シンデレラ。シンデレラ。あぁシンデレラ。
世界が愛したこの話を、イケメン総ぞろいのテニス部レギュラー陣が演じる!
主演:幸村精市 真田弦一郎 柳蓮二 仁王雅治 柳生比呂士 丸井ブン太 桑原ジャッカル 切原赤也
さぁ皆の王子様の演技を見よう!
【シンデレラ】
真っ暗になった体育館。そこには何百人の客がいた。椅子は用意されたが、数が足りずに多くの客が立っていた。
文化祭などの大きい行事で行われている訳でもないのに、かなり多くの生徒が来たのだ。
演劇部が劇をするのだが、何故か幸村が『俺達もたまに良いじゃない?』と言い出したのだ。勿論皆断れる訳なく、テニス部もする事になったのだ。
それを面白半分に来たのが、他校の、しかもテニス部にとって敵である、氷帝の跡部と青学の手塚であった。
さて、男だけのテニス部がどんな役割をするか・・・ウケ狙いなら真田をシンデレラにするだろう。跡部はこの後始まる劇を想像して笑ってしまった。
ジジジジッと演劇が始まるベルの音が鳴り響く。
ベルの音が消えて数秒後、舞台が照らされる。そこに四人の人物がいる。
柳蓮二 桑原ジャッカル 切原赤也 そして幸村精市である。最初の三人は綺麗なドレスを着て机の周り(机の左右と客の正面)に座っている。
幸村精市はその少し離れた所で立っていた。服は三人よりもボロボロだった。白雪姫と誤解したのか、頭の上に紅いリボンをしている。
そうやら幸村がシンデレラらしい。ウケ狙いではないのだろう。
「俺はシンデレラ。義母と義姉にごき使われております」
幸村の語りに幸村信教者ファンは歓声をあげる。
それを破るかの様に切原が声を上げる。
「シンデレラ!何をしてるんスか!掃除をしなさい!!」
その言葉に幸村は切原を睨みつけながら「あ?」と小さく声を出す。
それに切原はゾゾッと鳥肌がたち、そして小さな声で「どうぞごゆっくり・・・」と言った。やっぱし所詮は素人・・・上下関係が出てしまうって訳か。
勿論台詞にない事もあり柳が「何弱気になっている!」と怒鳴る。幸村も絶句をするが、すぐに演技に戻る。
「俺は、町中から娘を集められて行われる舞踏会に行きたいのです!」
それはシンデレラの話で絶対事項の内容である。そして柳は絶対事項の言葉を発する。
「なりません!貴方の様な小汚い妹など連れて行きません!」
演技・・・演技・・・だが幸村は演技でも『汚い』など言われ、無意識に黒いオーラーを出す。その黒いオーラーに桑原と切原はサッと柳の後ろに身を隠した。
柳は黒いオーラーに負けずに「シンデレラ!貴方は掃除でもしていなさい!」と尚も怒鳴りつける。
台詞が終ったのか、柳は舞台の袖口に体を向けた。
「行きましょう。お姉様、お母様」
どうやら妹役だったらしい。一番母親役が似合いそうだが、若い役らしい。そもそも切原に母親役をさせる時点で年齢的にバラバラな訳だが・・・。
そのまま柳、桑原、切原は舞台袖口へと出て行く。
一人になった幸村は胸辺りの服を握りしめ、悲しげな表情を作る。やっぱしと言うべきか、演技が上手い。ただ、汚された言葉を聞くと感情が操れないらしい。
「あぁ、何で俺は行けないんだ?」
「大丈夫ぜよ、シンデレラ」
柳達が出て行った逆の方向から声がかけられた。そこにはピンクのドレスを着て、星が上についているステッキを持つ仁王が立っていた。
恐らく魔法使いなのだろう。幸村は女優もぴっくりな演技で涙を溢れさせていた。
「この俺がカワイソウなシンデレラを舞踏会に行かせじゃる!」
「魔法使いさん!」
何故か『可愛そう』を片言で言う仁王は星を上につけたステッキを掲げる。
「じゃぁ魔法を使うぜよ!ハビデハゲデブーサナダカワエェーえい!」
仁王はそう言うとステッキを幸村に向けた。
その前になんか『真田かわえぇ』とか聞こえた気が・・・。
先ほど柳達が出て行った方の袖口から丸井が出て来た。彼はもはや何役か分らないが、とにかく時代設定を無視して丸井は制服姿のまま出て来たのだ。
きっと何か重要な役なのだろう・・・
「ちわーッス。ケーキ屋でーす」
ケーキ屋!?あれ?シンデレラってケーキ屋出てきたっけ?出てこないよな?しかも魔法をかけたこのタイミングで?!
丸井は手に持っていたカーテンが360度付いた丸い筒を幸村に被せた。
まさかの生着替えだ。しかも無駄に時間がかかっている。生着替えと熱湯風呂の番組では、絶対に時間切れで哀れな姿が披露されるだろう。
「ちょっと引っ掛かった」
「じゃからそんなごった奴にすんなって言ったぜよ」
少しは尺を考えろよ、と跡部を含む何割の客が思った。だが悲しくもイケメン、多くの客はその生着替えに感激をしていた。あぁ、イケメン。
そうこうして着替え終った。丸井はカーテンをザザッと引いた。
そしてカーテンの向こうにいた幸村は・・・
「まぁ!素敵なドレスだわ!」
いやいや、それドレスじゃなくで、、、和服ですから?!
しかも頭の上にある紅いリボンをそのままにしている。もはやツッコミ所が多すぎて、むしろ此処をもっと有り得ない服装にしてくれればと思った。そうすれば『何故その服を!?』と笑いながらツッコミを入れられるのだから・・・。
幸村は客の方に指を指した。
「俺の王子は舞踏館にあり!!」
そして電気が消えた・・・どうツッコめと。
暗くなった中、舞台の上で準備をしているのか物音と声が聞こえてきた。
「勝手に台詞を変えないでくださいよ!幸村くん!」
「このセット何処スか?」
「真田どう?和服好きでしょう?」
「幸村は本当に元気ぜよ・・・」
「う、うむ。とても似合っているのだ」
「幸村、イチャイチャをするな」
「キャー!!セットが!!」
「ジャッカルだから大丈夫ぜぃ」
「真田vV」
「俺だからって?!」
「このセット何処スか!」
「幸村!弦一郎から離れろ!」
お前等もう、出て行け!!!
どんだけ騒がしいんだ。素人でも此処まで騒がないだろう。
パッとようやく電気がついた。
そこには先ほど出て来た義母と義姉の三人が右側にいて、その目の前に椅子に座った真田が座っていた。青い王子服を着ており、頭の上に王冠がついていた。その隣でスーツ姿の柳生が立って居た。
真田は頬を紅く染めて柳生の方を見つめている。どうやらあの真田が緊張している様だ。見つめられている柳生は眼鏡を上げながらいつもの様に喋る。
「これより王子主催の舞踏会を開催します。王子から一言お願いします」
それを聞くと真田は少し顔を上に上げ、いつものふんぞり顔で、その低音の声を発した。
「うむ。楽しむが良いぞ」
意外にも真田も演技派なのか、それともただの素か、何処か苛つかせる。柳生が小さな声で「演技上手ですよ」と言っているのが聞こえた。
聞こえた瞬間には、柳生は見えなくなっていた。
目の前、つまり真田の顔の所に幸村の飛び蹴り姿が現れたからだ。かなり狙いが良かったのか、ゴツ、という恐ろしい・・・骨が当たった様な音が聞こえた。
そんでもって忘れがちだが、幸村=和服シンデレラだ。シンデレラはそんな事しません!
そのシンデレラは地面に見事着地し、真田に指を指す。
「真田のくせに偉そうなんだよ!!」
いや、真田はいつもの事だし、役柄的に仕方ないだろう。
それ以前に・・・シンデレラ、彼はこれでも王子様だ!
真田は思い切り鼻をやられたのか、ボタボタと出る鼻血を必死に手で押さえていた。隣で「王子様!」と役柄を忘れないまま柳生が近づく。大した役者魂だ。
真田は痛みに耐えながら幸村の方に顔を向ける。
「ゆき・・・お主は誰だ?」
幸村はそれを聞くと何の迷いなく満面の笑みを浮かべてから言った。
「俺は真田の未来の夫になる男、幸村 精市だ」
もはや『シンデレラ』設定を無視している。それと同時に『王子様』と言う言葉の意味が分かっていない。王子様は男だから、シンデレラが夫になる事は出来ない筈だ。
さすがの王子こと真田もその狂言に冷や汗をかき、隣にいる柳生に尋ねる。
「柳生・・・幸村は何を言っているのだ?」
「つまり、王子様にふさわしいのは私だ、と仰っております」
確かにそう言えるかもしれない。ただ学力が足りないだけとか・・・。
幸村はそんな二人の焦りなど気にせずに言葉を続ける。
「夫になったあかつきには、俺の愛のこもった拳をあげるよ」
いやいや、そんな笑顔のまま言われても・・・笑顔のまま言う言葉では決してない。
グッと拳を見せる幸村を見て真田は更に汗を流す。
「全くもってアピールになっておらんぞ?」
「DVですね。まさに家庭内暴力です」
柳生、お前は最高の弁護士とかになれるだろう。こんな時でも冷静のまま分析できるとは・・・。
幸村は最終的のトドメを言う。
「そして毎日真田の尻に俺のP――――を突っ込んでやるぞ!」
もはやシンデレラじゃない。これをシンデレラだと言うなら、今すぐこの会場内は爆破する。否、させる。
さすがの真田と柳生もこの発言には衝撃を受けていた。きっと内心は(言っちゃったよ!呆気なく言っちまったよ!)とか思っているのだろう。
それが普通なんだ・・・会場内で密かに歓声をあげている女子が可笑しいんだ・・・。
誰かフォローをしてくれ・・・。
そんな時立海で頼れる男、柳が真田の目の前に来る。少しほっとした瞬間だった。
柳は真田の前で跪き真っ白なハンカチを真田に差し出す。
「王子様大丈夫ですか?」
「あぁ」
もはや当たり前の様なやり取りが今や新鮮に感じる・・・。
勿論この非当たり前を持って来た幸村は真田に近づく柳が許せないのだろう。柳に指を指す。
「俺の嫁になにするんだよ!」
違う。端から見る他人だが断言しよう、真田は断じてお前の嫁じゃない。
柳が幸村の方を向く。きっとフォローをしてくれる。否、むしろこの劇中止にしてくれ。
「弦一郎の尻の穴を熟知しているのは、俺だ」
一瞬で凍りついた。その一方で一部は烈火の如く盛り上がった。なんだ?この差は・・・これだけで化学反応で体育館吹っ飛ぶのではないか?
真田は顔を真っ赤にしながら「柳・・・お前・・・」と放心状態だ。柳生は「終った・・・」と震えている。
「ちわーッス」
そこに現れた救世主!早く終りにさせてくれ!
そこに現れたのは・・・
「ケーキ屋でーす」
お前かよ!そんなツッコミが出てくる。
丸井だったのだ。だが彼はどうやら本当の救世主だった様で、柳生に生気が戻った。
「実は深夜12時にケーキを食べようと思いまして、ご用意させたのです!」
なるほど。深夜12時といえば、シンデレラの魔法が解けるという絶対的法則がある。
だが幸村は気にせずに「何ケーキ?」と聞いている・・・もしかしたら効かないかもしれない・・・そりゃこれはあくまで劇で、本当に魔法がかかっている訳ではない。
そこにコーンコーンと鐘の音が鳴った。恐らく12時を知らせる音なのだろう。
その時、幸村が来ていた純白の和服に変化があった。まるでアニメやヒーロー番組の様に服が光出したのだ。それに合わせて幸村は慌て始めた。
「ヤバイ!12時だ!12時になったら――――」
嫌な予感が走った。
12時になったら魔法は解けて―――――
「服が消えちゃうんだ!」
光が消えたその場に残ったのは、まさかの幸村の全裸(頭の上のリボンは消えてない)姿だった。頭の上のリボンが今は『変態要素』になっている。
その前に、何故消えたのだ?こんな事ありえるのか?あれなのか?最近外国のファッション界で注目されているプログラムの服(?)だろうか?
確かプログラムで服が変形するとかの・・・って、そんな技術をこんな劇に取り入れるな!
当然ながらすぐに真っ暗になる。そして現実的に放送が鳴る。
【大変お見苦しいところをお見せ致しまして申し訳ございません】
放送事故だ。否、放送事故を通り越してもはや放送事件だろう。否、放送ではないのだが・・・。
「シンデレラ」
真田の声が聞こえてもう一度会場に灯が灯る。まだやるのか・・・。
王子服を来た真田が真ん中に立って居た。その横に柳生もいる。
幸村の飛び切りが相当強かったのだろう、顔の真ん中が赤くなっており、鼻には止まったとはいえ鼻血が溜まっていた。
それでも負けず嫌いの真田だ。話を続ける。
「彼女が残したのはこのガラスの靴だけ」
本当は残してませんが・・・それ以前にガラスの靴履いていなかったが・・・。
「この靴を履けた者を俺の嫁に迎えよう!」
そう言うと真田と柳生は一度舞台端に行く。その逆から柳と桑原と切原、問題の幸村が現れる。
「どうしようお母様!王子様が来たわよ!」
「まぁ」
「王子様・・・」
桑原(義姉)と切原(義母)の会話を聞いて幸村が愛しそうに呟いた。
「私の未来の嫁・・・」
違う。
どっちかといえば『夫』だ。
そこに真田と柳生が現れる。中央に客から真横になる様に椅子が置かれる。
最初にそこに座ったのは柳であった。柳の前で柳生が跪き、ガラスの靴を履かせようとする。だが、つま先の部分で入らない。
「入りません」
それ聞いて早く終らせたいのか、柳は怒りもせず呆気なく桑原と代わる。
柳生は柳と同じ様に桑原にもガラスの靴を履かせるが、ガラスの靴が小さくてかかとが入らなかった。
桑原はそのまま黙って立ち上がる。そして代わる様に嬉々して椅子に座ったのはシンデレラである幸村だった。
此処で一つ争いがありそうだが、皆疲れたのか誰も反論しない。
「シンデレラ・・・」
柳生はそう呟きながらガラスの靴をシンデレラに履かせる。
ガラスの靴を・・・・・
シンデレラに・・・・・
履か・・・・
「・・・入りません」
「何?!」
まさかの入らない設定!いやいや、シンデレラの話は此処ですから。誰もがシンデレラであげるイメージ此処だろう。
『シンデレラで何を浮かべる?』『ガラスの靴』だ。
これではただ王子に跳び蹴りを食らわして『王子の尻は俺のもの』という訳の分らないジャイアンリズムを誓言し、全裸になった変質者ではないか。
柳生が乙女チックな顔で真田の方を向く。それを見て真田は親指を立てた。
あぁ分る・・・彼らのテレパシーが痛いほど伝わってくる・・・。
(ど、どうしましょうか?)
(シンデレラは幸村だ。それは絶対なのだ)
そんなテレパシーが交わされているだろう。
幸村はなんとか履こうと無理矢理ガラスの靴に足を突っ込むが、入る気配がない。
おいおい、まさかこのまま終りにするとか・・・ないような・・・。
その時何を思ったのか、柳生が舞台の真ん中に立ち眼鏡を中指で直してから両手を広げた。
「シンデレラは別にいます!そう、この会場内に!」
サスペンスが起きた様な衝撃が会場内に響いた。
まさか『犯人はこの中にいる!』的に言われるとは・・・跡部はつい隣にいる手塚に話しかけた。
「おいおい、シンデレラが会場内にいるってよ。馬鹿だな、なぁ手塚」
「・・・こういう場合は挙手するべきだろうか?」
「あん?手塚?」
「・・・それとも誰かの推薦の元舞台に上がるのだろうか?」
「・・・」
跡部は真剣そのものの手塚からソッと視線を舞台へと戻す。
「多分これは劇の一部だろうから、本当のシンデレラは向こうで用意しているだろ。うん。間違いねぇ」
寧ろそうしてくれ!!そう叫びたかった。
手塚は真面目な顔のまま跡部から舞台へと視線を戻した。小さく「そうか」と聞こえた気がしたが、跡部はあえて無視をした。
舞台は分裂していた。『シンデレラは別に居る』宣言で幸村は怒り、柳生に技をかけている。
もうシンデレラじゃない・・・何故幸村をシンデレラにしたか、寧ろそれを謎に思う。
そこへ仁王が舞台袖から現れた。
「本当のシンデレラはもう分かっているぜよ」
「本当か!」
まさかの急展開。もういいから、早く終らせてくれ・・・幸村は急の事にうろたえた。
「何を言っているんだい?シンデレラは俺だ。他に誰かもいない筈だよ!」
「それが居たんじゃよ。そのガラスの靴が履ける・・・だった一人の人物が」
「誰なのだ?!」
仁王は「ククッ」と笑い焦らす。焦らしに焦らして、仁王は自分が現れた右袖口に手を向けた。一斉に舞台上の役者、観客が袖口を向く。
「彼なり」
そこに立って居たのは―――――丸井ブン太だった。
「嘘だ・・・だって彼とシンデレラは実際に会っていたではないか」
そりゃ別人だからな。なんやかんや言って、シンデレラ=幸村 は変わらないのだ。
ただガラスの靴が履けないだけだ。
「簡単なトリックぜよ」
「トリックですか?」
「そう・・・トリック、シンデレラ役だった幸村の靴のサイズが分らず、丸井の足のサイズでガラスの靴にしたんだ」
・ ・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・フッ、
それただの凡ミスじゃねぇか!!!!!
シンデレラ本人の靴のサイズを測れば良かったではないか。何故よりによって背の低い丸井に?!
幸村は崩れる様に床に膝をつき、腕も床につけて俯いた。ゆっくりと首を振る。
「違う・・・俺がシンデレラだ。俺がシンデレラなんだ・・・」
「証拠ならある。その輝くガラスの靴ぜよ」
そりゃ、丸井に合わせ造った靴だからな。
幸村は勢いよく床を叩いた。その叩いた音が異様に体育館に響いた。
「違う!俺だ!俺がシンデレラなんだ!!」
「シンデレラ・・・」
「そうじゃな。お前さんはシンデレラだった」
「そうだ!ただガラスの靴が履けなかっただけじゃないか!それなのに、俺の計画が崩れる訳がない・・・時効まで後少しなんだ!こんな事で・・・」
・・・何の時効!?
いや、まぁ、このシンデレラなら何かの犯罪をしていても不思議じゃないが・・・。
幸村がガラスの靴を握り締め、ユラリと立ち上がった。握り締めるガラスの靴の高いかかと先を真田達に向ける。
それを見て舞台上の役者が何故か一斉に慌て始める。その中、一番冷静沈着な柳姉様が声を上げる。
「やめなさい!シンデレラ!」
「うるさい!俺は真田を嫁にする!それが夢だったんだよ!」
だから真田は男――――だが何故か今はそれを気にする隙を与えなかった。
幸村の迫真をせまる演技に身が震えるのを感じたからだ。
いつもの冷たい程沈着している目が、今は荒々しく震えていたからだ。
「舞踏会の日まで俺は考えた!どうやれば真田を嫁に出来るか。どうやれば真田とあんな事やこんな事を出来るか・・・ずっと考えていたんだ!」
真剣な話に聞こえるが、言っている内容はもうメチャクチャだ。寧ろ、下ネタを通り越してR18だ。
ずっと黙っていたブン太が恐る恐る訊く。
「それで今回の事件を起こしたのか?」
「そうだよ!この計画は完璧だった筈だった!上手く真田に近づき、あわよくば嫁に出来た筈だった!」
いや、嫁には出来ないだろう。
幸村はガラスの靴を左から右へと振る。
「それなのに、こんなガラスの靴だけで俺は、俺は、あはははっ!俺はこんなガラスの靴で負けたんだ!惨めなら笑えばいい!」
ガラスの靴がもしも合えば、そうすれば童謡の様に幸せになれたのだろうか?
シンデレラはガラスの靴を握り締めていた右手の上に左手を握る。そして地を蹴り、走り出した。
「笑う前に俺はお前を殺す!」
そのガラスの靴の高いかかとがブン太を目掛けて突っ込む。
ブン太は急な事に目を瞑った。だが痛みがない。それもその筈だ。
体育館が静まり返った。
ガラスの靴の高いかかとはブン太に当たらなかった。だが確実に腹に食らっている。
「・・・何で」
困惑の表情を浮かべ、幸村はヨロヨロと後ろへと下がった。
そうすれば、幸村の目の前にいた男が地に膝をつき咳き込む。
「何で・・・何でだ・・・真田・・・」
そう、ブン太が当たる直前に、真田がブン太の前に現れたのだ。そしてガラスの靴の高いかかとが鳩尾辺りに食らったのだ。
真田は息を整えながら幸村に手を伸ばした。
「幸村・・・」
「何で・・・何でお前はブン太を助けて、それでなんで俺の名を――――ッ!」
真田の手がガラスの靴を未だに握り締める手に触れた。その手をゆっくりと触り、ガラスの靴をなんとか外させる。
ガラスの靴は音を立てて、床に落ち、砕け散った。
「ガラスの靴など関係ない。お前はお前だ」
「真田!」
幸村は真田の胸へと飛び込む。
その時、吉●新喜劇の滑稽な音楽が鳴り、ゆっくりと幕が閉まる。
それを見つめながら跡部は涙を拭い、無表情に静かに涙を流す手塚の方を向く。
「なぁ手塚・・・」
「なんだ?」
「この劇って何がやりたかったんだ?」
最後感動風味にしたかったぽいけど、言ってる事とやってる事は喜劇と呼べるか微妙だが、明らかに『感動』ではない。
なのに、涙が出る・・・これは何だ?
手塚は流れる涙を拭わぬまま赤い幕で閉じられた舞台を見つめた。
「きっとそれは俺たちの心の中にあるのだろう」
「・・・」
手塚・・・・ねぇよ。
こうして立海大テニス部による劇は終わった。
こんな劇をしてテニス部に処分がなかったのは、何かの圧力があったからだと思うが、あんまり考えない事にした。
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@言い訳@
えー・・・スイマセンでした!(ド殴:本当だ!)これはテレパシーで真田と柳生が会話する所までマンガで描いたネタです。だからそれ以降は小説からです。そして最後シリアス(?)に・・・明らかに最後がキャグじゃない方向に行きましたね・・・とりあえず・・・『面白かった!』とか『感動した!』とかは人それぞれで・・・いや、感動はないでしょうが・・・これは感想が聞きたい気も・・・書いている本人だと面白いかどうか分りませんorz
では色々とスイマセン。失礼します。平成23年4月4日
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