ジャポーネは奥が深い。


 知れば知るほど未知に近づいていくのを感じる。


 そして今日、また一つ未知に近づいた。


【Last one】



 常日頃から意味の分らない奴とは思っていた。人であり恋人でもある俺がロボットのモスカに負けているという点もそうだし、何より人をさり気無く実験体に使う所とか・・・。

 一種のマッドサイエンティストだ。

まぁ、それを知っていて近づく俺もかなりの意味の分らない奴になる訳だが・・・。

 何故そんな事を語っているのか、というと・・・事の始まりは一時間前になる。

 まだ朝になったばかりである6時に電話が鳴ったのだ。相手は言っていたマッドサイエンティストのスパナだ。

 大抵電話の呼び出しは『実験』を意味している。それ以外は電話をしてこないし、こっちがかけても出ない。

 そして今回の電話内容は・・・。


『今日一緒に朝食を取るから来て』


 という『誘い』ではない『強制』の言葉だった。とりあえず『強制かよ』とツッコミを入れた。まず最初にふに落ちなかった事を最初に言っておく。

 だが俺がスパナの扱いに慣れているって事は、スパナも俺の扱いに慣れているという事で・・・。


『誘ってもγはこない』

『お前が毎回変な事をするからだろ?』

『・・・変な事をするのはγの方だ』

『〜っ・・・あぁ!そうだよ!俺だよ!ってその『変な事』じゃねぇよ!』

『ウチは変な事をしない』

『お前は気付いていないだろうけどな『命に関わる変な事』をしているんだぜ?』

『あぁ、そっちの『変な事』か』

『自覚があるのかよ』

『それじゃぁ作業部屋にいるから』

『いや、待て――――』


 ツーツー・・・。


 その時俺は思ったね。スパナ程恐ろしい奴はいないって。




 そんなこんなで今、スパナが指定した作業部屋にいる。

 相変わらずの広い部屋はモスカ3体で埋まっている。

 床も何かのコートやら部品やら設計図やらで埋まっている。なんとか踏まない様にスパナのいる和室へ向かった。

 和室はさすがに部品が一つもなかった。γはあぐらをかき座った。昔は『正座』と注意されたが、今は諦めてくれている。有り難い有り難い。

 スパナは俺を確認すると茶碗にご飯をよそり始めた。机の上には秋刀魚の焼いた奴と納豆がそれぞれ二人分ある。机の真ん中に白菜の漬物置いてあった。きっと共有おかずだろう。

 これは・・・本当にただの食事会?いやいや、中に怪しいモノが・・・いや、スパナはあくまで機械学だ。化け学やそこらへんには確か興味がない筈。

 俺はスパナから茶碗を貰うのと同時に訊いてみた。


「ごはんの中にネジを入れたりしていないだろうな?」

「ウチは食べ物を粗末にしない。それがジャポーネの考えてあり、ウチの考えてもある」


・・・いや、俺も少しはそう思うぞ?

そう思いながら疑い深く日本人並に上達した箸さばきでご飯を掘ってみたが、どんだけ掘っても白いご飯だけだった。




 結局その後何もなく二人だけの食事会は進んでいった。っと言ってもただ静かに飯を食ってるだけだけどな。

 なんだ、本当にただの朝食か・・・そう思いながら最後の白菜の漬物に手を伸ばす―――


「駄目だ」


 スパナが声を出す。声を荒げる、ではないが沈黙の中でも充分な音量だった為箸をつい止めた。

 俺は不服そうにスパナを見た。


「何でだよ?」

「ジャポーネの風習だ」


 あぁ、今日はそういう流れか・・・密かに納得してしまった。

 スパナの実験には大きく分けて3つある。一つはロボット関係。二つは生産した食べ物の試食関係。最後の一つがジャポーネの風習体験関係だ。

 とうやら今日は一番最後らしい。


「ジャポーネの風習って・・・確かジャポネーゼは無駄を嫌い米粒一粒まで残さないんだろ?なんで今回は一つ残すんだ?」

「それこそジャポネーゼの不思議な所だ。大人数の食事の時必ずと言っても良い程に一つだけ何かが残る。それをジャポネーゼは遠慮して食べないんだ」


 あーあー、なる程ね・・・そういう事なのか・・・確かにジャポネーゼは自分勝手を酷く嫌う所がある。俺なら『食いたいから』という理由で最後の一つとか関係なく食うけどな。

 本当にジャポネーゼはめんどくさい。

 俺は箸の先で白菜をさす。その行為に俺が言う前にスパナは「箸で料理をさしちゃ駄目」と注意した。

 仕方なく箸をおき、指の間をくっつけ丁寧に料理をさす。そして改めてスパナに言った。


「で?この最後の一つはどうする訳?」

「そこまで考えていなかった」


 一言そう言われた。まぁ予測はしていたのだが・・・。

 だがすぐにスパナが箸を置き、人差し指と中指を立てた。


「二つ、選択肢がある」

「ほぉー」


 選択肢ねー。きっとさっき思いついたのだろう。まぁ場合によっては食える訳だし聞こうか。


「一つはγが出て行ってからウチが食べる」

「一人になったから平然と食えるって事か」


 なんちゅー適当な理論。


「二つはウチがγに食べさせる事」

「・・・はぁ?!」


 タベサセルって・・・何故その展開?!ヤバイ、年甲斐なく顔が熱い・・・。

 スパナは慌てる俺が分らないという様に首をかしげている。この宇宙人が・・・。


「だって新婚の夫婦は二人いるにも関わらず食事が残らない。それはつまり食べさせているからだろ」


 あぁ、そういうりろ・・・


「って誰と誰が夫婦だって?!」

「別に夫婦に視点をおいていない。『二人で食事をしていても食べ物が残らない』という事を視点にしている」


 あーそうですかー。

 ちょっとショックを受けながら必死に激しい鼓動を抑えようとする。

 まさかスパナから夫婦の単語が出るとはな・・・その前に夫婦という意味を知っているのか?


「で?どうする?するか?」

「・・・いや」


 そう言って俺は箸を手に取る。

 なんか悔しかった。なんかスパナに踊らされている気がして。

 だから俺は箸で残り一つの白菜の漬物を掴んだ。


「だから俺がお前に食べさせてやる」


 スパナはそれを聞いて白い肌を紅く染める。

 俺のささやかな反撃の開始だ。


「γは変わった人だ」

「世界一お前に言われたかねぇよ」


 そう言いながら白菜の漬物をスパナに近づける。細かくいえばこれも『指し箸』とかでマナー違反になるのだろうが・・・まぁ夫婦がやってるんだ。マナー違反じゃないだろう。

 スパナは観念した様に俺の箸から起用に白菜の漬物を口で挟みとった。それを口の中に入れ食べる。


「どうおいしい?」

「同じ白菜の漬物だから変わらない」

「だろうな」


 つい笑ってしまう。ヤバイ、スパナが可愛い・・・。


「なんかふにおちないから、次はγに食べさせる」

「はいはい、喜んで」


 今日の実験関係は、ちょっと幸せだった。


@後日談@


 ジャポネーゼの入江と一緒に食事を(何故か)していたのだが、入り江は普通に最後の一つを食べた。

 入江曰く


『親しい間では基本そんな事しないよ』


 らしい。

 もはやジャポネーゼのルールは意味が分らない。

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@言い訳@
 γさんは基本的にジャポーネが苦手設定ですね・・・何故これを書こうとしたかは謎ですが、確かある番組で外国人が疑問に思っている事にこれがあったと思います。不思議なんでしょうね。そしてキャラ崩壊orz(ド殴)
 では色々とスイマセン。失礼します。平成22年12月11日



背景画像提供者:Abundant Shine 裕様