実験は成功する確率が少ない。それでも失敗した薬は何らかの効果を持つ。



 此処は黒の教団の科学班フロア。


 何時ものように目の下に隈を作りながら仕事をする者は、今は居なかった。全員、椅子にチョコンと座る子供に釘付けになっていたのだ。


 子供は明るい茶色髪を上に撫で付け、色素の薄い青い瞳を持っていた。子供は周りの視線にオロオロしながらも、科学班Bごとマービンに渡されたレモンソータをストローでチューチュー飲む。


 それを見て科学班等はニパァと癒された。



「ほらお前等!仕事をしろ!」



 マービンが来るなり周りの科学班は散らかる。マービンは子供に近づき、頭を撫で撫でした。子供は気持ち良さそうに目を細め、マービンの撫で撫でを受ける。


 それを見てマービンの後ろからヒョコッと一人背の高い男性が現れる。漆黒の髪に瞳を持つ、コムイ・リーだった。コムイは子供をまじまじと見て、ニヤニヤする。


 その視線に子供は後ろに身を引いてしまう。それを見てコムイは尚も笑みを浮かばせた。



「本当に可愛いねvVこの可愛い子が本当に仕事の鬼のリーバー君なのかい?」



 コムイはそう言うとリーバーを抱きしめる。そしてリーバーの頭を撫で撫でした。リーバーは急な事のあまり、固まった。それが面白かったのだろう、コムイはクスクスと笑った。



【Flatter】


「実験で塩と砂糖を間違え、身体と精神が子供化した訳だね・・・。」


「・・・はい。てか、何時まで抱きついてるんスか?!」



 コムイは未だにリーバーに抱きついていた。かなり小さな体は長身のコムイの体に隠れる。リーバーは勿論無表情のまま固まっていた。



「良いじゃん♪・・・それより、今日はリーバー君は仕事が出来ない。だから皆で分担して。」



 マービンは、はい、と相打ちをつくと同時に、何時もこんな真剣だと良いんだけどなー。てか、アンタが仕事しないから仕事が溜まるんスよ、と言う正論を心の中に閉じ込めた。



「でも、班長はどうするんスか?」


「んー。リーバー君なら大丈夫じゃない?部屋に戻してさ。」


「でも、今の班長は情緒不安定だと思われます。」



 リーバーは一度も喋らず、黙ったままだった。感情も上手く表せないのか、コムイが抱きついでも嬉しそうな顔どころか、嫌な顔すらしなかった。


 情緒不安定はほっといてはイケナイ。溜まった感情は爆発する。その時の相手が自分自身なら、自分自身を傷つけ、死ぬ事だってあるだろう。


コムイは無表情のリーバーの顔を見つめながら、ん〜、とうねる声を出す。


 リーバーは無表情のまま顔を上げ、コムイの顔を見る。



「それに、婦長に預けたら・・・ね?」



 コムイはマービンのボソッと呟いた言葉にゾゾゾッと鳥肌が立った。婦長に今のリーバーの事がバレたら、なんでいう薬を作ってるのかしら?、と鬼の顔をしながら追い詰めるだろう。それは、恐怖、以外の何者でもなかった。


 それを知らないリーバーは、?、を浮かばせながら首を傾げた。



「わ、分った。マービン、ロブ、ジョニー、タップで交代しながら班長の面倒を見て。」



 勿論仕事もすること!と付き出すと、コムイはリーバーを離し、室長室に戻る。



 マービンは早速ロブとジョニーとタップを使われていない実験室に呼び、さっきまでの経緯を話す。



「取り合えず、2時間交代にしよう。俺とロブ、ジョニーとタップで班長の面倒を見る。最初はジョニーとタップ、頼む。」


「分りました!」


「絶対に班長を笑顔にさせて見せます☆」


「・・・そりゃぁ、頼もしいな。じゃ、頼んだぞ。」



 マービンとロブはそう言うと研究室を出る。3人きりになった部屋。リーバーは泡と書かれたカップに入っているレモンソーダをストローでチューチュー飲んでいた。



「さぁて、どうしようか?」


「ふふっ・・・子供の機嫌を取るなんで簡単だよ、ジョニー。」



 そう言うとタップは何処から出したのか、絵本を取り出す。



「子供は絵本を読んで欲しい、そんなものさ☆」


「なるほど!」



 タップはそう言うとリーバーの前に行き、絵本を開き、読み始める。



「昔々あるところにシンテレラと言う少女が居ました。」



 中略。



「そしてお姐さん等は鳥に目を潰されたとさ☆どうだ?って、あれ?班長?」



 聞き終えた班長の顔は少し青ざめ、微かに震えていた。?マークを浮かび上げるタップの肩にジョニーの手が置かれる。タップはジョニーの方を振り向くと、ジョニーは首を左右に振っていた。



「グロ過ぎるよ。」



 タップが読んだシンデレラは子供用にほのぼのにしたモノではなく、原作そのもののグロい話であった。教育目的では良いかもしれないが・・・まぁ、それだけ。


 怯えるリーバーにあたふたするタップ。そこにジョニーは何処から出したか、トランプを取り出す。



「やっばし子供はゲームでしょ!」


「そうか!」



 ジョニーは嬉しそうにトランプを配った。









「「負けたっ!!!何故だっ!!!」」


「・・・」



 ババ抜きに大富豪にお金などなど。色々なゲームをしたが、リーバーには勝てなかった二人。それでもリーバーは勝利にニヤリともせず、無表情のままだった。タップは拳を強く握り締めた。



「なんか、これはこれでムカつく!」


「班長、頭良すぎだよ・・・。いや、心理戦?」



 二人の落ち込みに気付かず、リーバーはレモンソーダをチューチューと飲む。


 その時、扉が開けられた。そしてマービンとロブが入ってくる。入ってくるとすぐにマービンは眉間にしわを寄せた。全然状況が変わってないように見えたからだ。



「絶対に班長を笑顔にさせて見せます☆・・・・か。」


「それでも、違う表情させましたよ!」


「いや、怖がらせただけどね」



「まぁ、最初から期待はしてなかっただけどね。」



 マービンの一言はジョニーとタップの心にダイレクトに刺さった。ロブは、いや、気にしなくて良いんだよ!、とフォローをするが、それがまだ二人の傷を深くした。


 リーバーは黙って見ていたが、一瞬だけ口の端をはげた。それに4人は気付かなかった。



「まぁ、笑顔にするのは無理だが、一言でも喋らすよ。」



 マービンはそう言うとニコリと笑う。ジョニーとタップは悔しそうに出て行った。ロブは冷や汗を流しながら、マービンを見つめる。



「でもあれから数時間経ってるけど、一言も喋らないんだけど・・・大丈夫?」


「つーか、あいつ等は分っちゃいないんだよ。」



 マービンは目をキララ~ンと光らせ言う。光らせたまま白衣のポケットからボールを取り出す。その時、ロブは嫌な予感をした、が、遅かった。



「よし!班長!運動しましょう!コレを投げるから取ってきてください!」


「ちょっ、マービン!!!」


「ホラッ、取って来いw」



 そう言うとマービンはボールを投げた。リーバーは無言のままボールを目で追いかける。ボールは壁に当たり、転がり、止まった。これは犬の遊び並だ。ロブはマービンの胸倉を掴む。



「マービン!これは子供相手、じゃなくて、犬相手だよ!!」


「そうだったな。でも、ほら!良く言うだろ!心のキャッチボールだって!」


「キャッチボールじゃないだろ!!!」



 マービンとロブが言い争っている時、リーバーはひょいっと立ち上がり、ボールが飛んだ所に行き、ボールを手に取った。リーバーはジーとボールを見つめた。そう思ったら、口端を一瞬だけ上げ、まだ無表情に戻った。



「リーバー!投げてくれ!」



 マービンはリーバーに気付き、満面の笑顔で言う。てごたえを感じたのだろう。リーバーは持っていたボールを投げた、が、今は子供。そんな長い距離を飛ばせる筈がない。ボールは綺麗な放物線を描き、フラスコなどが置いてある固まりに落ちる。


 ガチャッ!!!


 フラスコなどにボールが落ち、大きな音を立てながら割れた。リーバーはその音にビクつき、その場しゃがみ込んだ。そして体を縮ませ、両手を頭の両サイドに付け、振るえた。


 まるで子供がしじゃイケナイ事をし、隠れるかのようだった。



「班長!大丈夫ですか?!」



 それでもそんなリーバーの状況も分らず、急に姿が見えなくなったリーバーを心配しマービンとロブは近づく。


 震えるリーバーに気付き、マービンはしゃがみ込む。



「怪我はないですか?」



 マービンの問いにリーバーはコクコクと頷いた。マービンとロブはそれにホッとし、顔を見合わせる。リーバーは意味も分からず、割った、と言う罪悪がクルクルと頭の中で回っていた。


 そしてその回っていた事が爆発したかのようにリーバーは立ち上がり、走り出した。



「あっ!駄目だ!」



 靴は一応―ブックマンのを―履いているが、それでも割れたガラスが落ちている床だ。マービンはリーバーの腕を掴むが、リーバーは暴れ、マービンの手を払い除ける。しかしパランスを崩し、転んでしまった。そこがまだ運が悪く割れたガラスがあり、手や膝を切ってしまった。


 ロブは慌ててリーバーを抱き上げるが、リーバーの手や膝が切れており、赤い液がジワリッと流れる。



「うわあああぁぁぁぁん!!!」



 リーバーは大粒の涙を流しながら大きな声を出す。マービンとロブはあたふたする。その時、勢い良く扉が開けられた。



「どうしたのよ!!!」



 それは婦長だった。もはやリーバー以上に色々な意味で泣きたかったマービンとロブは泣きながら婦長に近づく、が、マービンは転び、頭にクサッと刺さる。それに気付かずロブは婦長に近づき、リーバーを見せ、



「どうしたら良いんスか!!!」



 と研究室の入口、婦長の前で叫んだ。








「この事を隠すなんて、良い度胸じゃない?」


「「「ぎゃあああああっ!!!」」」



 鬼の面をした婦長がコムイとマービンとロブを追い詰める。その頃、リーバーは手当てされ、泣き止み、下を俯いていた。
それをジョニーとタップが人形でなんとかご機嫌を取る。



「機嫌なおしてちょぉーたいよー。班長ぉ。」


「そうだよぉ。直してよぉー。」



 ジョニーとタップは人形の手をグイグイと動かしながらリーバーの目の前で話しかける。リーバーは少し眉間にしわを寄せながらジーッと人形を見つめる。婦長はそんなリーバーの様子を見てリーバーに近づく。



「もう、話したらどう?こんなに心配させて、駄目じゃない。」


「・・・」



 リーバーは黙ったまま人形を見つめる。さっき泣いていた事から、声は出せるらしい。婦長は、はぁ、と溜息を吐きながらリーバーを優しく抱きしめる。



「別に恐がらなくて良いのよ。此処に居る、メタボもクルクル眼鏡もタバコもクルリンもおじさんも、皆優しいからね。」


「おじっ!」



 婦長に色々と言われ、しょっくを受けるが、一番反応したのはロブだった。一人だけおじさんとまともなようでズッシリとくる言葉を言われたからだ。それでも尚も婦長を続ける。



「リーバーの為によ。それなのにリーバーは裏切るの?」



 婦長の言葉にリーバーは首を横に振った。婦長は優しい笑みを浮かばせながら、リーバーの頭を撫でた。



「なら、まずは謝りましょうね。迷惑をお掛けしてごめんなさい、って。」



 婦長の言葉にリーバーは頷く。婦長は優しく微笑みながらリーバーから離れ、背中を軽く叩く。リーバーは少し大きめのシャツを両手でギュウウと握りながら、目線をずらし気恥ずかしそうに呟いた。



「迷惑をおかけして、ご、ごめんなさぃ。」



 小さな謝りに5人は顔を見合わせながらも笑顔になる。



「良いよ。」



 子供のリーバーはその言葉に気恥ずかしそうに笑った。








「スイマセンでした!!」



 勢い良く謝るのは大人リーバー。あれから3時間後に元の姿に戻ったのだ。そんなリーバーを見て、これで仕事に解放されるー、と同時に、



「なんだもう戻ったの?」


「前の班長の方が可愛かったです。」



 と口々に言う。リーバーはその言葉に、俺は?!、と思った。


 その後も子供リーバーの可愛い言動の話は黒の教団中の話題になったと言う。



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@良い訳@リクエスト内容⇒『(実験のミスで)子供化したリーバーと化学班』

 かなり強制終了が分りますね・・・。最初は体だけ子供化にしたかったんですが、うん。本当にスイマセンでした!全然科学班じゃないですよねorz気に入らなかったら連絡してください。書き直します。
 それでは改め、リクエスト有難うございます。後色々とスイマセン!失礼します。平成20年7月16日


背景画像提供者:MECHANICAL
 asagi様