赤い糸を結ぼう。
離れていても、ずっと結び続けようよ。
馬鹿だな、呆れながらも参加をしている。
本当に求めているのは自分自身なのだから。
赤い糸
「これでよし!」
若き室長はそう言うと満足そうに頷いた。改めて小指を見る。そこには赤いインクで何重にも線が書かれていた。
青年、リーバー・ウェンハムは色々とあって今は若き室長のコムイと付き合っている。付き合っていると言っても、日は浅いしリーバー自身『付き合う』が漠然すぎて未だに自覚がなかった。
でも20も満たない経験でも『これは違うだろう』という事は分った。そもそも糸じゃないし。
青年は若き室長を見上げる。
「何馬鹿げた事しているんスか?」
「うわ、早速ご厳しい一言・・・」
そりゃ言いたくなりますよ・・・リーバーは溜息を吐く。コムイの小指にも赤いインクで何重にも輪が刻まれている。
コムイはニコニコ笑いながらリーバーの小指を手に取り、己の小指とくっつける。赤いインクと赤いインクはそれ以上交わる事なく、ただくっついているだけだ。
「本当は赤い糸で結びたいんだけどね、それだと邪魔でしょ?」
「当たり前です」
働いている場所も違うし、仮に近くても邪魔だ。しかも利き手の左指に糸をつけられたら、始終引っ張られて仕事の邪魔になる。
まだ十代だが『仕事の鬼』と言われているリーバーにとって実効する前から阻止するだろう。
「だからこれで邪魔になるないでしょ?」
「・・・まぁそうスけど・・・でもこれって赤い糸スかね?」
「まぁ良いんじゃない?本来見えないもんだしさ」
「だったらやらなくても良かったのでは?」
「駄目だよーそんなロマンチックじゃない事言っちゃー。こういうのは雰囲気で楽しむもんなんだよ」
つまり遊び、か・・・リーバーは一つ溜息をついてしまう。馬鹿らしい。何が楽しいのか?
当の本人であるコムイはというと愛しそうに目を細めてリーバーを見つめている。本当に意味の分らない人だ・・・。
そもそもリーバーの事を好きになった事すら『意味が分らない』に入る。・・・まぁ、それを受け止める自分自身も意味が分らない訳だが・・・。
本当に恋心は何をするか分らない。
コムイは小指を離す。
「これで寂しくない。これで僕達は一緒なんだよ」
「はぁ・・・」
「繋がってるからね。愛の証だから」
愛の・・・リーバーはついその単語に顔を赤く染める。それを見てコムイはクスッと笑った。
笑われている事にリーバーはムカッとしたが『自分は大人だ大人だ・・・大人だ!!!』と自分に言い聞かせて一つ咳払いをする。
「用はそれだけですね?もう帰りますよ」
「もう、ロマンも何もないなー・・・最後に」
コムイはリーバーの手を取り、赤い小指に一つキスを零す。リーバーは目を見開き、顔を真っ赤にしてそれをただ見ていた。
顔をあげたコムイの『してやったり』の顔にリーバーの頭の中は沸騰した。
「馬鹿じゃないんスか!!!何やってるんスか!!!」
「何ってキスだよー。これでリーバー君はこの指を見る度に僕の事思い出すでしょ?」
「お、思い出す訳ないでしょ!失礼します!」
リーバーは出て行くが、結局仕事中その小指の赤い糸モドキを見る度に顔が紅く染まってしまう。
こんなの赤い糸じゃない・・・そう言いながらも自然に消えるまで赤い糸はリーバーの小指にあった。
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@言い訳@
何故か若い頃のリーバーさん・・・きっと若い頃のリーバーさんは純粋にツンデレでしょうね・・・ん?これをツンデレと言うのか?(ド殴)そして分り難い・・・何故このネタが浮んだのか謎ですが・・・ほのぼのですかね?(殴:知るか!)
では色々とスイマセン。失礼します。平成23年2月27日
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