憎しみ。


 その単語が脳裏に浮ぶ時がある。


 その単語は感情に溶けて表情に、言葉に表れ出るのだ。


 っと、難しく言ってみたけど早い話しが・・・


「大佐、覚悟良いスか?」

「すまないと言っているだろ!」


 っと言う事だ。めでたしめでたし・・・ってなれば良いんだけど、今日はどうもムリぽい。



【Collar】



「それで大佐が鍵をなくして外せなくなった、そういう事ですね?」

「めちゃくちゃその通りッス」


 状況をいつもの様に冷静な声で言うリザ・ホークアイ中尉に、情けなく頭をうな垂れながら返事をする俺、ジャン・ハボック。

 何故、皆からポジティブだと言われている(俺はそんな気はないけど)俺がこうもうな垂れているかと言えば・・・原因は俺の首に嵌っているこの、首輪だ。

 紅い皮で作られていて、横一列に金属の円錐が飛び出ているという、無駄にゴッツイ一品だ・・・しかもご丁寧に正面に短い鎖付ときたものだ。

 これは典型的な凶暴な大型犬の首輪だ。いや、まぁ・・・人が首輪をつけるって事自体可笑しいのだが・・・。

 この首輪は俺の隣で椅子に縛り付けられている大佐が、無理矢理つけたものだ。しかもご丁寧に首輪は小さな錠付きで外せない。

 そんでもってその鍵をこの無能がなくしてしまった訳だ。

 中尉は俺の肩に手を置き、哀れみが入った笑みを浮かべながら慰めてくれる。


「大丈夫よ、ハボック少尉。必ず私達が見つけるから」

「本当スかぁ?」

「えぇ。・・・このままでは表に出れないでしょうから、見つけるまで此処で仕事をしてね」

「えー仕事するんスかー」


 カチャッ音が頭上から聞こえてきた。ヤバイ・・・

 俺は慌てて両手を上げて勢いよく左右に振った。


「冗談スよ!冗談!」


 あははっと無理矢理に笑う。だって笑わないと本気で撃つでしょう!?絶対撃つ!断言できる・・・中尉は撃つ!

 中尉は握っていた銃を下ろし「私達も早く見つける様にするから」と言って部屋を出て行った。

 その瞬間に気が抜け、椅子の背もたれに寄りかかり溢れ出る汗を拭いた。

 中尉は基本優しいがたまに怖い・・・その怖さが半端ないから困るのだ。

 俺が落ち着きを取り戻しかけた時に隣から「クククッ」と抑えた笑いが聞こえてきた。それに俺はムスッとしながら隣を見る。

 漆黒の髪と瞳を持つイケメンの無能が笑っていた。


「誰のせいでこうなったと思ってるんスか」

「いやすまないな・・・でも似合っているぞ?」

「蹴飛ばしますよ?」

「上司に対してそんな事をするのか?」

「大抵そんな事を言う上司は、最後に部下のクーデターでやれるんですけどね」


 公私混同する上司とか・・・いわば貧困の時に税金で贅沢していた王妃の様な感じで。

 でもまぁ、この上司はやる時はやる人だからな。だから中尉も俺も付いて来ている。


「でも、だからって許す気はないですけどねー」

「何がだ―――痛い痛い・・・こら、やめんか!」


 足に蹴っています☆

 しかしこのままだと仕事も進まないし・・・仕方なく縄を解く事にした。

 大佐は結ばれた手首を擦る。


「冗談抜きに似合っていると思うぞ」

「それは嫌味スか?」

「いや、本気だ。お前は猫だと思い込んでいる大型犬だと思っているからな」


 猫だと思い込んでいる大型犬って・・・もはや溜息を吐くしかなかった。

 別に俺、猫だと思った事ないし。一歩引いて、犬なら分る。軍にいる限り俺達はどんなに否定しても『軍の狗』だから。

 っと、シリアスモードはそれくらいにして。


「何スか?その猫だと思い込んでいる大型犬って。俺は猫だと思った事ないスよ?」

「私はお前を見ていて毎回『猫の様だな』と思っている」

「それは大佐が思っている事じゃないんスか?」

「そんな事を言ったら『猫だと思い込んでいる大型犬』自体そうなるだろう」


 そこそもそんな大型犬いるのか?俺は基本ボケ役が多い分、たまに来る大佐のボケ役に酷く疲れる。

 首輪と首の間に指を入れてみる。少し緩く、指の第一関節なら入る。それを無理矢理前に引っ張るが、首の後ろが痛むだけで取れる気配がない。


「無駄だ。それは馬が引っ張っても切れる事がない程の品物だ」

「何でそんなモノを俺につけたんスか?『猫だと思い込んでいる大型犬』意外でお答えぐださいませ」


 怒りマークを大量につけながら俺は言う。きっとくだらない事だろう。絶対そうだ。

 大佐はんーと唸りながら視線を上に向ける。だがすぐに笑みを浮かべ俺に視線を戻す。最初から答えは用意していたのだろう。

 その反応にムッとしていると、大佐は首輪についていた短い鎖を引っ張って引き寄せる。

 ニヤつく大佐の顔が目の前にある。



「こうして離さない様にする為だ」



 その答えに唖然とした。

 離さない様にって・・・そう心中で呟いた時に呆れがやってきた。それを感じたのか大佐がククッと笑った。


「そう言ったら、どうする?」

「とりあえず『バカですか』と言いますね」

「そうか」


 大佐はそう呟けば手をパッと離す。今の大佐の気持ちが気持ち悪い程に分かった。きっとこれは本気だったのだろう。

 もしもこれが大佐にベタ惚れの女だったら『ぎゃー!!ロイ様カッコいい!!』とか言うのだろう。

 だけど俺は違う。男で、一応付き合っていてそれなりに愛しく思っても女みたく感情的にはならない。

 ただ平然としていて、それで――――


 恐怖と言う単語が脳裏に浮んだ。


 あぁ、そうか。普通じゃないから。俺達。

 だからどーでも良い所で本気になって、何処かで狂い出すんだ。

 怖くて・・・怖いから首輪をさせて、逃げ出さない様にして・・・その気持ちを知っている俺も恐ろしい内に入るだろう。

 俺は短い鎖を掌に乗っけて見る。鈍く光る金属。ただそれだけだった。ゆっくりと握ればツンと冷たさが伝わったが、すぐに温かくなる。


 あぁ、さっきよりも憎しみの字が大きくなっている・・・


 信頼されていない。それが酷く嫌だった。

 鎖を握る手から大佐の方へ視線を移す。大佐は背を向けている。それが余計に煽る。

 勢いよく息を吸った。



「わん!」



 俺の声に大佐は後ろを振り向いた。その顔には思った以上に驚きがあった。

 良い気分だ。だからもう一度鳴いた。


「わん!」

「どうしたんだ?」

「大佐が犬になって欲しいと言ったので鳴いてみました」


 そうぶっきら棒に言うともう一度鳴く。何度も何度も。

 どんなに縛っても俺は俺・・・そう言うと思いで?


「首輪をしたら犬になるんスよ、俺」


 だから残念。信用せずに束縛したら、違うモノに大変身してしまうんスよ。

 驚き顔で固まっていた大佐は「ククッあははっ」と笑い出した。腹を抱えて。そうなると予測していてもついムスッとしてしまう。


「そうだな!どんだけ頑丈な首輪をしてもお前は逃げるだろうしな!」

「まぁそうスね」

「お前の場合、逃げてもすぐに戻ってきそうだ」

「ちょっ!それバカにしてません?」


 顔を熱くしながら叫べば大佐は「すまんすまん」と言いながら俺に近づく。そして俺の首の後ろへ手を伸ばした。

 カチャッという解除される音とともに首輪が一気に緩まった。それを大佐が取った・・・って、え?


「もしかして鍵・・・」

「持っていたぞ。面白いからなくしたフリをしていた」

「はぁ?!」


 面白いって、アンタは・・・中尉に縛られて銃をつきつけられて・・・そんな事をされて『面白い』のか?もしそうなら大佐はどんだM野郎ですぜぃ。無能錬金術師M!・・・なんかかっこいいから却下。

 俺は反論しようと口を開いた瞬間、鳥肌が全身を走った。


「鍵を持っていたのですか」

「あぁ、勿論だ!私がなくわけが・・・え?」


 大佐はゆっくりと後ろを振り向いた。そこに立って居たのはカナリヤ色の美しい髪を持つ女性、ホークアイ中尉が銃の安全装置を外している所であった。

 大佐もさっき俺が感じた異常の鳥肌を浮かべ、両手を左右に振る。


「違うのだ!中尉!これには深ーい理由が・・・」

「言い訳無用ですよ!大佐!」


 そう言って大佐の額に銃がつきつけられる。これって・・・もしかして・・・嫌な予感は当たり、その銃から弾が発砲される。勿論大佐は避けている。

 そしてその後ろにいた俺の方へ弾が行く。勿論俺は発砲される前に横にずれた為助かった。

 うわー、壁に穴が・・・大佐が冷や汗をかきながら俺の横に来て・・・って!


「ちょっ、大佐くっつかないでくださいよ!俺にも被害が!」

「うるさいぞ!旅は道つれ世は情けと言うだろ!」

「意味合いが違うんスよ!あれは助け合いは大切だと言う、すんぱらしい言葉なんスよ!道連れの単語しか合ってないじゃないスか!」

「知るか!」

「知れ!」

「大佐、許されると思わないでください」

「きゃぁぁ!!!」


 今俺、憎しみと恐怖の文字で脳裏がいっぱいなんスけど、責任とってくださいよ!大佐!

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@言い訳@
 久々に小説を書いて・・・どうしようもなく文才のなさに落ち込みますorzそして相変わらずの何の話?!ですよ・・・本当にスイマセン。もはやキャラが全然違いますね。
 では色々とスイマセン。失礼します。平成22年12月11日



背景画像提供者:Abundant Shine 裕様