なぁジャン。
一週間後、何があるか知っているか?
そう嬉しそうに訊いてきたのはアンタだ。
なのに・・・。
Valentine Roy Havoc
今日は朝から落ち着かなかった。それは今日が一年に一度のバレンタインデーだからだ。
別に『チョコを貰えるかどうか』ではない!・・・まぁ貰えるなら貰いたいけど・・・てか欲しいけど・・・うん。
と、とにかく!今日そわそわしているのは―――俺自身が(何故か流され流されなってしまった)恋人である(ナルシストの域を超えた)ロイ・マスタング大佐に(今日と言う日を五月蝿く訊いてくるから)チョコをあげるからだ!
だけどバレンタインと言えば・・・
『スイマセン〜』
『なんだね?』
『あ、あの!これ・・・わ、私が作って来たチョコケーキです!』
『君が?』
『はい・・・』
『有難う』
『いえ!』
『後もう一つ欲しいモノがあるのだが・・・』
『な、なんですか?』
『君をキブ ミー』
『ああんvV』
と言う感じだろう!!!そして男と女が抱き合い、周りは拍手!それがバレンタインと言うモノだ!(※バレンタインデーでそんな事が起きるのは馬鹿カップルだけです。皆さんはそんな変な期待をせず渡してください☆)
とにかく男と女がああんvVとなる日なんだ(※決してそんな日ではありません)!なのに、男である俺が男である大佐にチョコをやる・・・。
付き合ってるけど、やっぱし違和感がある。まぁ俺はあくまで、あ・く・ま・で!大佐が『欲しい欲しい』言うから持ってきたんだ!
だから別に手作りにしたのは『愛を大量にV』と言う訳じゃないぞ!!売ってるチョコが板チョコしかなくで、それじゃあの大佐が不満を言うだろうなーと思って仕方なくケーキを作っただけだ。
仕方なく、だ。『仕・方・な・く』だ!!!
「ハボック、さっきから顔が怖いぞ?」
「そ、そうか?」
「あぁ。それに顔が赤いしな」
マジか・・・。同僚であるブレタに言われて改めて体中が熱い事に気付いた。これは全部大佐のせいだな☆
だがブレタは俺の今日の緊張理由など知らないからかなり心配しているようで、俺の顔を覗きこんでくる。
だけど俺、自分で思っている以上に今テンション高いかもしれん・・・。
「ははっ☆別に何でもあらへんでー」
「何故に関西弁?てか本気で大丈夫か?色んな意味で」
「大丈夫やー平気のよっちゃんなべやで〜」
「ハボック?!い、今すぐ廊下に出て頭を冷ました方が良いぞ!中尉には俺から言っておいてやるから!」
それはかなり嬉しい。確かに今熱すぎて、てか緊張しすぎてテンションがマックスに高い・・・このままだと完璧に頭が可笑しい人だしな。
俺は親愛なる☆ブレタに「有難う」と微笑み返した。それにブレタは「気持ち悪いからさっさと行け!」と叫ぶ。
俺はブレタの愛情を真に受け廊下に出たのであった。ジャンジャン♪ジャンだけにとか言わない!
二月の廊下は程よく冷たく頭が冷えて行く。そして我に返ってくる。そうなれば『馬鹿だったなー』と自己嫌悪が・・・。
何があははっだよ!あれで本気で怒らないブレタは偉い。うん。
「〜〜〜〜さ」
フッと女性の声が聞こえた。あぁ、今日はバレンタインだなーと思うとまた急に顔が熱くなった。あーぁ、俺にもチョコくれないかなー。そう思って通り過ぎようとした。
「有難う」
え?
その声を聞くまでは。
聞こえてきた独特な低い声を俺は知っている。ロイ・マスタング大佐だ。
俺は壁に身を隠し、ソッと覗き見た。
やっぱしそうだ・・・。壁の向こう、女性と大佐が向かい合わせにいる。しかもかなりの笑顔だ。
なんだよ・・・特に大佐。かなりの美人な女性の手にはピンクの箱がある。その箱が大佐に差し出される。それを大佐は笑顔で受け取っていて・・・。
馬鹿らしい。
最初にそんな言葉が脳裏に浮んだ。その次に『何に?』と『仕方ない』と言う言葉が浮んだ。その次が『チョコなんで用意して』と『俺は男なんだから』と『嘘だ』と・・・とにかく思考が自分でも驚く程多く出た。
けど多く出た思考が俺の頭を異様に熱くして・・・それらを全部爆発させて『此処から出ろ』そんな奥に埋もれた命令が脳内に響き渡った。
俺は弾けた様にその場から走って離れた。二人の顔を見ないように・・・。
頭を冷やす為に来たのに、結果的に頭がクチャクチャになった様に熱くなっただけだった。
あ、でも、あの馬鹿なテンションはもうないか・・・ははっ、まぁ結果オーライかな。
「ハボック?」
でもまたブレタが心配そうに俺の顔を覗き込む。多分俺の顔は今、赤いんじゃなくで青くなっているんだろうなー。
本当に馬鹿だ。
あんなにチョコチョコ言っていたのに、あれは俺の気を引こうとかそうじゃなくで・・・本当に馬鹿だ。
説明が出来ない。俺は流されて大佐の恋人になった。でも、例え流されたと言っても俺は大佐の『恋人』なんだ。
ただのセックスフレンドならともかく、恋人だぞ?そんなの・・・。
「ブレタ・・・」
「何だ?」
俺は親指の先を勢い良く下に向けた。
「あのクソ大佐をぶっ殺す術を俺に教えてくれ」
わざと笑顔のまま。
ブレタは眉を顰め「はぁ?」とマヌケに聞き返す。
「だって大佐がチョコを大量に貰ってるんだぜ?俺だってチョコ欲しいしー」
「大佐は仕方ないだろ」
「冷たい〜」
「でも確かに、俺達にもお零れでも欲しいよなー」
「そうだよなー」と言って笑った。
笑いながら鞄の端をキュッと握った。
本当に馬鹿らしい。
こんなに頑張ってさ。
今日は一日平和で定時には帰れる。正直早くこの部屋から出たかった。なんだって大佐が居る場所にはいたくないから。
本当に馬鹿だなーと思う。いや、馬鹿なんだろうな。
けど今日はバレンタインだし、大佐の荷物(主にチョコ)があるから今日は車だろう。って事は俺が運転する事になるだろう。
案の定車の手配を頼まれた。俺は定時前に軍から車を手配し、乗り込んだ。そして毎回の様にハンドルに手を置き、毎回の様に入口へと向かう。
そー言えば、毎年そうだったよなー。
毎年大佐の両手には紙袋があって、それじゃ足りないのか中尉が一つ紙袋を抱きかかえている。
それが毎年羨ましくていつも冷やかしていた。今年も例外じゃなかった、それだけの事だったんだなー。
大佐は後ろの席に荷物を置き、助手席に座った。これだけが去年と違う。
「出してくれ」
俺は黙ったまま車を出した。
馬鹿だな。
「どうした?ハボック」
大佐の声に俺はわざと笑みを浮かべて、でも声は不機嫌に「別にー」と答えた。それに大佐は怪訝な顔で俺を見る。まぁ当然だな。
俺はわざと声を張って言った。
「今年も貰ったんじゃないスか?」
その言葉に大佐は一瞬目を開いたが、すぐに笑みを浮かべた。それが一瞬で目を開いたのが本当かどうか分らないくらいだ。
ロイは背もたれに寄りかかり「そうだな」と言った。
「でも貰っていない」
「何言ってるんスか?充分いっばい貰ってるじゃないスか」
「本命から貰っていない」
大佐はそう言うと俺の方に顔を向けた。
何なんだよ、それ・・・。俺はムッとして人通りの少ない脇道にハンドルを切る。そして急ブレーキ☆全く準備してなかった大佐は大ダメージの様だ。ざまーみろ。
俺はそう思いながら大佐の方を向く。大佐は鼻をぶったのか、鼻を押さえていた。血は出ていない様子。
「何をする?」
「本命から貰いたかったら、他にチョコを貰わないでくださいよ」
俺は女みたく、自己主張が出来ない立場なんですから。そうも言おうとしたがやめた。
きっと分らないだろう。
男が男にチョコを渡す?そんな事、普通に出来ると思っているのか?きっと大佐なら『出来る』と思っているだろう。でも俺は違う。
俺は残念ながらアンタが思ってるほど起用で堂々としてないんスよ。
大佐はフッと笑った。何で笑える?余計に眉間の皺が深くなる。このままだと渋い漢になってしまう。そう思っても、戻す事が出来ない。
「何が可笑しいんスか?」
「・・・いや、そうだよな、と思ってな・・・分った」
そう言うと大佐は体を捻り、後ろの席にあるチョコの入った袋を掴み、前へと持って行く。
何?此処で食べようぜ☆会か?ふざけやがって―――――
違った。
大佐は窓を開けると、外へと袋を捨てた。恐らく女性から貰った(寧ろ男から受け取らないだろう)チョコを、目撃した美人の女性から貰っただろうチョコも、全部全部窓の外に捨てたのだ。
大佐はさも当然の様に俺の方を向き、ニッと笑った。
「これで良いかな?」
「・・・アンタ馬鹿スか?」
そんな事をしてまで貰いたいのか?俺のはただ安いチョコを入れた庶民的なケーキだぞ?いや、もはやケーキとは言えず、パンケーキに近いかもしれない・・・。
そんなチョコを選ぶのか?
「俺の不味いスよ?」
「別に構わん。私は味よりも愛を望むタイプだ」
「寧ろ勿体無いスね」
「・・・お前は意味が分らんな。チョコを受け取るな、とか言ったかと思えば今度は、チョコが勿体無いっと言う」
「あ、あれは!」
馬鹿なのは、俺なのか?俺が捨てろと言ったから・・・否、待てよ・・・
「俺『捨てろ』とは言ってませんよ!俺は『受け取るな』と言ったんスよ?」
「そう言うのは初めに言わないと困る・・・正直な話、今日は迷ったのだ」
「捨てるかどうか?」
「違う。受け取るか受け取らないか、だ」
つい目を見開いてしまった。まさか大佐がそんな事を考えているとは・・・。
「受け取れば、お前がチョコを食べるだろ?お前は甘い物が好きだからな。だから受け取った」
「・・・はぁ?!それって結局俺の為スか?!」
受け止めたのも、俺が食べるから。
捨てたのも、俺が言ったから。
って、何処の馬鹿カップルだ!?ヤバイ、顔が熱いのが感じる・・・なんつー恥かしい事をする人だ・・・俺はつい前を向き、改めてハンドルを握る。
「すみません、私情を挟んでしまい・・・今車を出します――――」
「いい」
ハンドルを握る手の上から大佐の手が握られる・・・ヤバイ、軽く酸素不足で頭がくらくらする・・・。
俺は大佐の手を払い車をバックさせる。道路に戻ってからチラと大佐の方を向けば、明らかに不服そうな大佐の顔があった。
いや、不服されてもなー。俺が困る!
「まだチョコを貰ってないのだが?」
「っ!・・・よ、夜に渡しますよ」
「・・・そうか。楽しみにしているぞ」
大佐はそう言ってご機嫌に前を向く。それを見て俺は首を傾げた。
正直、何で急にご機嫌になったのか意味が分らなかった。不機嫌のままだと思ったからだ。
この時に気付きゃ良かった。過去の俺に出会えるなら、叫びたい。
逃げてー!!!って。
終始不快なバレンタインだった。
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@言い訳@
途中まで去年の書いた小説です(ド殴:おい!)だから最初と最後のテンションが違います。最初は読んでて『スゲー!』と思う程テンション高いですね・・・最後カタ落ち・・・スイマセン。後、昔の自分にもごめん。
では色々とスイマセン。失礼します。平成23年2月16日
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