あの日、俺の中の姫が消えた。それを取り戻そうにも、時が来なかった。


 姫はどんなに手を伸ばしても、本当の姫には触れられなかった。


 俺だけが姫を求めてる訳では無いだろう。ジッリョネロファミリーの全員が姫を望んでいる筈だ。


 少なくとも、俺はそう思っていた。


【An image of the furist】




 「ウチ、あんたのその恐い顔嫌いなんだよね。」


 此処はスパナの作業場。機械音が鳴り響く蒸し暑い部屋の中、俺とスパナがいた。スパナは俺に背を向きながら、モスカを製作していた。俺はそんなスパナの後ろ姿を壁に寄り掛かりながら見つめる。


「恐い顔って、俺の顔見て無いだろ?」

「見なくでも分る。」


 作業の手を止めずにスパナは言う。恐い顔ねー。確かに今日は恐い顔かもしれない。今日は姫の夢を見てしまい、かなりブルーだった。怒りだった。そんな時、そのやるせない気持ちを少しでも安らげようとし、此処に来たんだ。


「ウチはあんたの気持ちなんで分からない。あんたの言う、姫、とは数回しか会ってないし、執着心もない。あんたの心に同意する事がないって事だ。」


 冷たく切り離す言葉。スパナは俺らと違い、サポーターだったし、ジッリョネロファミリーに来て二年も経たない内に合併だ。そんなにジッリョネロファミリーに執着心は無い。

 それ所か、モスカを好きなだけ弄られる此処が気に入ったらしい。


「何で姫の事だって分るんだ?」

「あんたがそんな悲しそうな恐い顔をするのは、姫の事だけ。」

「悲しそうな恐い顔って、どんな顔だよ。」

「今の顔。」


 俺は目を見開く。だから、俺の顔見て無いだろ。本当に、スパナの考える事は分からないし・・・それがまだ、合ってるから恐い。

 スパナは子供みたいな所があるが、その人を見る観察力も子供並みに鋭い。すぐに相手の考えてる事に感情に気づく。そして子供のように不器用に何とかする時もあれば、今みたく冷たくなる事もある。


「お前は、ジッリョネロファミリーを復興させたくないのか?」


 モスカも好きなだけ弄らせてやる。それに、独りにさせない。なんて言ったら、絶対に怒られるな。何様のつもり?、て。それでも、戻りたい。今度はスパナもいる、あの日へ。


「戻れないよ。」


 スパナは俺の心を読んだかのように言った。分かってる。それでも、取り戻す事は出来る。


「姫は取り戻す。絶対に。」

「取り戻してどうする?そのまま此処を出て、それで、ウチを置いていくの?」


 俺は目を見開いた。何でそんな話になっているんだ?俺はスパナを置いて行くつもりはない。スパナは自分自身を抱きしめながら微かに震えていた。


「ウチ、γから離れたくない。独りは嫌。」


 スパナは元は違うファミリーにいた。しかし俺らジッリョネロファミリーがファミリーに突っ込んだ時には誰に居なかった。独り、モスカを作っていた。

 大人の年齢だったとは言え、監禁状態だったスパナは酷く痩せ、心も傷ついていた。もっと言えばスパナは廃人になりかけていた。

 そんな過去を持つスパナを独りぼっちにする訳がない。


 俺はスパナに近づき、後ろからスパナを抱きしめた。


「独りにさせない。ジッリョネロファミリーを復興させたら、皆集まるんだ。集まって、過ごすんだ。」


 そう言うと力を込め、ギュウゥと抱きしめた。


 離さない。


 いや。


 もう離せない。


 好きだから。否、愛してしまったから。


 恐らく、姫よりも―――。


「有難う。γ。そして、ごめんね。」


 そう言うと目を擦る仕草をした。俺は目を擦る腕を掴んだ。そして無理矢理スパナを前に向かせた。スパナの目から涙が流れる痕が付いていた。

 ―――何で俺は気付かないのだろうか?

 自分を恨みながらスパナの涙を舐め取る。スパナは一気に顔を紅潮させた。


「ちょっ、γ!」

「大丈夫。スパナは可愛い。」

「ウチは男!」

「あぁ。知ってる。」


 俺はそう言いながら本気で抵抗しない愛しい愛しいスパナの悲しい涙の痕を舐め取る。


 ジッリョネロファミリーを復興させて。ブラックのメンバー全員を連れ出す。勿論、スパナも。有無言わせないつもり。


 そしてスパナ、お前を独りにさせない。


 愛し続ける。


 魂が汚れても、狂っても、お前だけは純粋のまま愛す。


 なんて、夢を見すぎかな?


(もしかしたら今も、幸せ、なのだろうか?)


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@言い訳@
 何だろう?この話は!そして私は優しい攻しか書けないですorz後、孤独受けorzγは姫とスパナ、どっちも同じくらい好きだと良いなー。そして『どっちが好き(なの)?』と二人問われれば良いと思いますvV
 では色々とスイマセン。失礼します。平成20年7月25日


背景画像提供者:短生種の戯言 マスタァ様