笑う君が目の前にいる。



 それだけで幸せだって、何時の間にか忘れてしまうんだ。



It Laughs



 世界の危機の為に、天才な子供達は黒の教団に売られ教育される。

 今は効率が悪いと廃止されたが、確実にその子供達は今も存在している。




 黒の教団科学班フロア。そこに僕、コムイ・リーはいる。科学班は急がしながらも、落ち着いている。それは此処の責任者であるリーバー・ウェンハムのおかげだ。

 僕はそのリーバー君の前で、人差し指で口端を無理矢理あげている。それを見てリーバー君は眉間に皺を寄せ、持っていた資料で僕の頭を叩く。


「痛っ」

「何馬鹿な事をしているんスか?」

「リーバー君を笑わせたかったんだよー」


 いつもリーバー君は眉間に皺を寄せて、笑うとしたら愛想笑いくらいだから。リーバー君はそれを聞くと大げさに溜息を吐いた。


「そんな事をしていないて仕事をしてください。それにこんな事で笑う訳ないでしょ」

「えーそうかな?相手が笑っていると自然に笑わない?」

「んな睨めっこじゃないんだから」

「睨めっこ!ねぇリーバー君、これから僕と睨めっこを――――」

「しません」


 ビシャリと言われて僕は頬を膨らませる。全く、リーバー君はお堅いんだからー。

 僕はリーバー君の書類が多く乗った机に腕をつき、リーバー君の顔により近づいた。


「じゃぁどうやったら笑うのさ?」

「そもそも何で俺を笑わせようとしているんスか?」


 真顔に訊けば、真顔のまま返された。

僕は溜息を吐き身を引き、今度はリーバー君の口端に人差し指を押し付け、無理矢理上げさせた。そすれば当然の様に殴られた。本当に暴力的なんだからー。


「ふざけているなら、仕事をしてくださいよ」

「リーバー君はいつも仕事仕事だね」

「当たり前スよ。何処かの誰かさんが仕事をしないから」

「悪ぅございましたね。何処かの誰かさんで」


 僕はプイと顔を逸らす。


 多分僕は知っている。彼はきっと僕が仕事をしても仕事をし続ける事を。




 黒の教団には昔、頭の良い子供が集められた。その子供達を教団で教育をして一流の科学班班員にした。


 リーバー君もその内の一人だと聞いている。


 資料によれば、個室で勉強を教えていたそうだ。仲間の顔を知らず、そして一定の成績に達しなかった場合は即イノセンスの実験体へと回されたそうだ。

 成績優秀者少なく、三桁の内一桁だけだと言う。しかもその一桁の内今も黒の教団にいるのはリーバー君だけだ。

 僕は覚えている。リーバー君の若い頃を。まだ班長じゃなかった彼は仕事ばかりで、あんまり笑わなかった。

 同年代の子はケラケラと笑っていたのに、リーバー君は誰よりも笑っていなかった。

 いつもムスッと無表情で仕事をしていた。本当に見ていて痛々しかった。




「リーバー君、笑ってよ」


 そう願えば、リーバー君は一瞬目を見開き、バツの悪い様に顔を逸らす。だが数秒後には僕の方を再び向く。

 そして無表情のまま僕の額を指で弾く。僕はその痛みに目を細め、額を押さえた。本当に酷いなー。


「何を言っているんスか。俺は笑う時には笑いますよ」

「じゃぁ笑ってよ」


 僕が口を尖らせながらそう言うとリーバーは大げさに溜息を吐く。


「アンタは馬鹿スか?」

「もう、さっきから馬鹿馬鹿って、酷いよー」


 そりゃ馬鹿な事を言っているだろうけどさー。だからって一応年上で上司の僕に馬鹿馬鹿連発はどうかと思うよ?

 そう思っていた時、リーバー君の口端が上がる。疲れた様に笑う。



「俺は昔と違って、笑いたい時には普通に笑いますよ」



 その疲れた様な笑い、でもそれが異様にリアルに感じた。

 僕はその笑みにつられてフッと笑みを浮かべた。


「そうか」

「そうスよ。誰かさんのおかげと言いましょうか、せいと言いましょうか」

「おかげ、にしといてください」


 僕がバツの笑い笑みを浮かべながら言えばリーバー君は声を上げ笑った。それにつられて僕も笑ってしまった。


 ほら、誰かが笑うと笑っちゃう。


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@言い訳@
 何の話でしょうか(ド殴;こっちが訊きてぇよ!)とりあえずほのぼので楽しい話を書きたいと思ったら、こんな話に・・・カップかどうか分らないけど、まぁカップにしとけ(殴:おい!)きっと、相手が幸せそうだと自分も幸せなんでしょうね。
 では色々とスイマセン。失礼します。平成23年5月22日



背景画像提供者:Abundant Shine 裕様