この男、ふすま(と言う名の鉄製の扉)からかいまみたり。
この男、スパナと申すに
γはさっきから怪しい視線を感じていた。
正体は知っている。否、むしろ見てしまっている。だからわざわざ椅子を扉と逆の方に向けたのだ。
それでも3分経って・・・γは覚悟を決めた。
立ち上がり、扉へと向かう。見た目からでも分る金属の扉で少し木製の扉よりも重みを感じる程度の扉だ。少し隙間が出来ていれば勝手に閉じる、っという画期的な扉である。
その扉は今、少し隙間が出来ていた。そこから男がγを見上げていた。カナリヤの髪の毛、前髪の右側はクルリンと丸まっていた。目は半開きで、氷の様に色素が薄い瞳。口には細い飴の棒を銜えていた。
γは扉を勢い良く扉を引けば、扉に寄りかかっていた男は前へと転んだ。
「何をしている?スパナ」
男、スパナはγのド低い質問にすぐには答えず、ゆっくりと体を起こした。そしてつなぎについた埃を払ってから改めてγの方を見上げる。
「かいまみていた」
「は?」
かいま・・・何?元から深く刻まれた眉間のしわがより一層刻まれた。
「なんだ?その・・・かいまみたって?」
「早い話、昔のジャポーネで『覗き見る』って事だ」
「あーなるほどなー」とγはつい納得してしまった。
だがフッと『そこが問題じゃない』と思い出す。
「何で覗き見していたんだ?」
「・・・さっきからγは質問ばかりだな」
「お前は質問をしないと応えないからだろ!」
「γに報告する程の事はしてない」
「してるんだよ!」
『覗き見る』と言う世にも恐ろしい事を!γにとってスパナは未知なる生物であった。何をどうすればどの反応が返ってくるか、まったく予想がつかないのだ。
スパナは飴をカリカリと歯で少し削った後に答えた。
「ジャポーネの昔話であったんだ。『この男かいまみてけり』って」
「・・・ん?みて・・・けり?」
「つまり『この男は覗き見をしていた』と言う事だ」
なんでいうストーカー的な・・・どんな昔話だよ・・・γはハァーと溜息を吐いた。
「・・・なんか誤解してるみたいだから付けだす。昔の日本は女性が部屋から滅多に外に出なくて、男性が女性の所に来ていたらしい。だから覗き見ないとどんな女性かどうか分らなかったんだ」
「・・・へぇーそうなのか・・・」
女性が閉じ篭りねぇー。
「って、だからって何でお前がかいまみてるんだよ!!」
話によれば色々と変な事が多い。まず今時そんな文化は日本にはないだろう。寧ろあったら政府の人が『はい、廃止』と言うに決まっている。
更にγは女性ではなく男性である。誰もが間違える事がない程に男である。
スパナは声を荒げるγを瞬き一つせずに見つめていたが、その問いに首ところか体ごと右へと傾けた(視線はγに向けたまま)。
そして数秒後体は真っ直ぐになった、と思ったら今度はスパナから目線をずらした。
「まぁ・・・ノリ?」
「何のノリだよ!!」
γは勢いよくスパナの両肩に手を置く。理由が可笑しい。明らかに可笑しい!!
「・・・それに他の人にやっていたら、γは怒っていただろ?」
「・・・?」
γは一瞬分らないと言った感じで眉を顰めた。
たが不意にその意味がパッと分った。
――――それってまさか――――
「恋人だから、か?」
γはつい顔を真っ赤にして聞いてしまった。スパナもかなり恥かしいのだろう、γの言葉を聞いてポッと頬を赤らめさせて頷いた。
ついそんな可愛らしさにγは衝動的にスパナを抱きしめた。もはやγの頭の中にさっきまでの怒りはない。
「愛くるしい奴!」
γは抱きしめながら頭を撫でた。そうすればスパナは気持ち良さそうに目を細めた。
(γは恋人理由にすれば全て許されるから好きだ)
と実は小悪魔なスパナなど気付かずにγはスパナを抱きしめ続けた。
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@言い訳@
久しぶりの話なのに、何が書きたいか分らないくでスイマセン!古典の授業で『伊勢物語』をやって『かいまみたけり』と言う文があったので『スパナさんだなー』と思って書きました!見事に失敗しましたorz
では色々とスイマセン。失礼します。平成22年7月11日
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