綺麗に揃う列。
どの顔も国の為って勇敢溢れた瞳をコッチに向けている。
その中に一つ、殺気の瞳あった。
それは殺気など物騒な事が似あわない、晴天の瞳だった。
A Lain
久々に此処、士官学校の地を踏んだ。ロイ・マスタングはその地の踏み心地の悪さについ苦い顔をしてしまう。
良い思い出といえば、ヒューズと馬鹿をやった事だ。悪い思い出もまぁあるが、別に『やってしまった!』という大きな事件がない。
ただ、此処からイジュヴァール戦の様な大きな紛争に関わる奴が現れると思うと、心が苦しくなるのだ。
ロイは改めて周りを見渡す。視線の少し下に若き軍の小狗達が列を成してロイを見上げていた。
喋る輩などいない。皆が皆生真面目な顔をしている。ロイがそれなりの有名な錬金術師だからかもしれない。
ロイは机に両手をつき体を前に傾け、より一層マイクに近づく。その時、目があった。
前列の丁度真下にいる彼に。山吹色の髪に空色の瞳を持つ、彼に。
ロイは目を細める。彼は他の人とは明らかに違う目をしている。まるで狂犬の様にロイを睨みつけているのだ。下手をすれば首筋に噛み付くかもしれない。
ロイは彼から視線を反らさぬまま言葉を発する。
「諸君は何の為に軍に入った?」
戦争をする為にか?
国家の狗になる為か?
それとも、
「何かを変える為か?」
彼は何も変わらない。ただロイを睨みつけ、見つめている。そんな彼にロイはフッと笑った。それに気付き意外にも彼から視線をずらした。
つまらんな・・・そう思いながらロイは彼から視線を外し、全体を見る。
「私は―――――」
話が終り、上官の話も終り、式が終る。ロイは上から列が崩れていくのを見ていた。
一つ一つ違う固まりで歩んでいる筈なのに、一つの固まりとして入口に向かっている様に見えた。
これも一種の列であろう。酷く不規則だが、この世の理に一番近い気がする。
ロイは多くの生徒の中から彼を探す。意外と見つかり難い。金髪はこの国ではかなり多い。さらに髪型も短くで遠くでは区別が付かない。
んーと見つめていると、後ろから誰かが近づいてくるのが分った。振り向く気はなかったが、用心の為に親指と人差し指を触りいつでも焔を出せる準備をする。
足音はロイの真後ろで止まる。
大きな不規則な列が、出入り口に吸い込まれていく。それをボーと見ながらロイはフッとある事を思った。
もしかしたら、あの列の中に彼はいないのではないか?否、絶対にいない。それは確信へと変わる。
後ろから殺気を感じた。それでも振り向く気はない。それところか戦闘準備をしていた手を下ろす。
そうすれば後ろに立つ人物から殺気が消えていった。ロイはついククと笑ってしまった。
「いないいないと思っていたが、そこにいたか」
「・・・お熱い視線を感じたので気を利かせて参りました」
独特な声質の声がロイの耳を燻る。その声は酷く不機嫌だ。だがそれがなぜか心地よく感じる。ロイは両手を挙げる。
「そうか。私の視線に気付いてくれたか」
「えぇ、もろに気付きました」
彼は数歩でロイの前に立つ。
山吹色の髪。紺碧の瞳。日に焼けて赤みかかった肌。此処から見ていたのと同じだ。
ただ今はあの時みたく殺気がないだけだ。ロイは体を横にずらして彼の背にある出入り口を覗き見る。
「いいのか?皆もう行ってしまったぞ?」
「・・・構いませんよ」
「そうか・・・名前はなんという?」
彼は足を揃え見本の様な敬礼をする。今更だ。
「ジャン・ハボックと申します」
「そうか。ハボック、お前は私に何か恨みでもあるのか?」
「別に大佐個人の恨みはありませんが、錬金術師全体の恨みはあります」
そういうとハボックは敬礼を解き、今まで敬礼していた手で腰にある銃に撫でる様に触る。
ロイは肩を竦める。
「恨みねー」
「錬金術師に大切な人を殺されまして」
「・・・そうか。で?お前は何の為に軍の狗になる?」
ハボックはゆっくりと銃を押さえつけていた紐を解き、そのグリップを握る。だがロイは銃など見ていなかった。ジッとハボックの瞳を見つめていた。
殺気立つその瞳は綺麗な空色に影がかかっていた。今はギラギラと美しい空色が歪んでいる。
銃がゆっくりと取り出され、ロイの漆黒の左目に向けられる。だが引き金を引かれる様子はなかった。
数秒後。ハボックから根を上げる。
「っ!何で何もしないんスか!アンタは今、殺されかけているんスよ!」
荒げる声を聞き終えるとロイはゆっくりと目を瞑る。
切羽が詰まった声だ。きっと彼は誰よりも早くに苦しみ、覚悟を決めていたのだ。
ロイはゆっくりと目を開く。左端で鉄の固まりが震えていた。
「お前も軍の狗になるなら、銃を押し付ける前にセーフティ(安全装置)を外しておけ」
ロイがそう言うと銃が下ろされる。ハボックの肩が揺れる。悲しみとかそんなものじゃない。
「ククッ・・・あはははっ!」
腹を抱えて笑う、その声が脳内に響く。後ろから上官が現れ、銃を手に持つハボックに近づこうとする。それをロイは片手で制した。
次第に笑いは消え、ハボックは改めてロイを見つめる。
綺麗な晴天の瞳で、彼はロイは見つめたのだ。
「大佐みたいな人がいて良かったッス」
「それはどうも」
ハボックは銃をフォルダーに戻し、ロイに一つ敬礼をしてから歩き出す。ロイはそれをただ笑みを浮かべて見ていた。
あの晴天の瞳はきっと彼だから輝いて見えるのだろう。ロイはフッと関係ない事を考えてしまった。
天井を見上げれば、白い蛍光灯がロイの目を痛みつける。それを眩しそうに目を細めれば、自分が演技かかっていた事か思い知らされる。
つい笑ってしまう。彼が欲しい。否、きっと彼自ら来るだろう。
東方支部に数人の新人が入った。
綺麗に一列に並ぶ新人達。ロイはそれを品定めをする様に見る。
その中に彼の姿があった。
列の中で一人、綺麗な晴天の瞳をロイに向けていた。
「まだ会ったな」
「今度はセーフティを外すのを忘れません」
そう言うと彼は綺麗な敬礼をする。それにロイは苦笑いを浮かべた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
@言い訳@
ネタを書いた紙に『a lin 一列に 士官学校の時に会った ロイハボ』と書いてあったんですが、たいぶ前に書いたメモだったので何を思ってそれを書いたのか分かりませんorzだから意味の分らない話に。これ書いている時に『そーいえばうちのハボさん錬金術師嫌いな設定だったなー』と思い出して、そのネタを書いたら・・・(ド殴)
では色々とスイマセン。失礼します。平成23年3月1日
背景画像提供者: