頭が可笑しくなったかもしれん。


 お前と向き合うだけで心の臓が壊れそうな程に鳴るんぜよ。


 苦しいのを知っているのに俺は毎回向き合う。


 可笑しいんじゃろか?



恋い慕う



 仁王は今日、真田の家へお泊りをしていた。

 付き合う前は『真田と一晩泊まればストレスで死んでしまう』っと2割冗談8割本気で言っていた。

 だが今は別の意味でドキドキだった。

 真田らしく和風の部屋だった。白い障子に懐かしい香がする畳。昔の小説家が使ってそうな背の低い机。奥には文字だけの掛け軸が掛かっている。とにかく無駄のない、悪く言えば何もない部屋だった。

 そんな部屋に二つの真っ白な布団が並んでいた。


「・・・本当に泊まるんじゃの・・・」


 仁王は改めてそう思い生唾を飲んだ。

 几帳面に並んだ布団。すぐ横に机があるからだろう、ピタッと布団と布団の間がくっついている。

 こんなに意識をしてしまうとは・・・だが正直な話仁王は『泊まる』と言う事だけでもかなり意識はしていた。

 遊び人ぽいと言われても仁王はまだ中学生。好きな相手に意識はする。

 特に恋人の家に行くと言うシチュエーション。例え家族がいたとしてもドキドキハラハラ☆は感じてしまう。


「泊まるに決まっているだろう。何の為にお前は来たのだ?」


 真田が溜息混じりにそう言う。

 今まで『部活に恋沙汰は無用!』とかなんとか言っていた事もあって、真田はこういう感情を持ち合わせてない様だ。

 まぁそこはこれからジックリと仕込むとして・・・仁王は改めて白い布団を見る。


「お前はどっちに寝るぜよ?」

「俺はどっちでもかまわん」

「じゃぁ一つの布団で二人で寝るぜよ」

「な!?た、たるんどるぞ!仁王!」


 予想通りの反応に仁王は笑いまじに「冗談に決まってるじゃろ?」と言えば真田は顔を真っ赤にしながらそっぽを向く。


「じゃぁ俺は右側にするわ」

「分った」


 仁王がそう言うと真田はすぐに左側の布団に移動をする。それに仁王は眉を顰める。


もう・・寝るのか?」

「『もう』とはなんだ?俺にとってさっきから眠くて仕方ないのだ」

「年寄り並じゃな」

「なっ!年寄りを馬鹿にするんじゃないぞ!」

「はいはい」


 仁王は肩を竦めてから仕方なく布団の中に入った。続けて真田も電気を消してから布団の中に入る。

 暗く目が慣れるまで仁王は真田の方に顔だけ向く。


「何ニヤけているのだ?」


 少しずつ目がなれてきた時に真田がそう言う。

 真田は仁王の方に体を横に向けていた。それに仁王は自然にニヤけてしまったのだ。


「いやー真田が俺の方を向いてるのが可愛いなーと思ってのぅ」


 あの強情の真田がまさか仁王の方を向くとは・・・きっとコレこそがツンデレのデレの部分なのだろう。仁王はそう思った。

 真田は視線だけ横へとずらした。


「仕方ないだろ?右腕を下にする時コッチ向かないとイケナイのだから」

「・・・右腕?」


 仁王はつい眉を顰める。だが真田は不審に思われたと思ったらしく早口に言い訳じみだ感じに言った。


「戦国時代では利き手を下にするのが常識だったらしくてな!なんでも敵が来た時に利き手を守る為とかなんとかでな」


 『戦国時代』と言う単語に一瞬仁王は思考停止をした。そして『敵』と言う単語で頭がフル回転をした。

 必死に頭の中でそのフル回転を抑えながらワンテンポ遅れたツッコミを入れる。


「いやいや敵って誰?!」

「む・・・別におらんが・・・」

「だったら――――」

「おらんが、同じ刀を扱うモノとして行いたいのだ」


 その言葉を聞いて真田が旧家の・・・しかも剣道の道場を持つ家の子だと思い出す。もしかしたら真田は戦国武将の子孫かもしれない。

 その血がそうさせたのか・・・。

だから『今は珍しいカミナリオヤジ』みたいな感じになったのだな、と仁王はとこか納得した。



――――しかし・・・利き手が下か・・・



 昔は大変だったんだなーと半ば思った時、フッとある事を思いついた。


――――利き手じゃな


 仁王はくるりと真田の方へ体を横にした。予期しなかったからだろう、真田の体がピクッと震えた。


「何で向き合うのだ!」

「だって俺は左利きだからのう」


 仁王は「ククッ」と笑いながら言う。それに真田がカアアァァアァァと頬を赤く染め上げた。


「ば、馬鹿者が!別にお前まで真似する事はなかろう!」

「馬鹿だと言った方が馬鹿ぜよ」


 仁王はそう言うと足を真田の体に絡める。次に右手を真田の背に触れ、体を真田にくっつける。


「それに、こうしていれば利き手じゃない手も敵に襲われないぜよ」


 仁王がそう言えば、少し下にいる真田が睨みつけてくる。


 漆黒の瞳が。


 今になって心の臓が壊れそうな程に鳴り響く。


 苦しい・・・。


――――やっぱし真田を好きになってから俺は可笑しくなったんじゃろうな。


「馬鹿者が」


 真田はそう言うと利き手ではない、左手を仁王の背に回した。その事によってより二人が密着する形になった。

 己の心の臓の音じゃない、別の激しい音が聞こえてきた。


「守られるのは性に合わん」


 そう言うと真田は目を瞑って「もう寝るぞ」と仁王の胸に額を付けそう言った。

 ドックンと己の心臓が高鳴ったのを感じた。


――――これだと俺の鼓動が激しいのが分るじゃろうに


 だけどその体を離せなかった。


 苦しい・・・鼓動が五月蝿い・・・


 でも、心地が良い。



 やっぱし変じゃな。


 でも、


 仁王は真田の背に回す手に力を込めた。


――――真田も同じなら、それでえぇか


 仁王はそう思い目を瞑った。次第に互いの鼓動を子守唄に眠った。

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@言い訳@
 戦国ゲーム(実際はアニメ)にハマって漁った情報の中で『寝る時は利き手を下にした』と言う話を聞いて『昔の人はスゲーな、しびれないのかな?』と思いました(殴)その後戦国ゲームの好きなキャラが左利きだと知って『これは向かい合わせになるのでは?!』と思った後にこのネタは使えないかと思ったら、いました。
 戦国ネタが使えて尚且つ左利きと右利きの二人になるカップが!!仁真ですよね!(殴:前フリ長い!)そんでもって仁王さんの言葉使い分りません☆(ド殴)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成22年8月31日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様