【忠実なる狗】

 一目ぼれだった。


射撃の演習場で的に集中する彼の横顔。

一筋の汗がゆっくりと額から頬に向かって流れる。

 垂れ目と言う愛嬌のある目なのに、『鋭い』と言う言葉がしっくりと来た。


 彼は銃を発射させる。結果は『中々の腕。』

いや、『結構の腕』とも言える。私は中尉の銃の腕をずっと見ていたからな。


 でも、彼はその結果を見て渋い顔をする。

より完璧を目指しているのだろう。


 私は彼を見ていてフッと思った。


「どうしたんですか?中佐。」

「彼が欲しい。」

「えっ?」


そう彼が欲しい。勿論部下としで。だと自分で思っているだろうと思ったが、どうもシックリと来ない。


 私が思う欲しいは、きっと『彼の全て』だ。


「中佐・・・。一目惚れですか?」

「そうかもしれないな・・。」

「恋愛感情ですか?」


 護衛に付いて来た少尉である、リザ・ホークアイは私の顔を見上げる。

私は少尉の言葉につい驚いてしまう。

 そして、微笑を浮かべながら


「そうかもしれないな。」


 そう呟く。

少尉は「そうですか。」と言うと彼の方を見る。

 此処は士官学校。彼は此処の生徒の一人だろう。

この射撃の演習場は2年から使う事が出来る。1年は使えない。


 でも彼はかなり慣れている。それを見れば3年かそれ以上か。


彼はタマが無くなったのか銃を片付け始めた。

 そして帰ろうとしたのだろう、私の方に向かう。

その時、私の存在に気付いたのだろう私に敬礼をする。


オレンジに近い鮮やかが金色の髪。目は空のように紺碧な青さ。

 背は私より少し大きい。


「君の名は?」


 何となく問いで見た。問いをかけてどうするつもりだろう?と自分で自分に疑問になる。


「ジャン・ハボックであります。此処の士官学校の3年であります。」


 ハキハキとした声で答える。

じゃあ、上手く合格すれば晴れて軍の狗になる訳か。


「合格をして私の部下になれ。待っている。」

「失礼ですが、名は?」

「おっと失礼。ロイ・マスタング。階級は中佐。『焔の錬金術師』と呼ばれる事もある。」


 私がそう言うとハボックは目をカッと開く。

そして少し口が震えている。そしてその口を無理やり開け


「錬金術師ですか?」

「あぁ。その通りだ。」

「・・・俺、錬金術師って嫌いなんですが・・。」


 ハボックは下を向く。その眉間にはしわが寄っていた。

これはかなり嫌いみたいだな。

 私は取り敢えず笑顔で


「何故かね?」


 と問う。

気付けば彼の拳は力強く握られている。


「俺の兄貴が錬金術師に殺されたからです。」


 そう言う。きっと彼が産まれた場所は激しい前線があったのだろう。

それでも私はハボックが欲しい。


「だったら、私に人を殺させないようにお前がその腕で撃て。そして殺させないように計画をしろ。そして実行をしろ。」


 そう言う。

まだ繰り返させたくなかったら自分の手で作り出す。そうしないと、間違いが『正しい』ままで終わる。


「だから私の部下になれ。そして、私の忠実な部下になれ。まぁ、強制はしないけどな。」


 そう言いながら私はハボックの前から去る。


それから半年後。


 彼は形式に私の部下になった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  @良いわけ@
ロイハボ未満。てかロイ+ハボでも良かったな・・・。
 出会い編ですね。そして勝手にハボックに『兄』の存在を加えたり《汗》
いや、それで心を打たれるて・・・本当はお題にしようと思ったんです。
ですが、最初から『アレ?お題出来ねぇよな?』となって結局お題になりませんでした;
 では色々とスイマセン。 失礼します。  (製作:平成19年 7月29日)
更新:平成19年 9月 24日


背景画像提供者:Abundant Shine 裕様