光が差している。


 酷く眩しくて。


 光背の様な光に導かれて、


 俺は、


 お前の薄く開いた口に――――キスをした。



時よ戻れ!


 リーバーは大きく目を見開いていた。それを見て俺も目を見開いた。

 だってそうだろ?さっきまでリーバーは普通に机に突っ伏して眠っていたんだからさ。

 まぁリーバーが目を見開くのも分るけど・・・なんだって俺は――――


「ティキなんで・・・」


 リーバーは更に言葉を続けようと口を開くが、それ以上言葉は出てこない様子。変わりに頬や耳に紅みが出てくる。

 本当に、なぁ。俺だって本当はリーバーの様に慌ててさ『何でだろう!』と言いたいよ。

 なんだって俺自身なんであんな事をしたか分らねぇんだからな。

 俺はニコッと笑みを浮かべた。


「別に良いだろ?男同士なんだからさ」


 女だと色々と問題だろうな。特にリーバーみたいな真面目ちゃんは駄目だ。たとえ冗談半分で手の甲にキスをしただけでも泣き叫ぶだろうな。

 リーバーの頬や耳が更に紅みをさす。おいおい・・・まさか・・・


「もしかしてファーストキスだったり?」


 俺は笑い混じりにそう言った。リーバーはそれを聞いてまた目を見開いた。

 本当だったのかよ。

 そう思った時、視界にリーバーが消えた。その後頬に痛みを感じて俺は頬を押さえた。

 叩かれた?思考が遅れてそう思った。俺は眉間にしわを寄せリーバーを見ようとした。


「コッチを見るな!」


 荒げた声が聞こえた。あーそうですか。見ちゃ駄目なんですか。

 って、俺がそれで『はいそうですか』っと言って見ないとでも?俺はニヤッと笑いながらリーバーを見る。


 後悔した。


 リーバーは右腕で目元を隠していた。隠しているのは目だけで、その下の頬が濡れている事に気付く。


 あぁ、俺は馬鹿だ。



 リーバーは俺の幼馴染(おさななじみ)。っというより、ある意味家族。

 俺は小さい頃から孤児だった。リーバーは最初家族がいたけど、離婚に虐待・・・そんな感じで孤児になった。

 リーバーはいつも強がりで・・・優しくて・・・真っ直ぐで・・・俺の大ッ嫌いなタイプ・・・だったんだけどなー。

 歯車がピッタリはまる様に居心地が良いんだ。

 だから俺は(もうとっくに幼馴染とは言えない年齢で会ったけど)一番の幼馴染だと思っている。


 ただの幼馴染。


 タダノ



 心の臓が痛む。

 俺は馬鹿だ。とにかく馬鹿だ。

 リーバーと会って、笑顔を俺だけに見せてくれた時に決めたじゃねぇかよ。


『守る』って。


 なのに・・・俺は馬鹿だ。

 でも何をすれば良い?全然思いつかねぇ。


「リーバー・・・」


 俺は取り合えずリーバーの名前を言えば、キッと睨みつけられた。目の周りは濡れているし・・・。

 あぁ!もう!俺はガシガシと頭を掻く。


「悪かったよ!お前のファーストキスを奪っちまって!」

「ファーストキスがどうとかじゃぁねぇよ!」


 え?ファーストキスどかじゃねぇの?

 じゃぁ何で泣いているんだ?

 リーバーはさっきまで目元を隠していた手で俺の胸くらを掴んだ。そして涙で濡れた顔をクイッと近づける。



「好きな奴に気がないのにキスをされた事が嫌だったんだよ!!」



 リーバーはそう言うと俺の口に強引に口を重ねた。

 そしてそのまま胸くらを掴んでいた手を離し、教室を出た。


 俺は後ろにある扉を見れなかった。ボーッとリーバーがさっきまでいた席を見つめる。その後に青い空が映り出している窓を見る。

 変わらない空。なのに、その窓の前にいたリーバーはもういない。

 ゆっくりと己の口に人差し指と中指で触れる。

 少し熱く感じたけど・・・多分気のせいだ。でもそう感じて仕方なかった。


『好きな奴に気がないのにキスをされた事が嫌だったんだよ!!』


 そう言っていたリーバーは俺とキスをした。



『好きな奴に気がないのにキスを――――』


 それってつまり・・・



『好きな奴に―――』



 俺は掌で目元を隠した。

 誰もいない教室の中、俺はきっと顔が真っ赤だろう。

 きっと俺は今、体温が50度はあるんじゃねぇ?って程に顔が熱い。


『好きな――――』


 そうか。


「俺、リーバーの事好きだからキスしたんだ」


 声に出したら一層そう思えて仕方なかった。


 “愛しているから”


 時を巻き戻しにしてそう言いたいけど叶えられない。

 ただ俺は窓の前で突っ立ている事しか出来なかった。

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@言い訳@
 学園パロ、ティキリバ未満です!これを書いてて気付いたのが、やっぱし視点小説が最強って事ですね!それか今日が調子良かっただけか・・・まぁ調子よくでこのどうしようもない小説ですが。なんか悲しい感じで終わってますが、二人して両思いですからね。結果ハッピーエンドです。ただ今はイジイジと続いたら良いなーっと(殴)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成22年8月5日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様