者っぽくない。
実際に頭が良いからこそ、周りから良い様に思われていないしリーバー自身周りを敵視している所がある。
頑張って苦労をかけない様にしようと思うが、どうしても仕事が溜まってしまう・・・何故だろ☆
「取り合えず客用机とソファーにある書類の塔を片付けますから」
そう言うとリーバーはコムイの返事を待たずにソファーに向かう。ソファーにある書類を大雑把に床に下ろし、ソファーにドスッと座った。
リーバーは早速書類に手をかけ読み始めた。
その目は真剣そのモノであった。リーバーのあの硝子の様な瞳は書類を見ている時、酷くしっくり来る。
小さなエクソシストやリーバーを見る度に思う。
『こんな子供まで巻き込むなんで』と。
コムイは少しの間リーバーを見つめたが、すぐに書類に向き合った。
最後の書類が終った時にリーバーは新たなる書類の塔を持って来た。それを見てコムイは当然の様に顔を青ざめた。
「まだあるのかい?!」
「当たり前じゃないスか」
リーバーは容赦なく机に手一杯の書類の塔を置いた。それを見てコムイの顔が更に青ざめた。
リーバーは溜息を吐きながらもチラチラと後ろにある扉を振り返る。つい10分程前からそんな素振りを見始めたのだ。
いつも悲しいくらい単刀直入なリーバーだった為、その不審な行動にコムイの好奇心がくすぐった。
「なになに?扉の向こうに何か?」
コムイがニタニタ笑いながら言えばリーバーの体が一気に強張った。額に汗。目線はコムイを見ない。そして「そ、そそそんな事あ、ある訳ないじゃないスか」と間違いだらけの言葉に震える声。
――――怪しい。
怪しいしか言えない程に怪しいのだ。誰が見ても『怪しい』と思う程だ。とにかく怪しいのだ。
コムイは「クフフッ」と何処かのマフィアアニメのパインさながらの笑い声を出しながら、手をついて立ち上がった。
リーバーは最近成長期になっているが、まだまだ176Cm。それに対して成長しきったコムイの身長は193Cm。コムイが少し前かがみであっても身長はかなりの差である。
机についていた手をリーバーの両肩に乗せ、顔をクイッと近づけた。
「駄目だよ?隠し事は〜」
語尾にハートが付きそうな勢いの甘え声。リーバーは必死に顔が近いコムイから顔をそらしていた。
その顔には長時間スポーツをしていた様に汗が流れていた。
「ナンノ事デスカー?」
片言だよ。めちゃくちゃ片言だよ、リーバー君。とコムイはクスッと笑った。
リーバーはコムイが笑った事に気付き、ムッとしながらコムイの顔を見た。
「んな事よりも、仕事をしてください!!」
「え〜。リーバー君の隠してる、あんな事やこんな事が知りたぁ〜い」
さすがのリーバーもカチン☆となったのだろう、利き手である左手がワナワナと握り締められていた。
これはヤバイ、と察したコムイはリーバーから手を離して「冗談だよぉ」と言うがリーバーの顔がもはや鬼と化していた。
リーバーがコムイの胸倉を掴んだ時、扉が開けられた。
そこに立っていたのはキャラメル色の髪を持つ男性、マービンが立って居た。
「マービン!」
「マービン先輩やっと来たんスか!」
「おいおい、なぁーんか色々と大変な事になってねぇか?」
マービンは溜息混じりの紫煙を吐く。キャラメル色の無精ひげに目元を隠すほど伸ばす前髪を見れば、かなり頼りないマービンだ。
だけど実際はあのリーバーの言う事をきかせる程の大物だ。イコール、誰よりも今の状況を止める事の出来る可能性が高い人物である。
リーバーは(マービンが現れたからかどうかは分らないが)コムイの胸倉を離した。
そして今までコムイの胸倉を締めていた手でコムイの白い団服を小さく握り締めた。
「リーバー君?」
急の変わりようにピックリしたコムイは目を見開きリーバーを見つめる。リーバーの頬や耳が赤い。
リーバーはプイッと顔を逸らした、と思ったら今度は体ごと扉へ向ける。
「付いて来てください」
リーバーはそう言うと裾を握ったまま走り出した。コムイは慌てて裾を握られてない方の右手をリーバーの手の上に重ねた。
さすがに裾を小さく掴むのがキツかったのだろう、リーバーは裾を離して変わりに右手を握り締めた。
マービンが後ろから早歩きでコムイ達を追っていた。
コムイは頭の片隅で思った。
何処に行くのだろうか?と。
リーバーのブツブツと何か言っていた。「これは仕方ない事だ。別に俺は自分からこんな事をしようとか言ってないんスからね。頼まれて引き受けただけなんだ」と。
それにコムイは首を傾げた。だが疑問を口にしなかった。なんとなくこれは『良い事』だろうと思ったからだ。
なんとなくだがあえて理由にするとしたら、あの仕事の鬼であるリーバーがこんなにも表情豊にコムイの手を引っ張ているから、だろう。
リーバーが引っ張る先は食堂だった。
扉の前で止まり、リーバーは扉の端に避けた。
「入ってくださいよ。皆が待っていますよ」
リーバーはぶっきら棒にそう言った。だがその頬や耳はまだ赤い。それの矛盾についコムイはクスクスと笑った。
コムイは食堂の取っ手を握り締める。だがまだ開けずにリーバーの方へ笑みを浮かべながら。
「有難う。最高の誕生日になるよ」
リーバーの豆鉄砲を食らった鳩の様な顔を他所に扉を開けた。
いつもと違う、君。
いつもと違う、日々。
「本当にアンタって人は・・・」
久々に誕生日で浮かれたんだ。
君がいるからね。
コムイが扉を開ければ黒の教団の皆が笑顔で迎えてくれた。
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@言い訳@
別ジャンルで『カップじゃないと話を書くのがキツイ』って学習した筈なのに、同じ事の繰り返しですorzしかも最初これはこれで一つの話が出来ましたよね!馬鹿だ・・・しかも大半をあそこに費やしてしまったorz設定的には室長なり立てのコムイさんとリーバー先輩の時です。
改めてコムイさん誕生日おめでとう!!そして文才がなくでごめんよ!!(殴)
では色々とスイマセン。失礼します。平成22年6月26日
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