誕生日。今日は誕生日。


 誰のかって?


 勿論俺のじゃないぜ?


 誕生日なのは、俺の大切な大切な恋人のリーバーさ♪


 金も学力もねぇけど、誕生日の日くらいリーバーの笑顔が見てぇ。


 だから今日はいっばいいっばいリーバーを喜ばす事を決めた。


 覚悟しろよー・・・リーバー。



【Birthday of Reever Tiky Version】



ティキは朝から機嫌よく、リーバーの横を付いて歩いていた。

 いつもならリーバーが先に学校に行き、ティキが遅刻当然に登校してくるのだが、何故か今日ティキはリーバーが起きて少し経ってから起きた。

 勿論ティキはリーバーよりも早く起きたかったのだが・・・でもリーバーは驚いていた。

『今日は早いな』とリーバーが苦笑いを浮かべながら言った。『まぁたまには、な』とティキは曖昧に答えた。それにリーバーが『今日は槍が降るな』と言ってきやがった。ティキはちょっと頭にきて『槍が降るんじゃなく、リーバーの足が開く日じゃないのか?』と言ったらリーバーは顔を紅く染めて『お前はこの言葉の意味が分かってないようだな・・・俺は結構開いているっての(ボソボソ)』『え?何?』『別になんでもねぇよ!』とリーバーは一気にコーヒーを煽った。ティキはつい首を傾げたが、欠伸をしたらその話題を忘れた。

 そんなこんなでティキはリーバーと並びながら歩いている。っと言っても、ティキはただ単に『リーバーを喜ばせたい』と思っているだけで具体的にどうするか決めていなかった。

 ティキはリーバーを見る。何か喜ばせる事はなか、と・・・。

 フッとリーバーの左手に持つスクールバックが目に入る。紺色でキーホルダー一つない寂しいスクールバックである。

 それを見た瞬間にティキの頭の上でピカーン☆と幻の電球が光った。

 ティキはニヤッと笑って、リーバーの手からスクールバックを奪い取る。


「あっ」


 リーバーが目を見開き、少し前にいるティキを睨む。ティキは嬉しそうに目を細めながら取ったスクールバックを掲げた。


「俺が学校まで持っていてや――――!」

「泥棒ッ!!!」

「・・・ぇ?」


 どろぼう?ドロボウ?泥棒?!


 ティキは慌てて手を左右に振った。だがリーバーは容赦なくティキの顔面を殴った。




 とある国のイケメンサッカー選手に似ていると言われた顔が、今は腫れていた。

 それを見てクラスメイトであるラビが頬杖をつきながら「大丈夫さー?」と声をかける。


「大丈夫に見えるか?」

「あはは、見えないさー」

「笑い事じゃねぇよ。リーバーも何で人の話を聞かないのかねー。これがかの有名な『危険!十代!』かぁ?!」

「いや、リーバーは正しい反応したさー。っていうか、ティキと一緒に同居しているのにリーバーが家出をしないのが不思議で仕方ないって」

「それどういう意味?」

「そのまんまの意味」


 ラビはニコッと笑みを浮かべながらそう言った。さすがに馬鹿なティキでもラビの嫌味に気付き、フンとソッポを向く。

 その先には大人しく読書をするリーバーの姿があった。


「リーバーっていつも本読んでるねー・・・そんなに読書が好きなのかねぇ?」

「まぁ趣味ではないだろうけど・・・本は好きな方だと思うさ。さすがにリーバーも学校内で銃乱発はしないだろうしな」


 ラビは自分の冗談に自分で笑った。だがティキはその冗談を聞いていなかった。


――――リーバーは本が好き・・・本が好き・・・本が好き!!


 ティキはカタッと立ち上がった。そして教室をもうスピードで出ていた。ラビはワンテンポ遅く廊下を見て「ティキ!?」と叫んだ。勿論、当の本人は届かない。




「リーバー!」


 明るく、ムカつく声が上かふってくる。リーバーは舌打ちを一つしてから顔を上げた。顔をあげて・・・・リーバーは目を丸く見開いた。

 今日朝から泥棒行為を行なったティキの頭があろう場所に、本があった。どうやらティキが大量に本を持っているらしく、軽くティキの頭の上を越えていた。


「どうしたんだ?その本は・・・」

「リーバーが本好きだって聞いたからさ、俺が図書室から借りてきた!」


 ティキは自慢気に言う。それにリーバーは「はぁ〜」と長い溜息を吐いた。リーバーはビシッと廊下の方へ人差し指を指す。


「返してきなさい」

「えぇ?!せっかく借りてきたのに!」

「誰も頼んでいないし、そんな大量な本を渡されても困る!俺の青春を全部本に捧げろと?!」


 人よりも早く本を読み終わるリーバーとはいえ、その量はどう考えても学校生活を送る間に読める量ではない。


「えーでも、そろそろ授業始まるし・・・それに返却入れに入らないよー」

「知るか。その塔を崩されたくなければさっさと返せ!」


 ティキは仕方なく図書館へと本を返しに行った。無論、授業に遅れた。




 2時間目の体育。今日は最初から最後まで校庭をグルグル走るという、過酷な授業だ。

 何週目かに先に行ったリーバーがティキに近づく。つまり一週遅れだ。


「あー熱い疲れたー、なぁリーバー」

「仕方ないだろ?授業なんだから・・・まぁ正直喉は渇いたけどな」


 ティキはリーバーの最後の言葉を聞き逃さなかった。


「喉が?」

「あぁ・・・水分補給とかないかねー」


 リーバーは笑い混じりに言う。有り得ないのを知ってるからだろう。体育の先生、ソカロ先生に『水分補給』以前に『休憩』という文字などない。


「まぁありえないけどなー――――って、ティキ?」


 リーバーがティキがいた横を向けば、ティキの姿はなかった。前を見ても、後ろを見て見当たらない。それも当然だ。ティキは横にずれ、水道へと向かったのだから。

 ティキは水道に行く。薄茶色のスベスベした石に一般的の蛇口が5つ付いている。

 それを見てティキは迷いなく蛇口と石の連結部分にチョップを食らわせた。

 ティキの力は意外に強い・・・と言うよりもほどんと愛の力で蛇口の連結部分を破壊した。

 そこから水が溢れ出た。ティキはそれを満足気に見て、残りの4つも同様に壊してきた。

 異変に気付いた生徒が立ち止り、ティキの方を見ていた。リーバーも例外ではなかった。

 ティキは『良い仕事をした』という様に額の汗を手の甲で拭い、リーバーの方へと手を大きく振った。


「これで遠くでも水飲めるぞー」


 実際に飲めるのはドラックの外側ギリギリくらいだろう。それにまったく気付いていない。

 リーバーは人差し指でティキを指す。少し青ざめていて、何か言っているが、生憎リーバーがいるのはティキがいるトラックの反対側であった。

 ティキは『何?』と聞き返そうとした時だった。ティキの上に影がフッと生まれた。

 ティキは顔を引き攣らせながら後ろへゆっくりと振り向く。


「わ〜る〜い〜こ〜は〜いねぇか!!!」

「ぎゃぁぁぁ!!!」




「荷物を持ったら泥棒扱いされて殴られ、本を大量に借りたら返せと言われ、水道を壊したからソカロ先生に叱られ・・・お前、本当に馬鹿だな」


 目の前にいるマービンは頬杖をつきながら真顔で言った。本来なら笑いながら言うのだが、今回は笑えなかったらしい。

 ティキはムスッとしながら鯉の姿焼きに齧り付く。マービンとはクラスが違うが、昼休み時間ではティキのクラスに行きティキと一緒に食べている。そんでもって今がその昼休みである。

 マービンは溜息を吐く。


「本当に馬鹿だな。馬鹿だとは思っていたけどそこまで馬鹿とは思わなかった。馬鹿だ。ウルトラを100回つけても足りない程に馬鹿だな」

「うるせぇよ!どんだけ馬鹿馬鹿言うんだよ!」


 ティキはもはや最初からの馬鹿評定を気にしていなかった。

 マービンは溜息をもう一度吐いてから「いいか?」と言いながら、顔をティキの方へズイと近づける。


「お前が馬鹿を考えてリーバーが喜ぶ訳ねぇだろ?」

「あぁ?だったら何をしたら喜ぶんだよ?」


 ティキが不機嫌に聞けば、マービンは椅子に深く座りって腕組をする。


「『おめでとう』って言うだけでもリーバーは喜ぶぞ?まぁ変な行動よりは効果的だろう」

「そんなのつまらないだろ!」

「だったら前もって計画してろよ」

「うっ・・・それは・・・」

「まぁ良い・・・後は料理を作るとか?」

「料理ねぇー・・・」


 ティキは己が持っている鯉の丸焼きを見る。それにつられてマービンも鯉の丸焼きを見る。


「無理だな」

「無理だねー」

「まぁリーバーの事だから、お前から誕生日おめでとうって言ってくれるだけで喜びそうだけどなー」

「あのツンデレ100%人間が?」

「・・・何度も言うけど、リーバーがツンとするのはお前だけだからな」


 「それって俺が特別って事だよな!」とティキは目を輝かせながら言えばマービンは「まぁある意味は」と口を濁しながら言った。

 多分その特別の80%は殺意だろうけどな・・・それをマービンはあえて口にしない。


「他に何か出来ないかな・・・」

「・・・だったらさ、俺なんかよりもリーバーと一緒に昼を食えば良かったんじゃねぇか?」

「え?」


 リーバーは基本一人で食べている。もっと言えば食べながら本を読んでいる。だからティキと食べていても邪魔になるだけなのだ。


「それと、帰りを一緒にするとか」

「はぁ?そんなの特別じゃねぇじゃん!」

「特別だよ。ティキはすぐに学校出て遊び回るからそんなにリーバーと帰らないだろ?」

「・・・確かに」

「今日は大人しくリーバーと一緒にいたら?勿論、余計な事はせずに」


 「余計な事じゃない!」と頬を膨らませながら反論してみるが「はいはい」とすぐに流されてしまう。


――――でも、確かにマービンの言葉も一理ある・・・。


 朝からティキはリーバーと会わない。昼も違う。夜もすぐに遊びに行って、帰ってくるのは早くで午後8時。帰らない日もある。

 そう考えたらリーバーとまともに話している時間は、かなり短い。


「まぁたまには二人水入らずでデートでもしてきたら良いだろ?」


 マービンはようやくいつものヘラヘラな笑い顔を作った。


「まぁそうかもな」

「だったら早速リーバーの所へ行って来い!」

「・・・はぁ?何を?」

「決まってるだろ?『誕生日おめでとう。今日はデートしようぜ』ってな」


 マービンの言葉を聞いてティキはつい顔を紅くしながら「そんな初々しい事言えるか!」と叫ぶ。それにマービンは冷静に「その反応こそが既に初々しいだろ」とツッコミを入れた。

 ティキが言い返そうと口を開くが、何を言って良いか分からず口をバクバクさせるだけだった。それを見て痺れを切らしたのかマービンが「おい、リーバー!」とリーバーに呼びかけた。

 リーバーはレモンソーダーを飲みながらマービンの方を向く。


「ティキが言いたい事があるってよ!」

「ばっ!何を・・・」

「良いじゃん!てかぶっちゃけた話、ノロケ話に少し苛ついてきてなー」


 見える。今ならマービンの額あたりに見えない青筋が、ティキには見える。

 リーバーがティキに近づく。


「何?まさかまだ泥棒とかじゃないだろうな?」

「違う!てか泥棒じゃないって!」

「ふーん・・・まぁそれは置いといで・・・何んだ?」


 リーバーが首を傾げながら聞く。可愛いんだよ、ちくしょー!


「リーバー・・・」

「何?」

「今日何の日か知っているか?」

「俺の誕生日だろ?」

「知ってたのかよ」

「お前の変な行動で気付いた」

「『変な行動』言うな!」

「はいはい。で?何?」


 マービンは心の中で(馬鹿カップルなのか、長年連れ添った少し冷め気味の夫婦なのか良く分らないな)と思った。

 ティキはリーバーを見上げた。


「誕生日おめでとう」


 ティキがそう言って、リーバーは無表情のまま五秒経過する。ティキは怖くなってリーバーを見つめた。その時リーバーが噴出し笑いをする。


「今更だなー」

「笑うなよ」

「ごめんごめん・・・有難うな」

「・・・別に」


 ティキは照れ隠しにそっぽを向く。そうすればマービンと目が合う。マービンは右手を口の前に持っていき、前後に動かした。『早く言え』のチェスチャーらしい。


「それだけか?」


 リーバーが聞いてくる。早く言わなければ・・・。


「なぁリーバー・・・」

「ん?」

「今日、さ・・・一緒に・・・帰らねぇ?」


 かなり言葉が空いてしまった。それでも言えた。言えただけでティキは何処か満足感を得た。

 さぁ次はリーバーのターンだ!まさか断る事はないだろう。


「あ、ごめん」


 っと思っていたのに、まさかの否定?!


「今日はラビ達が俺の誕生日祝ってくれるらしくて、ソッチに行くんだ」

「はぁ!?なんだよそれ!」

「でも明日なら空いている」

「・・・でも明日だとリーバーの誕生日じゃないだろ?」

「別に良いよ。過ぎたって」


 リーバーは珍しく笑みを浮かべてそう言う。どうやら今日は少し機嫌が良いらしい。


「じゃぁ明日の放課後!他に予定を入れるなよ?」

「それはコッチの台詞だ。明日は先に出るなよ」

「当たり前だろ!」


 ティキが子供の様に笑えば、リーバーと一緒に子供の様に笑った。


 こうしてお世話がせな一日が終った。




 そして次の日の放課後・・・


「お前はな・・・予定を入れるなって言っただろ?!」

「仕方ないだろ!反省文って何を書けば良いか分らないんだからさ!」


 ティキの水道破壊の反省文で放課後は潰れたとさ☆

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@言い訳@
 リーバー誕生日おめでとう!一ヶ月以上も遅れているよ第2弾です!(ド殴)本当にスイマセン・・・しかも誕生日関係ない・・・これを書いていて、絶対にティキさんとリーバーさんの口調が違うなーと思いながらも書いてました・・・実際にどんな口調だったのか・・・本当にスイマセン。
 改めてリーバー班長誕生日おめでとう!では色々とスイマセン。失礼します。平成22年10月16日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様